逆さ富士七転八倒 / 毎週ショートショートnote
森の中を進んでいくと、ぽっかりと開いた空間に出た。その中央にはあまり大きくはないが美しい湖がある。…やっと見つけた。幻の湖。
富士山から遠く離れたこの湖に満月と逆さ富士が映った時、その水を飲めばどんな願いも叶うのだという。
私はコップを出すと、一枚の絵のように美しく逆さ富士と満月を映し出す湖の水をすくった。
いざ飲もうと顔の前に持ってくる。
「臭っ」
綺麗に見えた湖の水はよく見ると酷く濁っていて臭い。こんなの飲んで大丈夫だろうか…いや、何でも願いを叶えるのだからその覚悟を試されているのだろう。飲んでみると実は冷たくて美味しいのかも。
深呼吸して、飲む。
臭くて不味くて吐きそうになるが堪えて飲みきった途端、腹に激痛が走り、倒れ込んだ。腹を抱え込みくの字になって暴れ回る。
ダメだ、死ぬ…
「た…助けて…」
絞り出すように呟いた途端、ごぅっと強い風が吹いたかと思うと嘘のようにぴたりと腹痛が治まった。
願いを使ってしまったと慌てて湖を見たが満月も逆さ富士も消えていた。
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