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昔ながらの町内会

日曜日。朝からnoteに長文を綴り、書き終えた満足感に浸りつつノートパソコンを閉じて、ふと目をやったカレンダーに何か書いてある。

「町内川掃除 8:00〜」

一瞬、思考が止まった。

え、今日、日曜だよね? 間違いない? 土曜ってことない、よね?

……しまった! 川掃除をサボっちゃった!

隣家が築50年だと聞いているから、我が町内は少なくともそれ以上の歴史のある、古い住宅街である。私は長らく集合住宅に住んできて、いまの一軒家に暮らし始めたのは8年前。引っ越し早々「班長」なる80代とおぼしき男性の訪問を受け、やれ体育大会だ、やれ赤十字の募金だと様々な活動に参加を半ば強要された。

何しろ初めてのことではあるし、右も左もわからない。新参者として何とか先住民に受け入れられるべく、班長の仰せの通り、数多い町内行事にはできる限り参加した。

2年、3年と経つうちに顔馴染みが増えてきて、参加しなくても差し支えない行事を見極める目も肥えた。とりあえず、町内会費(年払い)と赤い羽根と緑の羽根、当番制になっているゴミ置き場の掃除と資源ゴミの日の立ち会い(分別できていないゴミを分別したり、たくさんゴミを持ってきたお年寄りの手伝いなど)をやっていれば、どうやら安泰のようである。

その中に、年に一度の川掃除も入っているのだ。

なんという不覚!

事前にまわってきた回覧板の出欠表に、私は丸をつけていた。知っていて無視したことになる。

「村八分にされるぞ」と同居人。

違います! わざとじゃないんです!

はあ、弱った。しかし、いくら家で弁解していても仕方がない。潔く詫びに行こう。班長のいる家に。

班長も当番制である。今年度の班長は、長年町内会総務部長を務め上げてきた70歳ぐらいの女性。4年前、私が初めて班長をやったときに、資源ごみの「スチール缶を入れる箱」を出し忘れていたらしく、お叱りの電話を頂戴した相手だ。

またお前か。

そう言われることを覚悟して、おずおずと玄関のインターフォンを鳴らした。

「すみません。今日の川掃除、出席するつもりができなくて……」

うっかり忘れていたとは言えなかった。班長様は私を正面からまっすぐ見て言った。

「罰金2,000円徴収します」

ははあ!

千円札2枚を恭しく捧げ、すごすごと退散した。

小鳥の鳴き声が一日中楽しめる静かな住宅街。ここで余生を過ごすことに何の不足もないけれど、この町内会制度だけは早くくたばってほしい。

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猫野ソラ
最後まで読んでくださってありがとうございます。あなたにいいことありますように。