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【インタビュー】東京育ちが描く群馬の未来|新たな土地で地域貢献を目指す大和隆生さんの挑戦

introduction

妻の転職をきっかけに群馬県に移住してきた東京生まれ・東京育ちの大和隆生さん。移住から1年弱にもかかわらず、新天地で自ら事業を起こし、地域貢献活動にまい進している。

そんな大和さんの事業の中核を担っているのが、ブロックチェーンなどの新技術を活用した地域貢献コミュニティ「GALYEA(ガレア)」だ。

他の多くの地方自治体と同様に担い手不足や空き家問題を抱える群馬県に可能性を見出している大和さんに、この活動にかける想いや、その先に描く地域の未来への展望を聞いた。

新技術で活動への足がかりをつくる地域貢献コミュニティ「GALYEA(ガレア)」

引用:プレスぐんま「群馬発!分散型自律組織DAOを活用したフラットな地域貢献コミュニティ『GALYEA(ガレア)』始動!

2024年9月1日、「群馬県の地域貢献活動の足がかりとなる存在でありたい」と大和さんが立ち上げたのが、地域貢献コミュニティ「GALYEA(ガレア)」だ。

地域貢献活動に携わる意欲があるものの、実際にどのように参加して良いのかと迷う人に同じ志を持つ仲間との交流や活動の機会を提供する。これは一人も知り合いがいない土地で事業を始めた大和さんが、実際に感じていた課題を解決するものだ。

従来の地域コミュニティと異なるGALYEAの最大の特徴は、ブロックチェーンを基盤にしていることだ。ブロックチェーンとは、ネットワーク上の端末同士をダイレクトに接続し、暗号技術を用いて取引の記録を分散的に処理・記録するデータベースの一種。暗号資産などでも活用されているこの技術によりデータの改ざんが不可能になり、情報の信頼性が担保されるわけだ。

「ブロックチェーンにより各自の地域活動がデータとして残るので、今まで見えにくかった地域活動を可視化し、その価値を証明することにつながります」と大和さんは説明する。たとえば就職活動中の大学生であれば、地域貢献活動に携わってきたことを、よりアピールしやすくなるはずだ。

他にもGALYEAは、活動を発信するメディア機能を担う「プレスぐんま」や、チャットツール「Discord(ディスコード)」を使った運営、メタバースなど複数の要素で構成されている。

一見すると複雑に思えるこの仕組みだが、必要な情報は多くの人が使い慣れているLINEやInstagram、X(旧Twitter)でもアクセス可能だ。

「私たちの目標は、地域活動の最初の入り口になること。私が群馬に来たときに感じた溶け込みにくさのようなものは、どの地域にもあります。そのハードルを下げることが重要です」と大和さんは話す。

東京では出会えなかった「人」「活動」「場所」に魅せられた

大和さんは、なぜ新天地でこのような活動を始めたのだろうか。

その答えは、移住する以前に群馬県出身者や彼らが語る群馬の可能性、そして実際に今実感している「人」「活動」「場所」の魅力にある。

大和さんが特に印象的だったと語るのは、地域を盛り上げようとする人の熱意だ。たとえば、高崎経済大学の起業サークル「SONOSAKI」や、磯部温泉地区を中心に活動する「学生団体YUZU 磯部温泉支部」の活動からは、地域をより良くしたいとの情熱を感じさせられた。「このような地域を盛り上げようという人の熱意に触れることは、東京ではほとんどなかったですね。だから新鮮さもありました。」と話す。

また、群馬という土地にも心惹かれた。「30年近く住んできた東京は人も建物も多く、すでに余白がない。でもここ群馬なら、土地も建物もこれからいくらでも活用のしようがある。まるで宝の山に見えました」と語る大和さん。群馬県の自然豊かな環境はもちろんのこと、地方で問題となっている空き家すら、大和さんにとっては魅力に映ったのだ。

そこで大和さんは2020年に東京と群馬をつなぐNPO法人「かんますベー」を立ち上げ、イベント開催などに関して学生の支援を実施。そこでの経験がGALYEAにも引き継がれている。

そんな大和さんの活動に影響を与え、原動力になっているのは、自身の人生観だ。

「毎日同じことの繰り返しで、先が見えている人生はつまらないと感じてしまいます。むしろ、未知の要素が多いほうがワクワクできて頑張れるんです」。

地域の担い手不足を解消し活気ある群馬の未来をつくる

GALYEA(ガレア)の活動を通じて、大和さんは群馬県内の「担い手不足」を解消したいという。「高崎経済大学の新入生約1,000人のうち、約半数を占める県外からの進学者は卒業後は多くが都内へ流れています。彼らが、そのまま群馬にとどまるような未来をつくりたいんです」と語った。

そこで必要となるのが、自分の将来の仕事を模索する学生のキャリア支援だ。GALYEAの地域活動に参加することで自分の適性や興味を理解し、地域課題の解決と学生本人が納得できるキャリア選択を実現する。

これらの活動を通じ、大和さんは「デジタル県」を掲げてさまざまな事業を展開する群馬県が、新技術を使った地域活性化の事例として認知されることも期待している。

「ブロックチェーンやメタバースといった新しい技術が地域活性化につながっている事例は、まだ全国的にも多くありません。群馬県がその先駆けとなれば、県民全体の活力にもなるのではないでしょうか」と大和さんは目を輝かせた。

しかし、そこに至るまでの道のりは平坦ではない。現在GALYEAは二つの課題に直面している。

一つ目は「人」の問題だ。本来、GALYEAの活動の中心となるべき学生の参加がまだ少ない。「10月は地域の課題についてアイデアを出し合うイベントを、そして11月の高崎経済大学の学祭ではブースを設置します。そこでまずは10人ほど、今後の活動の中心となるメンバーを集めたいと考えています」と大和さん。

そして二つ目は「お金」。GALYEAの運営には毎月かなりの費用がかかる。ブロックチェーンを使ったコミュニティ維持に約10万円、GALYEAのオフラインでの活動の拠点になるコワーキングスペースの運営に約15万円、そして人件費も必要だ。現在の資金では半年しか持たないというが、地元企業から支援を受ける形での解決を目指している。

引用:プレスぐんま「【DIY体験】GALYEAコミュニティスペース立ち上げイベント

「これはメンバーで知恵を出し合いながら、早急に解決策を見出していかなければなりません。半年以内に、企業から支援を受けられる体制の構築を目指します」とのこと。

最後には、大和さんが実現を願う群馬県の未来について力強く語ってくれた。

「私は、群馬県が新しい技術と地域貢献の活動が融合した、日本でも希少な存在になれると信じています。GALYEAはその始まりの火種のようなものです。この小さな炎を少しずつ大きくし、最終的には県全体に活気をもたらす大きな炎になると信じています」

大和さんの大きな夢は、まだ最初の一歩を踏み出したばかり。GALYEAが群馬県をどのように変えていくのか、その行方から目が離せない。

Profile

大和 隆生(やまと たかお)
群馬地域活性化団体「かんますべー」代表。早稲田大学先進理工学部電気情報生命工学科卒。妻の転職をきっかけに、東京から群馬に移住。群馬の自然と地域の人々に魅力を感じ、ローカルメディア「プレスぐんま」を立ち上げ、群馬の「伝統」「文化」「人」の魅力を県内外に発信する活動に取り組む。「群馬を盛り上げる」をテーマにPodcast番組『ぐんもり』を毎週配信中。

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