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[島日記:14]古いものは生きている
島の家の片付けで
食器があるらしいと連絡が入りまして。
島には行く予定だったのだけれど、
このところの多忙極まりないスケジュールに
疲れがピークで、のんびり昼からでもと思っていた日。
聞けばもう片付けは済んでいて、
あとは積み込んで廃品置き場へ向かうそうで。
慌てて準備して、船に飛び乗りました。
今回の家はわたしが借りている家から
ほんの数歩ほどのところ。
だいぶ屋根も朽ちていたように見えのだけど
どうやら道に面していたところは物置で
母屋は改修されていました(が、もちろん修繕はいる)。
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物置...とはいえ、もとは土間のある立派な一軒家。
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なかなか立派な梁。あと土壁と、
梁と同じ色の間仕切りの障子がなんとも古民家。
築は大正か、昭和の初めくらいでしょうか。
ここで、かまどで炊いたご飯や庭で取れた野菜
海の幸を料理して食べていたのでしょう。
食器の中にはぐい呑みもちらほら。
日本酒が似合う家。
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部屋の奥にはこれまた立派な簞笥が。
残念ながらこちらの建物は
取り壊すことが決まっているようで。
もちろん残しておいても朽ちるだけ...
主人の居ない家はなんとも寂しいものです。
この雰囲気の家は島の中にはわりと多くあり
手前に土間、奥にも土間の台所。
先日はトトロのメイちゃんちのような
薪焚きのお風呂場が
そのまま残る家もあったり。
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取り壊すと言っても
周囲は石の階段、狭い道。
重機はおそらく入るのが無理なので
手壊しになるのでしょう。
費用を考えるとクラッときますね。
島にもう住んでいない家主が
そのままにせざるをえないのも
こういったことも少なからず理由なんだろうな。
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食器を探しにきたけど、鉄クズコーナーでこの金庫を発見。(中身はありませんがちゃんと鍵は残ってました!)
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これは資生堂の石鹸のブリキ缶。
印刷も美しくなによりこのフォント、
そして絵が素晴らしい。
しばらく見惚れてしまいました。
これも引き取って帰ろうかと思いましたが
錆がはんぱなくて泣く泣く諦めました...
そのほか食器も山のようにありましたが
個人的に、かつての生活がなんとなくわかるものを
分けていただきました。
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子供用の茶碗
このほかに、赤胴鈴之助とデビルマンらしきものがあり
男の子と女の子のお子さんがいたのかなと。
古いものは、その暮らしを静かに語ってくれます。
その声を聞かせていただくつもりで
ひとつひとつ見せてもらっています。
高い美術品ではなくて
売っても数百円にしかならないものだけど
もういま助けないと一生出会えないものを。
新しい暮らしをはじめないと
島だけでなく、田舎は存続していけません。
わかってはいるのだけど
古き良きものを壊さなければならないのは
何回立ち会っても、胸の奥がぎゅっとなります。
守りつづけることというのは
新しく作るよりも大変なことだと感じます。
守るとはいったいどういうことなのか。
島にくるようになって、
一番考えるようになったことです。
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