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もいせん入院前と比較しました。〜IT迷子の放射線診断科医がwebアプリを作るまで〜

初ノート・・・ども・・・

当記事は医療者向けプロトタイピングスクール「もいせん」の体験記です。
・IT技術に興味を持ってて一歩踏み出してみたいなと思っている方
・もいせんに興味がある方
を読者として想定して書きました。
ITエンジニアの方には刺激不足だと思いますが、「こんな時期あったな」「私の時はこうだった!」など、コメントもらえたら嬉しいです。
長くなってしまったので、お忙しい方は要約をどうぞ。

要約

・AIやITの知識、技術を身につけたい放射線科医がもいせんに入院した。
・多くの新しいことを学ぶのはハードだったが、達成感もあった。
・卒業制作の造影剤アナフィラキシー対応ボットで大きな達成感を得た。
・入院によってIT仲間、プロトアウト精神、IT方面からの視点を得た。
・全体を通して楽しく充実した時間を過ごせた。
・興味がある方は是非もいせんへ。

自己紹介

何してる人?

放射線診断科医という、画像での病気の検索、評価を専門とする医師です。
専門に進んで暫くするとAIブームが始まり、「放射線科はAIに置換される」と言われることも多くなりました。
完全に置換される日はまだ遠そうだなと感じていましたが、AIを含むITの知識や技術を習得したいと次第に思うようになりました。

IT歴

少年時代からゲームが好きで、PC(親の)を触り出したのもピンボールやマインスイーパ目当てだったと思います。
ゲーム以外のPCアプリで初めてハマったのが、SONYが当時提供していたチャットサービス「さぱり」です。動物をデフォルメしたアバターを3D空間で移動させて他のユーザーとチャットができるサービスで、空間内でのアバターの移動や会ったこともない人と話せる体験に感動しました。

その後、ヒカルの碁で囲碁に、友人の影響で熱帯魚にハマり、ネットでは「侍魂」や吉野家スレなどのFLASHを周遊していました。インドア通り越して穴熊になっていた当時中学生の私は、趣味を紹介するHPを作ってみたいと考えるようになっていました。
htmlやCSSをネットで必死に調べながらメモ帳に打ち込み、ようやくできたと思ったらFFFTPの設定が分からず途方に暮れました。当時作成したものはもう残っていませんが、試行錯誤で作り上げたものが公開まで漕ぎ着けたときはとても嬉しかったことを覚えています。

もいせんとの出会い

プログラミング言語、勉強したけど・・・

大学生時代や就職後にPython、Swiftといったプログラミング言語を、教本片手に独習を試みました。htmlの経験も手伝って、教本に書いてある内容や簡単な応用はできました。しかし、どう活かすのか?が分からず、身につかないまま勉強を辞めてを繰り返していました。

もいせん

それでもプログラミング技術を習得したい気持ちが消えませんでした。AIブームでその気持ちはより強くなり、勉強再開を決意しました。
これまでの経験から、独習をやめてスクールに通うことにしました。

もいせんはプログラミングスクールを検索しているうちに知りました。
医療従事者向けというのもさることながら、次の理念が掲げられています。

当スクールは、プログラミングやWebなどの1つの技術を深く学び、エンジニアなどへの転職を目指すことは目的としていません。
様々な技術に幅広く触れることで『課題を認識し、解決する実装力』を育成します。

https://moicen-forest.studio.site/#mission

この『課題を認識し、解決する実装力』を打ち出しているのが他のスクールと大きく異なる点でした。
正に自分に必要なものだと考え、募集が始まって即応募しました。

もいせんでの日々

大きく「通常授業」「特別講義」「ハッカソン」「卒業制作期間」「DEMODAY」に分けられます。これらを担任の先生の指導のもとに複数人の同期と受講していきます。

通常授業

通常授業では、事前に動画教材を見て学習し、授業日までに課題を作成、授業中は学んだことを活かして自分が作ってみたいものを作ったりしていました。

一回の授業で2~4個程度の新しい技術やサービスを学ぶのですが、これが結構ハードでした。どれも完璧に学ぶというより、その技術やサービスがどんなもので、それを使って何をするかに重心を置いた授業でした。
深掘りしないことに不安を感じましたが、逆にここで技術の完全習得に拘らなくなり、私にはプラスに働きました。

授業の前に、受講生で集まって予習を行う時間があります。
各々が自分のペースで予習を行い、疑問があったらチャットやネット通話で質問して解決を図ります。

通常授業のやり方に関しては、これまで様々なやり方で行われていた様であり、今後も変わる可能性があります。

特別講義

もいせんの卒業生の方々による講義です。内容は主に入院中や卒業後についてで、モチベーションの上下やどのような考えでものづくりをやってきたかなど、自分の今後についても考えさせられました。

