life per leaf
life per leaf(葉によせて生をおもう)シリーズは、葉っぱの形、葉っぱが見せる明暗、葉っぱの在り方などを、生きている間に経験する様々なことと結び付けて表現した作品群です。
1.values
葉っぱの絵…と見せかけて、その実、葉っぱで観察される明暗の種類をランダムに詰め込んだ作品です。
長年生きてきて、明るい時期、暗い時期、グレーな時期など色々ありました。そうした時期は、決して、滑らかなグラデーションでつながっているわけではなく、明と暗が隣り合わせの時もあれば、当時は暗と思えた時期が後になって実は明だったと分かることもあります。また、自分が当てる照明では暗にしか見えないものが、他の人の照明の下では明の場合もある。
総じて、生きる上での明暗は予測不可能な上に曖昧にしか解釈出来ず、筋が通らない。
それを、葉っぱモチーフで表現してみました。
2.nothing goes straight
「何事もまっすぐにはいかない」
植物を観察していて、どこかに直線がないものかと目を皿のようにして探しても、定規を当てたように真っ直ぐなものは一つもありません。
振り返ってみれば、自分が生きてきた道も同じだなと思います。
3.chaos
ペン画作家は、どういうわけかお約束のように、こうした詰込み系の作品を描くようです。そこで、私も少なくとも一つはこうしたものを描かねばと思って制作した「カオス」です。
今回の展示作品の中で、一番時間がかかったのがこの作品でした。
life per leafというシリーズの一作品としては、比較的分かりやすいデザインかもしれません。
生きること=まさにカオスで、人にせよ出来事にせよ感情にせよ、何の法則性も規則性もなく、予想外の展開を繰り広げていく。
そこには、一つとして完全に同じものは存在しない。
そんなカオスを、沢山の葉っぱで表現しました。
4.bye-bye, elixir
葉っぱの上の水は、表面で弾かれ球状になっているものが殆どです。水は、植物が生きていくうえで欠かせないものなのに、なぜ葉っぱは水分を弾くのか。
恐らく葉っぱは、根と違って賢明なのかもしれません。
世の中には、「いい水」と「悪い水」があり、水なら何でも体内に取り込めばいいわけではありません。人間の社会も、「あなたのために必要なものですよ」「これさえ手に入れれば、人生、万事うまく行きますよ」というお勧め情報で満ち溢れています。
賢明な葉っぱは、虫のいい話に騙されません。「エリクシール」、つまり万能薬、不老不死の薬といった怪しげなものに、自分が頼る必要がないことを知っています。必要なものは自分で見極めて選べることを知っています。
だから、「悪い水」は容赦なく振り落としてしまうのでしょう。
5.long, grey line of manhood
scent of a womanという映画に出てくるアル・パチーノのセリフをもじったタイトルです。学校で悪さを働いたのは誰か、校長に名前を教えれば進学の際に便宜を図ろうと持ち掛けられた少年。その少年と旅をしている最中に、アル・パチーノが言います。「その賄賂を受け取ったが最後、お前も、この国の他の連中と同じになるんだ」
シダの葉っぱの並び方を見ていて、このセリフ” you're gonna take your place on that long, grey line of American manhood.”を思い出しました。似たような形、サイズの葉っぱが整然と一つの茎に縛り付けられているシダ。その影は、正にlong, grey lineに過ぎません。賄賂に限らず、何らかの言動によって自らの人としての高潔さ、誠実さを失えば、表向きがどうあれ、実質は、灰色で、他の葉っぱと区別がつかない、平坦に並ぶ影の一つに過ぎない。
そうしたコンセプトの作品です。