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ゲーム会社でイラスト発注をしていた話①~発注書編~

今から10年ほど前、いわゆるソシャゲバブルの時期に男性向けファンタジーカードゲームのイラストレーター探し、キャラクター原案作り、発注書作り、イラストチェックバック、イラストクオリティ担保をやっていました。

今更ながら、せっかくなのでナレッジをまとめておいても良いのではないかと思いこのnoteを書きます。

初めてのカードゲーム制作で毎日模索する中、ありがたいことに発注させて頂いていたイラストレーターさんの1人が「チェックバックが1番丁寧だったから」という理由で当時所属していた会社に入社してくれた事がありました。丁寧に仕事をしていてよかったと、当時の仕事ぶりを評価されたようで嬉しい出来事でした。

毎月沢山のイラストレーターさんにお世話になり、未だに1ファンとして拝見させて頂いているイラストレーターさんもいます(もちろん素性は隠して)
発注者目線でどんなイラストレーターさんにお仕事を頼んできたか、お世話になってきた、またはこれからお世話になるイラストレーターの皆さんのお役に立てたらと思い以下を書きます。

※あくまで10年ほど前のナレッジ
※現在にも共通するであろう部分をなるべくまとめました



発注書について

早速ですが以下、参考に発注書のサンプルを載せます。
こちらはイラストレーターを目指す知人の練習用に個人的に作成したものです。
お借りしている画像に関してはモザイクを入れさせて頂きました。
(問題があればご教示願いたいです)



最初のぺージに世界観やゲームシステムなどの説明があることが多い


参考資料がついていることもある
発注部分。キャラクターの詳細が載っている。
その他キャラクター詳細。
ちなみに別添えのカード枠

会社のお金を使って発注するのは毎回緊張しました。
不幸な事故を起こさないよう想像力を膨らませ、どのレアリティが適切か、どんなキャラ像が得意なのか、見極める必要があるからでした。
例えば金属が得意な方には鎧のキャラを、人体が得意な方には露出高めのキャラを、なんでも描けそうな方にはスキュラ(下半身がタコの怪物)などの造形がニッチなキャラを…などなど。
そんな感じで発注側でも良い物を納品して頂くためにある程度内容をコントロールして発注していました。
デザインが既にある方が筆の乗りやすい二次創作気質の方や、制作コストを抑えるためにキャラクターラフをつけることもあれば、自由にキャラをデザインして描いてもらうこともありました。
各イラストレーターさんの筆がいかに乗るかを考えながら日々発注書を工夫していました。

ちなみに上記の発注書で描き起こしたキャラクターは以下のようになりました。
(自前なので色々とお目溢し頂きたい)

N〜N+相当の描き込み



発注する基準について

わたしの所属していた会社ではpixivやTwitterなどで個人のイラストレーターさんを探し、発注チーム内で一定数のGOが出れば晴れて発注先リストに載る、という形を取っていました。
仲介会社さんも使っていましたが主力は個人のイラストレーターさん方でした。

私なりに見ていたところを記載すると、
・顔が今風か
・人物のデッサンは整っているか
・服飾が得意か
・ある程度の背景が描けるか
が主な判断基準でした。

中でもやはり人体のデッサンはある程度出来ている方…という見方が強く、「良い絵」には基準がないですが「人体のデッサン」には基準が存在するということも大きかったように思います。
当時所属していた会社はクリエイターファーストな面が大きく、事前に赤入れを拒否する事もできました。(=修正希望はテキストでの依頼のみ)
そういった方の場合デッサンの狂いは致命的だった事もあり、人体のデッサンの基礎力はかなり重視していました。
ここが発注するかどうかの最低ラインとなっていたと思います。

次に服の装飾の描き込みが出来るかどうかを見ていました。
レアリティの高いカードは圧倒的な描き込み量が必要で、ここが弱いと人物が良くてもボリューム不足で周りから見劣りしてしまうため、重要視していたところでした。
ここはレアリティの管理、つまりイラストレーター側からすると単価アップに当たる部分です。
レアリティ差に関しての考察は後述します。

ちなみに同時期に別の大手ゲーム会社で働いていた友人からは「おじさん、おばさんなどの年齢層が高いキャラ、筋骨隆々なマッチョ、イケメンではないキャラが上手く描ける人」は重宝される、なんならそれだけで食べていけるとの情報を頂きました。

