タテの国を読んでほしい
まず、こちらの動画をご覧いただきたい
こちらはジャンプ+で掲載されている田中空先生の代表作、「タテの国」だ。
PVを見た瞬間、恐らく皆々がこう思うだろう。
「ラピュタみたいな話か?」
「民族的な話だろうか?」
「国と国と行き来する、物騒な物語?」
「はたまたロボット漫画か?」
そのどれもが「そう」であり「違うとも言える」
タテの国は縦読み漫画に特化した漫画だ。
今でこそ横読みが多く、縦読みが廃れつつある時代、2019年に突如現れた
鬼才の作品になる。
私は、この物語を全て記憶を無くし、また1から読みたいと常々思う。
ネタバレしない程度に、数話の物語を展開していこう。
主人公ルスカはとある町で働く少年だ。
ルスカの町の中心には大きな穴があり、ルスカはその先に思いを馳せていた。
しかし、ある日そんなルスカの頭上から1人の「女」が落ちてきた。
下の世界へ落ちた女を見て、ルスカは半ば衝動的に穴へと落ちていく。
深い深い、穴の中へ。
ルスカが10日間落ち、喉の渇きと飢えに限界を感じた瞬間。
とあるクッション性のものに落ちる。
そこにはパラシュートを背負った、ロボットが「飛んで」いた。
ロボット、ケルビンは自分を「元人間」だと言って、ルスカに食料と水を分け与える。
さらに自分は研究者であり、このタテの国を研究しているとも言った。
しかし、底には500年かけても到達することは出来ず、更にあの女にも会っていない。
あの女は永遠に落ち続けることになるのだろう、この塔は無限の塔なのだ。
ルスカはケルビンの力を借り、女に追いつくことが出来た。
女を抱え、ルスカは戻る。まるで眠っているような女にケルビンが気付け薬を与えると、女は起きて一言言った。
「私…生きているのでしょうか?」
ここまでが2話の物語となる。
この物語の魅力は、なんといっても色彩豊かで多数の伏線の数々、そしてキャラクターの魅力だろう。
物語を読み進めるうちに、疑問の解決、疑問の増幅が行われるが、それらすべては完結の際にキレイに纏められる。
その瞬間が、とてもとても気持ちがいい。
「アレはそういう意味だったのか」
「これってもしかして」
物語を読み進めるにつれ、最初の方は何も理解が出来ない。
塔のことも、誰のことも解らない。
しかし、それがふとわかるようになると考える。
「2回目が読みたい」
そうして始める2回目は、強くてニューゲーム。
あれやこれの伏線を自分自身で回収していき、全く別の視点で見ることが出来る。
もう1つの魅力はその画力だ。
一般受けするような線の細い絵ではない。しかし縦読みを生かした描き方は様々な観点から見ても「なかなか描けるものではない」と感心する。
タテの国は文字通り、「縦」なのだ。
何故縦の漫画なのか、その実態は読み進めるごとに納得がいくだろう。
伏線の話をしたが、もう少しさせてほしい。
タテの国を読む時に、先読みをしてほしい。
「きっとこれはこういう意味だ」
「アレはこういう意味だろう」
それは全て、気持ちがいいほどに私たちをすり抜けて瞬く間に素晴らしい回答へと導いてくれる。
きっと読み始めた時に貴方は気付かない。
そして最終回手前でようやく知ることが出来る。
タテの国の真実を。
とても長い漫画で、現在のスマホには向かない絵の手法である。
そのせいで、書籍化なども一切できなかった。
タテ読みという強みを生かしてこそのタテの国だ。
息を飲む、スクロールが止まらなくなる。
素晴らしいスケールで描かれる最高作品だ。
たかが「縦読み」と侮らないでほしい。
気が付けば、いつの間にか我々もタテの国の住人になっていることだろう。
物語には、苦しいシーン、痛々しいシーンなども多くある。
時に残酷で、しかし生きねばならない人々の物語だ。
けれど、誰も皆、ルスカのように生きることは出来ないだろう。
誰もルスカのように、動くことは出来ないだろう。
この物語を楽しむにあたって、1つ見つけてほしいものがある。
それは「共通点」だ。
キャラクター全員に、とある共通点が隠されている。
もしもタテの国を読んだ時に、その共通点を見つけることが出来れば……
もっと面白く、読めるかもしれない。
抽象的な事ばかりだと思うが、本当にこの作品を語るうえで「読んでくれ」としか言えない。
出来事が全て伏線となってしまう。
伏線は、自信の目で確かめてほしい。
再度、リンクを貼ろう。
安心してくれ、タテの国は全部無料だ。
共に、謎を解き明かす冒険に出よう。