誤字審査 / 毎週ショートショートnote

「またゴリラからメール来たよ。」
先輩が笑いながら支店の男性社員からのメールを指差した。
「送信する前に読まないのかねぇ。」
知り合いの多いヒミコ先輩は通りがかった他部署の人にも見せている。
「社名の日本が『ンホッ』になってますね！今度会ったら教えておきますよ。」
営業部の先輩が笑いながら言った。
「この人知ってるの？」
「草野球仲間です。この真ん中にいるのがそうですよ。」
スマホ写真の中央でキリリとした顔で笑うメールの主をヒミコ先輩は拡大して見つめている。
「先輩、好みのタイプですか？」
「私は誤字も男も審査厳しいの。けど、誰かに似てるような…。」
考えながら机の上の使い込まれたファイルに目をやる。
「あ！シャバーニに似てるんだ！」
「何ですか？」
「知らない？ちょっと前に流行ったイケメンゴリラ。あら、もう九年も前なんだ。」
ファイルの表紙でキリリとした顔のゴリラがこっちを見ている。
「九年前だと私まだ小学生です。」
ヒミコ先輩の眉がピクッと動き、みんな静止した。

送信していませんが、実際よく「日本」を「ンホッ」って入力しちゃいます。ウホッ。

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