小説レビュー『だめなやつら』ロクエヒロアキさん
ロクエヒロアキさんが去年「文藝賞」に応募した小説が、第二次予選を通過しました。
第二次ってどのぐらいの作品が残るのか調べてみましたよ。
昨年のデータは見つけられなかったので、一昨年分を紹介します。
・応募総数:1840編
・一次通過:47編
・二次通過:33編
・・・・・・少な!
一次通過でいきなりの2ケタ。
ここから三次、四次と絞られ、最終候補に残った4編から、2編が文藝賞を受賞していました。(宇佐美りんさんと遠野遥さん。お二人ともこのあと芥川賞を受賞)
文藝賞すごいな!
昨年の応募総数は、一昨年より520も多い、2360編だったそうです。その中から第二次選考を通過した、たぶん30~50編前後のひとつに選ばれたのが、ロクエヒロアキさんの小説『だめなやつら』です。なんという難関を突破したのでしょう!うひょー!
ロクエさんは、私が代表を務める「週刊BLマガジン」から去年発刊したアンソロジー同人誌「拝啓BLのかみさま」に、4つの章編を寄稿してくれました。この掌編が読者のみなさんからとても好評だったんです。
そもそもnoteでBL小説を漁っていた私がロクエさんの小説を見つけ、一読でファンになり、マガジン共同運営者にスカウトした経歴があります。
そのロクエさんが文藝賞で二次通過!しかも小説が自費出版されると知り、うれしくて「絶対買う!」とTwitterで騒いでいたら、心優しいロクエさんが献本してくださったのです。うるうる。
ロクエさんがご自身のnoteで小説の冒頭部分を紹介されているので、私もここに引用させていただきますね。
おんなじホテルを使いつづけると、いくらなんでも足がつきやすいのではないか。たとえばもし、ぼくが浮気調査を専門とする探偵だったら、これはずいぶんぼろい仕事だと思うのだろう。もっとも、性の多様ぶりが顕在化しつつあるいまの時代においても、「男同士でビジネスホテルに入る」ことと、「男同士でセックスをする」ことをきちんと結びつけられるような「有能な」探偵で、ぼくがあったなら、としての話だが。
ーーー『だめなやつら』ロクエヒロアキ より引用
さらにロクエさんいわく、
私定義にしたがえば、文学であるのと同時に、既婚の男性ふたりが俗にいう「ただれた関係」になるという意味で、BLでもあります。
というわけなのです。
昨年末に届いた文庫本がこちら。
ああ、淫靡……
いやいや、そういうアレではなく、れっきとした純文学なのでありますが、R18です。BLよりもうんとリアルな、男性二人の物語。
「ただれた関係」なんてロクエさんが言うから、なんだか表紙見るだけで不埒なことを想像してしまう。
一人の時間をたっぷり確保して、一気に読破しました。
ふはー。。。
甘いため息。
語り手「ぼく」と「火屋(ほや)さん」との関係が、淡々とした目線で描かれるわけですが、読み終わったときにはもうすっかり二人のファンになっていました。
読後すぐにロクエさんに送ったメッセージです。
ロクエさん、こんにちは。
「だめなやつら」をたったいま、1時間半かけて最後まで読み切りました。実に爽快です!
なんとなくもっとドロドロした感じのお話かと思ってたけど、とてもかわいらしく私には読めました。
たぶんロクエさんのさっぱりした筆致と、いいタイミングで挟まれるユーモアが心を軽くしてくれるんだと思います。
あんな事件が起きるのに、なんとなくファンタジックな世界観。
水引のおぼっちゃまっぽいクールさと、火屋さんの人たらしっぽい感じ、二人の組み合わせが最高です!
そうなんですよ、も〜お、最高なんです。ベストリーマンカプ!
水引(みずひき)」は「ぼく」の名字ね。
文庫本についてる帯には、『金沢 洋食屋ななかまど物語』の著者である上田聡子さんのコピーが書かれています。
どこへも行けない男が二人、恋の焔にただ焼かれているさまを私は見届けるしかなかった。読み終えたあと、あなたの感情はきっと思っても見ない遠くまで連れ去られるだろう。
(作家 上田聡子さん)
まさにもうこの通りで、二人の行く末をドキドキしながら目で追いつつ、ラストでむはー!となった次第です。
もう喜んでファンアート描いちゃったよね。
本を持ってるほうが水引くんです。あくまで私のイメージ。ムフムフ。
『だめなやつら』はロクエヒロアキさんのBOOTHで発売中です。
また、福井の本屋さん「HOSHIDO」にも置かれていますよ。
noteは更新停止中ですが、素敵な掌編がたくさん読めるので、ぜひそちらも。
おすすめの掌編です。
水引くんと火屋さんに永遠の幸あれ。
もっかい読んで二人に会いに行こうっと。