針ほどの月明かりー21ー
ハナミズキが敷き詰められた道路にオレンジ色の夕陽が浮かんでいる。
「この道はオレンジジュースかな。」
真白は首を横に振った。ジュースなら道じゃなくて川だからボートが必要になる。今の僕たちにボートは無いから、違うんだろう。
「じゃあ、ここはみかんゼリーの道だ。気をつけて歩こう。」
ゼリーの上は少し滑りやすいから長靴を履いていて良かった。プルプルと弾むみたいに歩く。ゼリーの弾力は結構強くて両足でぐっと踏み込んだらびょーんと跳ねる。僕につられて真白もびょーんと跳ねた。二人で跳ねながら進む。信号の向こうの交番から男の人が二人出てきた。夕陽に眩しそうに目を細めて赤信号で止まっている。僕たちは跳ねながら左に曲がった。交番の警察官は僕たちを家に帰してしまうかも知れない。僕たちはもう帰らないと決めたから、誰にも見つからないように行かなくちゃ。でもどこへ行こう。僕たちのお菓子の家はどこにあるんだろう。
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