【声劇台本】ここから見る君は綺麗だよ(約6000文字)【2人用】

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以下本文



様々な機器が並ぶ部屋、大きな望遠鏡を、男が覗いている

男:今日も特に問題なし。と、ここから見る太陽系第三惑星『地球』はほんといつ見てもキレイだよなぁ…

テラ:おー?そんな事言われるのは照れるぞー?普通に照れるぞー?

男:邪魔だ、望遠鏡を覗く俺を更に覗くな

テラ:なんだよー、お前そればっか覗いてるじゃんかよー暇なんだよー

男:いや、これを覗いてるのはお前のためでもあってだな

テラ:はあ?

男:いや、まあわかんねえか

テラ:そんなことよりさー、またなんか届いてるぜー

男:おっと、確認しなきゃな。

男、送られてきた文章を読む

男:太陽系第三惑星地球についての報告。環境汚染によるオゾン層の破壊により温暖化が急速に進行している。対応策をこちらで考えてはいるが、まだまだ時間がかかりそうである。そちらは変わらず観測を続けてくれ。

テラ:なーなー、なんて書いてあった?

男:まあ、いつもと変わらん内容だな

テラ:そうなのか?

男:うん、まあ特に変わりなしだな

男:まあ、オゾン層が破壊されて、温暖化が激しい。なんて、本当にいつものテンプレートというか… 何年同じの送って来るんだよ

テラ:まー変わりないならいいけどなー

男:そうだな

テラ:オゾン層とか?おんだんか?なんてのは私の知ったことじゃないしなー

男:んむむ。確かにな

テラ:そもそもお前が見てるのは惑星なんだろー?惑星見て何が楽しいんだよー。せっかく太陽系見るならさあ、太陽とかどーんとしたのみようぜー?

男:いや、太陽系ってここからめちゃくちゃ遠いんだぞ?地球にピント合わせるのすら数年かかったってのに

テラ:同じ太陽系ならちょっとずらすだけでいいじゃねーか、ケチケチすんなよなー

男:いや、だから、そのちょっとのズレが、めちゃくちゃ合わせるの大変なんだって。

テラ:ふうん、そういうもんか

男:そういうもん。

男:なあ、お前さ

テラ:んー?なんだー?

男:なんていうか、イヤじゃないの?

テラ:なにが?

男:いや、ほら、地球が汚染されたーとか、大気の層がーとかさ

テラ:いやいや、そんなの私には関係ないしなー

男:…そういうもんなのか?

テラ:そういうもんよ。

男:ふうん。

テラ:例えばよー、お前って肌荒れ気にするかー?

男:まあ、一応?

テラ:肌荒れってのはなー人間に住む常在菌がうまく繁殖できてないとか、アレルギー反応が起きてるとか、なんかそんな感じならしいんだよー

男:お、おう

テラ:お前は常に自分の身体についてる常在菌は気にするのかー?

男:あー、なるほどね

テラ:醤油こと。

男:ソースか。

テラ:なー

男:うん?

テラ:今のは笑うべきかー?

男:いやお前が先に言ったんだろ!

テラ:いや今のはいい間違えというか、噛んだだけなんだなー

男:…そーッスか。

テラ:ん?なに?調子わるい?

男:…どうなると、ゴールなんだろうな


テラ:は?なんのゴールよ

男:毎日、朝になれば日が昇って、夜になれば日が暮れて。ずーっと繰り返しの中で生きている。

テラ:う?うん?おう、まあ繰り返しじゃねぇだろー
男:…
テラ:微妙に日の出日の入りの座標は毎日変わるんだろー?
男:でもそれには普通の人間は気がつかない
テラ:気温とか?はどうだー?
男:それはなんか違う。というかここはそもそも空調が常に効いていて、最適な温度なわけで
テラ:なにがいいたいんだー?
男:どっかでこう…ゴールをきったような満足感と充実感を味わいながら『明日』のことなんか何にも考えずにゆっくり休みたいんだよな
テラ:ゆっくりしていってね!!


