半分ろうそく② / 毎週ショートショートnote

仏壇用の蝋燭をちょうど半分で吹き消すと亡くなった人に会える。

半分になった蝋燭をふっと吹き消すと煙が不自然に広がり、その向こうに妻が見えた。
「やぁ久しぶりだな。元気か。」
「死んでるってば。」
妻を亡くしてもう十年ほど経つが、聞きたい事がある度に呼び出しているせいか迷惑そうな顔をしている。
「今日は何？葬儀用の靴下？」
「いや、ネクタイ。どこだったかな。白いやつだ。」
妻が首を傾げる。
「黒じゃなくて？」
私がトントンとテーブルを叩いて合図すると下に隠れていた息子達が顔を出した。
「母さん、俺たち今日結婚するんだ。」
妻は少し驚いたが、すぐに笑顔になった。
「…そう、おめでとう。うん。」
「式場でも半分蝋燭する？」
「みんな怖がるでしょ。そっちから見えなくても見に行くから大丈夫。」
煙ごと妻が消えそうになり慌てて止めた。
「待て、白いネクタイはどこだった？」
「結婚報告に呼んでくれたんじゃないのね。」
昔から変わらない妻の溜息がまた聞けた。

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