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Photo by
maikosan0429
天ぷら不眠 / 毎週ショートショートnote
ゆさゆさと身体を揺らされる。
「起きて!ねぇ、起きてったら!」
慌てて起きて時計を見ると深夜三時だ。
「早く、早く!」
妻に急かされて連れていかれた食卓には、やはり天麩羅が乗っている。
「今ならいい?」
私は大きく溜息をついた。昨日は深夜二時、一昨日は明け方の四時。毎回天ぷらだ。
「ごめん。俺が悪かった。」
謝った私に妻は表面的な笑顔を見せた。
「ううん、悪いのは私よ。ねえ、今日は正解だった?またこの時間に天ぷらかよって言う?」
「いや、本当に俺が悪かった。頼むから寝かせてくれ。」
妻は眉を寄せて考えている。
「うーん、やっぱり違うのね。次は何時に挑戦しようかしら。」
ほんの少し機嫌が悪かっただけなんだ。それでつい妻が出した天ぷらに当たってしまった。
「土曜の昼飯に天ぷらかよ!」
そのたった一言が妻を本気で怒らせたらしい。妻の機嫌が治るまで変な時間に起こされて天ぷらを食べさせられる刑は続く。
天ぷら不眠だ。胸焼け付きの。
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