テラ:おいー、私がすべったみたいじゃないかー

男:自覚あったのか

テラ:あのなー

男:…

テラ:んー、まあよくわかんないけどよー、たぶん一生無いんじゃないかー?

男:そうか、やっぱ無いかな

テラ:『明日』を考えなくていい生活なんて無いだろー

男:無いか、やっぱ。

テラ:まあ死んじゃったら『明日』のことなんか考えなくてよくなるけど、それじゃ満足感も充実感も無いしなー

男:それはダメだ。ちゃんと生きてて、それでこう…過去も未来も何にも考えずにのんびりしたい。

テラ:そーいうもんかー

男:うむ

テラ:しっかし、普通の人からみれば十分のんびり生きてる様なお前でもそんなこと思うんだなー

男:精神的なものだけなのか。環境とかお金とかも大きいのかな。

テラ:なんだろーなー、わたしにはわかんねーや

男:ま、そうか

テラ:おーい、またなんか届いてるぞー

男:んー?

テラ:いや覗いてないで、ちゃんと見たほうがいいんじゃないかー?

男:わかったよ、わかったから、そっちから覗くな

テラ:はいよー

男、送られてきた文章を読む

男:太陽系第三惑星についての報告。前任者が辞職した。地球を離れ、宇宙船に乗りどこかへ行ったそうだそうだ、そちらに彼から連絡はないか?まあいい、新しい担当だ、よろしく頼む。君と顔を合わせられないのは残念だ、遠い宇宙から何年も地球を観測している君には頭が上がらないよ。さて、話を戻そう。問題が起きた。惑星保護法を破り、環境汚染を止めない国に対して、某国が宣戦布告を行った。非常に好ましくない自体だ。大量破壊兵器が使用されるかもしれない。そちらからは観測できないかもしれないが、近々、空に放射線を帯びたどでかい雲がうずまきそうだ。我々ももうだめかもしれないな。報告は以上だ、観測は続けてくれ。

テラ:なんだってー?いつものやつかー?

男:いや、ちょっと違うな

テラ:おーよかったなあ

男:いや、あまりいい報告じゃないんだけどな

テラ:そうかー

男:ここから観測。ねえ… ここが宇宙のどの位置にあるのか知ってて書いてんのか?このおっさんは

テラ:あいてはおっさんなのかー

男:いや、わからん。文章だけ見たらなんか、堅苦しいおっさんな気がしただけだ

テラ:へー、そういうもんかー

男:ああ、そういうもんだ。

テラ:案外、めちゃくちゃキレイな女の人かもなー

男:うーん

テラ:なんだー?堅い女はきらいかー?

男:いや、そういうわけでもないけどさ

テラ:じゃあなんだよー

男:いや、ほら、俺って超次元亜空間高速宇宙航行に耐えられる身体にするために、改良された人間なんだよ。

テラ:ちょうじげんあくうかんこうそくうちゅうこうこう…?お前難しいこというなー

男:んー、まあいわゆるあれだよ、光よりも早く宇宙を移動するというか

テラ:光って早いのかー?

男:まあ一応、ね。めちゃくちゃ早い

テラ:へー、んで改良された人間だっていうど、それがどうかしたかー?

男:ああ、それ、その話。まあだから、いわゆる人工的に作られた人間なんだよ

テラ:それってにんげんなのかー?

男:わからん

テラ:わからんのかー

男:わからん。んでまあ急速成長剤を打たれて、胎児の状態で宇宙に打ち上げられたんだよ

テラ:へー

男:だから物心ついたときにはここにいてさ、んで、一通りマニュアルとかおいてあるけど、とりあえず生きることに必死だったんだよ

テラ:たいへんだなー

男:まあ、そういう話はいいや。結局さ、俺って、人間の女性ってものを見たことないんだよ

テラ:あー、なるほどなー

男:うん

テラ:じゃあ男も見たことないんじゃないのかー?

