騙せ林檎パン / 毎週ショートショートnote
「今日も来てるぞ。」
最近毎日のように来ている女性が店に入ってくるのが見えた。
「しっかり騙して買わせろよ。」
この店はホスト制レストランとして格安で楽しめるが、天然石ネックレスなどを高額で買わせるのが本来の目的だ。
店長は焼きたての林檎パンと安っぽいアクセサリーのチラシを僕に差し出す。
「…こういうの違うと思うんです。」
「何だ?良心の解釈ってやつか?」
「それを言うなら良心の呵責です。」
そうだっけ、と笑う。
「彼女達はこの石だけじゃなく楽しい思い出を買うんだよ。最悪感は不要だ。」
「罪悪感です。」
「とにかく行ってこい。せっかくの焼きたて林檎パンが冷める。」
ため息をつきながら林檎パンを受け取ると店長は満足気に頷いた。
「やっぱり姫を騙すには林檎だよなぁ。俺って天才かも。」
「いや、だから違うと思うんです。」
「ほらほら、シンデレラが待ってるぞ。」
だから騙されて林檎食べるのはシンデレラじゃなくて白雪姫ですって。
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