ハッカソン

これに関しては多くを書けません。
楽しみ過ぎて前日から熱発し、一人だけハツネツソンで離脱しました。

卒業制作期間

卒業制作で作成するものを検討、作成、ブラッシュアップする期間です。
この辺から、受講生各々が自分の制作物の制作、勉強をする時間となり、学ぶ内容が異なってきます。

DEMO Day

制作物を、オンライン中継でプレゼンします。
観てくれるのはもいせん卒業生やエンジニアの方々がメインだと思います。
自分が作ったものの魅力を伝えられるよう、スライド作成や発表の練習会をやったりしました。もいせん以外の友人やエンジニアの方にも見てもらえ、フィードバックも頂けました。

つくったもの

私は「造影剤によるアナフィラキシーショック」という、薬の副作用によって救命処置が必要な状況下で、冷静な処置をサポートしてくれるWebアプリを作りました。

救命処置は短時間でマルチタスクを処理する必要があり、患者さんの状態が急激に悪化したという強いストレス下でそれを行う必要があります。

一方、副作用により救命処置が必要になるのは稀です。
検査部門では訓練なども行いますが、救急外来などの日常的に救命処置を行う部署と比べると、経験が不足しがちになります。

「冷静に、機械的に、どんな人が何度やっても再現性をもって」処置に取り組めるものを作りたいな、と思い作りました。

詳細は以下のリンクをご参照ください。

Node-REDとenebular、Google Cloudは授業では扱わなかった内容でしたが、「作りたい機能を実装するのに良いのでは」と担任の先生に勧めて頂いたのもあって、サポートを頂きながら勉強しました。
沢山のサービスを利用した経験のおかげか、あまり抵抗なく導入できました。
実現したい最小限の機能を考え、それを少しずつプログラミングしていき、思い通りに動く度にガッツポーズをしてました。デザインもCanvaを使って自作し、急いでいる時でも直観的にわかるボタン画像を作れたと思います。
出来上がった時の達成感は本当に最高でしたし、それを一緒に喜んでくれる仲間と出会えたことも幸せでした。

もいせん入院前との比較

入院前に想定していたより多くのものが退院後に残りました。
その中でも、「IT仲間」「プロトアウトの精神」「IT方面からの視点」の3つが、特に私にとって大きかったです。
どれももいせんじゃなかったら手に入らなかったな、と思います。

IT仲間

まず、同期。
未知のものに遭遇する大変さも、一緒に取り組む仲間がいたから乗り切れました。
みんなで時間を決めて集まって授業の予習や復習をしている時間が、放課後残って雑談しながら勉強しているみたいな感じで、大人になってもこんな時間があるんだなって嬉しくなりました。

次に、先生や運営の方々。質問しやすい状況を作って下さり、時に優しく時に厳しく私たちを引っ張って下さりました。

もいせん退院された先輩方。NoteやQiitaの記事、特別授業での交流で、もいせんまでやもいせん退院後について示して下さりました。また、作りたいものへのアドバイスも頂けました。

最後に、職場の方々。作ったものを持っていくと忌憚なき意見を下さり、制作物や医療の知らなかった側面を教えて下さりました。プログラミングをされているわけではないですが、仲間だと勝手に思うようになりました。

プロトアウトの精神

もいせん入院中に出会った言葉に「プロトアウト」があります。
「プロトアウトは不完全な状態を許容して前に進む文化である」というもので、ITをどこか完璧なものと捉えていた私には「不完全でも大丈夫なんだ!」と目からウロコでした。

入院前、独習していた頃は「まず教本読んで、基礎的なことできる様になって。一冊だと足りないかもしれないから他の本も買ってみて。」 と、完璧な技術習得を目標に始めて、結局そんなことはできなくて、いつの間にか勉強を辞めてました。

もいせん入院中はプロトアウトの精神に触れ続けました。そのせいか、卒業制作時は「こんなのあったらいいな。全部わかんなくていいから、とりあえず簡単なものからやってみよう」と、挑戦するための敷居がとても低くなりました。簡単なものなので時間とエネルギーも気負わずに済みますし、作った達成感をエネルギーに次の行動に繋げやすくなりました。

IT方面からの視点

解決したい課題を選び、それの解決に取り組む授業を経て「どのような課題があるのか」「それはITの力で解消もしくは低コスト化できないのか」と考える様になりました。解決手段は必ずしもITじゃなくて良いですし、日常業務を別の視点から見れる様になったことが大きいと感じています。

まとめ

AIやITの知識、技術を身につけたい放射線科医のもいせん体験記でした。

入院中は多くの新しいことを学びました。大変でしたが、達成感もありました。同期、先生、先輩方のおかげで楽しく充実した時間を過ごすことができました。

卒業制作で造影剤アナフィラキシー対応ボットを卒業制作で作り、得られた達成感は最高でした。

入院によって、IT仲間、プロトアウトの精神、IT方面からの視点という得難いものを得ました。今後の医療に活かすとともに、ものづくりも続けていきたいです。

長くなりましたが、とても充実した楽しい時間を過ごせました。
興味のある方、是非仲間になりましょう。


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