だいたいニャー / 毎週ショートショートnote
駅裏のシャッター街の奥から三軒目に『猫家』はある。
猫の絵本や雑貨が置かれた店内の小さなカフェスペースで猫スイーツを食べるのが最近のお気に入りだ。
「お婆ちゃん、ご馳走様。」
お金を払いながら声をかけると、居眠りをしていた店主が頷きながらお金を受け取る。
気持ちよさそうに眠っているのを起こすのは気が引けるが、大抵眠っていて支払い以外はセルフサービスなのだから仕方ない。
「このピアノはどこが猫なの?」
起こしてしまったついでに店主の横にある玩具の古びたピアノのことを聞いた。
鍵盤を押すとナ、ニャ、ミャと音が鳴る。
「昔は全部ニャーだったんだけどね。今じゃだいたいニャーだねぇ。」
子猫が鳴いているみたいで可愛い音だ。
「お幾らですか?」
「これは子猫だった頃にまだ幼いご主人と遊んだ大事な思い出なのよ。ごめんなさいねぇ。」
子供の頃に飼い猫と遊んだ思い出なら仕方ない。
年齢のせいか主語が逆になっているなと思いながら店を出る。振り向くと店主は日当たりのいい店内でまた猫背で居眠りをはじめていた。
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