男:いや、洗面台に鏡あるし

テラ:それだけじゃわからないだろー

男:シャワー浴びるときに男性器を見るだろ

テラ:あー、おまえシャワー行ってるときエッチなことしてるだろー

男:だからまあ、男はわかるが、女はわからん。ついでにいうと俺には性欲はないからそれは不名誉だ

テラ:んー?じゃあよー

男:うん?

テラ:私は何なんだー?

男:あー…

テラ:だろー?

男:そうか、そうかもなあ

テラ:そうだろー

テラ:おいおいさいきんおおいなー、ほら、また来てるぞー

男:ん、ちょっとまって

テラ:どうしたー?

男:歯磨き粉が目に入った

テラ:はー?

男:しかも塩入りのやつ

テラ:よくわからんが、泣いてるから痛いんだなー

男:めちゃくちゃいたい

テラ:っていうか歯磨き粉って目に入るのかー?そもそもー

男:いやこう、歯ブラシの上に、歯磨き粉を出すだろ?

テラ:ん?うん

男:で、歯ブラシから歯磨き粉を切り離すときに、ピッと飛ぶ

テラ:歯磨き粉は飛ばないだろー

男:いや、飛ぶんだよ…

テラ:ふーん、たいへんだなー

男:ああ、たいへんなんだ。で、なんか来てたんだっけか

テラ:おー、きてるぞー

男、送られてきた文章を読む

男:太陽系第三惑星地球についての報告。やあ、元気かな、こちらからしか送信ができないから君がどう過ごしているのかすごく気になるよ。まあ、そんな事はいいか。先日送った件だがな、ついに我々の地球は死の灰に覆われてしまった。磁気嵐のせいでそちらに届くのが遅れるかもしれない。すまないと思っている。君は一人で観測をしているそうだな。寂しくないか?いや、忘れてくれ。君は産まれたときすでにそこにいたのだったな。人工人類。観測のためだけにそんなものに着手するとはん、人間は恐ろしい生き物だ。しかもそんな外宇宙の果てまで君の乗った船を飛ばさなくても良かっただろうに。そもそもその距離で何を観測させたかったのか、それもわからないな。もしかしたら観測は実験で、来る日のために人類を宇宙に放り出すための実験だったのかもしれない。そちらから連絡が取れないようにするのはきっと、我々が良心の呵責にとらわれないようにするためだったのだろうな。まあ、私は少なくともそんな冷たい人間ではないがね。実験が本当で、人類が外宇宙に行けるようになったとき、私は君に会いに行きたい。君がどう生きて、なにを思って、どんな顔なのか。すこし、長くなった。さっきから送信エラーばかりでな。そのたびに文章を付け足してしまっていたんだ。もう一度改めて報告する。地球は死の灰に包まれた。以上だ。

テラ:なんだってー?

男:んー?地球は死の灰に覆われたんだってさ。

テラ:死の灰かー

男:うん

テラ:そろそろやばいかもなあ

男:うん

テラ:おいおい、危機感ないなー

男:んー、なんていうかなあ、実感が無いというかさ

テラ:うん?

男:ここから見える地球はとても美しくてさ、死の灰なんかみえないしさ

テラ:んー?どういうことだよー

男:ここで見えてるものって、実はリアルタイムじゃないんだよ

テラ:んー?

男:見えるものってのは、光の反射とか屈折とか、なんかそういう難しいあれで色の情報とか形を出してるらしいんだけどさ

テラ:ふーん

男:まあつまりはな、ここで見えてる地球の姿、というか、光ってさ、何億年も前のものなんだよ

テラ:んー?光って早いんじゃなかったのかー?

男:んーまあ、光は早いんだ。秒速とかの話はしないけどさ、光が一年かけてやっと届く距離ってのがあって、光年っていうんだけど

テラ:うん

男:ここ、地球から何億光年も離れてるからさ、結局今の地球じゃないんだよ

テラ:あー、なんとなくわかったかも

男:うん、だから、実感がないっていうか、そんな感じで。この文章だっていくらすごい技術でも、いつ送られてきてるのかもわかってないんだよな

テラ:そうだったのかー

男:そう、だから別に文章の相手が男だろうと女だろうと関係ないっていうかさ

テラ:なるほどなー

男:…うん

テラ:じつはなー

男:うん?

