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ヘルプ商店街2 / 毎週ショートショートnote
商店街を段差に気をつけて押しながら歩いていると声をかけられた。
「ヘルプ商店街へようこそ。まずはその空っぽのベビーカーを買い取りましょう。もういらないのでしょう?」
そういえばベビーカーを押している。
「その大きなバッグも。」
肩にかけた大きめのバッグには小さなぬいぐるみと小分けにされたお菓子が入っていた。
「全部いらないでしょう?」
薄笑いの人。
何か変だ。逃げなきゃ。
ふいに電話の音がして慌ててバッグの中を探る。
腕を引っ張られて邪魔されながらも何とか携帯を出すと、舌打ちされた。
「いらないって言ったくせに。」
「もしもし?」
電話から聞こえた母の声ではっとする。
私の横で眠る子供の頬には涙の跡。どうしても泣き止まず「もういらない!」なんて叫んでしまった。母親失格だ。
「大丈夫。母親が笑えば赤ちゃんも笑うから。」
そんなバカなと笑いながら目が覚めた。
手には携帯。子供は眠っている。母は…。
母は孫を見せる前に亡くなっていた。
ー大丈夫。
遺影の母は笑っている。
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