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medetaico
べこクイーン鉄塔 /毎週ショートショートnote
「今日も頑張って学校に行ったよ。」
薄曇りの空を見上げて報告する。
白い塗装が所々剥げて牛の模様みたいな鉄塔は高く、どんな表情をしているのか見えない。そもそも顔なんて無いのかもしれない。
それでも何となく。
「偉いね。」
って母の代わりに言ってくれている気がする。
「あのさ、べこクイーン鉄塔。友達が出来ないなら、せめて兄弟が欲しいなぁ。」
母がいないのだから兄弟なんて無理だと分かっている。
べこクイーン鉄塔は答えない。
「やっぱり無理だよね。」
背伸びしながら見上げると鉄塔の内側で何かが動いた。
白黒の、小さな、猫だ。
鞄を台にして手を伸ばし、動けずに震えている仔猫をそっと掴んで降ろす。
仔猫は逃げずに私の靴の上に座ったままじっと見ている。
怖くて動けないのかな。
包むように抱き上げてそっと撫でてみる。
暖かい。
「もしかして、弟か妹にしなさいってこと?」
べこクイーン鉄塔を見上げた。
やっぱり表情は見えないけど、笑っている気がした。
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