モンブラン失言 / 毎週ショートショートnote
彼がモンブランを二つ買ってきた。私も一緒に食べようと用意していたケーキの箱を開ける。
「レアチーズケーキ?」
「うん、レモンの。」
彼が溜息をつく。
「俺レアチーズ嫌いなんだよな。しかもレモンって、ケーキなのに甘くないやつ。」
「モンブランなんて甘すぎるしケーキって言うよりクリームじゃん。」
「分かってないな。嫁失格。」
涙が出そうになりトイレに立てこもる。トイレかお風呂しか鍵のかかる部屋がなかったからだ。
暫くすると、彼がドアをノックした。
「ごめん、失言だった。」
涙をトイレットペーパーで拭く。
「出ておいで。俺がモンブラン、君がレアチーズを二個づつ食べよう。結婚記念日祝おうよ。」
そっとドアを開けると彼の手がぐいと大きく開けて私の手を引っ張った。
「私こそ、ゴメー」
私を引っ張り出し、自分が入ると鍵をかけた。
「間に合ったーっ!」
トイレに入りたかっただけ?
私はモンブランの箱を強くテーブルに落とした。
ぐちゃ。モンブラン消失。
謝るもんか。
※ショートショートと言えどモンブラン崩してごめんなさい。彼がこの後美味しくいただきました。(たぶん)
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