テラ:もうけっこうやばいんだよねー、私

男:いやいやそんなバカな

テラ:いやまじだって

男:お前がそんなことわかるわけないだろ?

テラ:あー、そういう事言うわけかー

男:当たり前だ。おれはまともじゃないかもしれないけど、正気を失っちゃいない

テラ:ふーん。まーいいけどねー

男:で、本当にやばいのか?

テラ:あ、そこ聞く?

男:気になっただけだよ

テラ:まあねー。まあもう死んでるかなー

男:…だれが?

テラ:その文章送ってきてるやつ

男:ああ、そう

テラ:正確に言えば、その仲間も。かなー

男:ふーん

テラ:なんだよ、他人事だなー

男:他人だしな、実際。

テラ:つめたいやつだなーお前

男:人工人類だしな、俺。人間じゃないから

テラ:でも人間を模倣して作られてるんだろー?

男:そうだけどさ、俺はここから見てることしかできないし、何もできないことをどうこう考えるのもな

テラ:そうかー

テラ:おいー

男:んー?

テラ:また何か送られてきたぞー

男:ああ、そう

テラ:なんだよー

男:いや、だってお前が言ったんじゃないか。もう死んでるって

テラ:あー。また違うやつからっぽいんだよねー

男:違うやつ?

テラ:地球よりは近そうな感じ?

男:ん?

テラ:だからー、ここから、の距離の話

男:あー、

テラ:うんー。読んでみろよー

男:…ん?

テラ:んー?

男:これ、知らない言葉で書かれてる

テラ:へー

男:他国の言葉、かな。翻訳してみるか。

男、送られてきた文章を読む

男:こちら第三惑星地球を観測してるものだ。君も観測者なのだろ?私はなんとか連絡手段を作ったんだが、送れるのは一回きりになりそうだ。私と同じ観測者にコンタクトを取れるのはとてもうれしい。誰かに文章を送るって、いいことだな。君も一人か?私も一人だ。君ほど地球を離れてはいない。太陽系の者だ。色々書きたいんだが、簡潔に伝えよう。人類は、滅んだ。あっけないよな。俺たち観測者はもう何を見たらいいんだか。こちらから見る地球は、そうだな、月って知ってるかな?地球のかつて衛星だったやつだ。私から見える地球は、まさに今そんな感じだ。クレーターだらけで、大気の層もない。灰色で、海もない。生命が存在するのかもわからない。まったく、こんなショッキングなもの見させられるとはね。君にも画像を贈ろう。無駄な観測はもう終わりだ。私達観測者の仕事はもうない。私も終わりにしようと思う。これが送信完了されたらさよならだ。

テラ:なんだってー?

男:地球、滅んだってさ。

テラ:あー、そうなー

男:意外だな、お前に影響ないのか

テラ:おまえなー、そりゃそうだろー

男:画像があるらしいし、見てみるか

テラ:おーすげーなー。見事に滅んでる

男:…

テラ:そうとうやってんなーこれ

男:そうだな。

テラ:ん?どうしたー?

男:いや、なんでもないよ

テラ:そうかー


男:………
男:ここには、俺しかいない。俺が会話してるのは、俺が生み出した『地球』の幻想でしかない。だから、今見えてるあいつは、さっき送られてきた写真で壊滅させられた。
男:でも、別にいいんだ。ここから覗く地球は、今まだなお、青く、美しい惑星なのだから。

テラ:なーなー

男:うん?

テラ:私、まだキレイかな?

男:ああ、ここから見るお前はキレイだよ

テラ:そうかー照れるなー

男:照れるのか。

テラ:まあなー

男:お前女なのか?

テラ:醤油こと。

男:ソースか





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