余談ですが発注するか否かの判断時にSNSは確実に見ていました。
ネガティブな発言が多い方は1ヶ月お仕事をやり切れるか心配になりましたし、攻撃的な発言のある方はトラブル防止のために敬遠されたりしていました。
ほどよく近況などを記述している方が一番安心してご依頼できたので、余計なことを言わなさすぎるのもよくないのだな、と今になると思います。


制作フローについて

第一段階
イラストレーターさん探し→発注リスト入り

第二段階
→打診

第三段階
発注書送付→ラフ3案提出→線画提出→塗り・仕上げ提出→納品

というのが基本フローで、納期は発注書送付から約1ヶ月、仕上げ後のチェックバックは基本2回まで、納品後の手直しはなしという形で運営していました。

長い間毎月発注しており、弊社の発注に慣れている方からのカラーラフはざっと描いたモノクロの棒人間が送られていましたが「この方は大丈夫だろう」とそのまま通ったりもしていたので信頼というのは大事だと勉強になりました。
(以下自前なので色々とお目溢し略) 

例えばこのカラーラフ(?)がこうなって返ってくるイメージ



レアリティの描き分けのコツについて

=単価アップのコツについて記述します。
わたしの所属していたゲームではレアリティを決めなくてはいけなかったため、イラストが集まってきた頃合いでレアリティ差についてを資料化しました。

この記事内ではレアリティを大きく4段階とし、
N(ノーマル)<R(レア)<HR(ハイレア)<SR(スーパーレア)
の順にレアリティが上がっていくという仕様の前提で書いていきます。

早速レアリティの変化について以下に画像でまとめます。

レアリティによる絵の変化

見てわかると思いますが、レアリティの高さは
「キャラのボリューム(描きこみ量)+動きのある構図(ポーズ)」
で成り立っています。

描き込み低+動きなし=N
描き込み低+動きあり=N+

描き込み中+動きなし=R
描き込み中+動きあり=R+

と言った具合に動きをつけるとレアリティが上がって見えます。
高レアリティに関してはそこにエフェクトが追加されるイメージです。

描き込み中+動きあり+エフェクト=HR
描き込み高+動きなし+エフェクト=SR
描き込み高+動きあり+エフェクト=SR+

例外もありますが、レアリティが高くなるほどキャラが引きの構図になるのが一般的です。
下記に同じキャラでレアリティ差をつけた参考画像をつけます。

まずは見比べやすく横に並べた画像を見て頂きます。


右に行くほどレアリティが高いカード


レアリティの差についてほんのりわかって頂けましたでしょうか?
次にNから順に解説していこうと思います。



N相当のサンプル

Nカードです。
最低限の描き込みに棒立ちでキャラクターの最低限の情報が伝わるカードです。背景も最低限の情報量です。



R相当のサンプル

次にRカードのイラストはNに比べキャラクターに奥行きをつけており、描き込み量にそれほど差はありませんがレアリティが少し上がって見えていると思います。背景も少しだけ情報量が上がっています。



HR相当のサンプル

HRは背景の情報量やキャラクターの塗りの情報量も上げてレアリティを上げて見せています。以降のレアリティとのバランスを取るためにポーズの奥行きは一旦なくし、シンプルにポーズをとらせています。ただ、キャラクターの塗り込みを増したのでRに見劣りはしないはずです。また、背景と馴染む程度にエフェクトがついています。



SR相当のサンプル

最後にSRです。
こちらは背景、キャラクターの描き込みがこの中では一番高く、ポーズも動きがあり奥行きを感じさせるものになっています。エフェクトも最大限つけており最高のレアリティに相応しいものとして演出されています。

ただ、1番の違いは背景がついたことでシチュエーションがわかる、ということではないでしょうか。ストーリーのついたイラストはそれだけでとても魅力的に見えます。


以上で相対的ではありますが、本業がイラストレーターではない私が用意したサンプルでも、ロジックに合わせて描けばレアリティの描き分けはできる事が恐らくわかって頂けたのではないかと思います。

コツは「キャラのボリューム(描きこみ量)+動きのある構図(ポーズ)」です。


イラスト差分の描き分けのコツについて

色について

シルエット、露出度の調整について

装飾追加について

まとめ

視線誘導を使用した差分作成についての考え方は
以下の記事にまとまっています。



ここまで長い文章を読んで頂きありがとうございました。

イラストチェックバックの要領でアドバイスなども出来ると思うので以下にskebを貼っておきます。

https://skeb.jp/@nekonotedesign

この記事が何かの助けになれば嬉しいです。


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