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遠隔お盆

先日、当てずっぽうにお墓を探していたら、導かれるようにたどり着いたお話をしました。

今までの感覚だと、お墓の中に亡くなった人は眠っているから、故人はそこで待っていて、そこに行かないと繋がれない、供養が出来ない、と思っていた。

父に関しては、もう亡くなっているのに、カルマというか、念というか、ある種の負の連鎖のようなものさえ感じ、お墓に行ってはいけない、お墓参りをしたいと言ってもいけない、という怖れさえあった。触れてはいけない話題のような気がしていた。

実際、祖父母(母方)のお墓参りはしてきた。

母の実家の近くに墓地はあったし、青森に帰省すれば当然のようにお墓参りをした。


そんな我が家だったが、上のお話でも書いたように、どういうわけか父の墓を訪ねる運びとなったのだ。

父に会ったことのない甥っ子は、父にとっての初孫である。

そんな「じいじ」は初孫含め、私たち娘を導いてくれたことは、私たちがこれまで持ち続けてきた「負の連鎖」のような感情を、

今ここで終わらせよう、むしろ、

月日と共に実は消化していて、もう手放しても良い、

持ち続けてきたのは、自分たち自身であったことに気が付こう。

負の連鎖ではなく、負の感情を、解放しよう。

そんな機会を与えられた出来事だったように思う。

20年も過ぎてしまっていた。

今までどうしてここへ来ることがいけない事だと思っていたのか。

父は滅多に夢に出てこない。

よく、お墓が汚れてたり、しばらくお墓参りをしないと、夢に出てきたり、人により催促をするような内容の夢を見たりするらしいが、お父さんが“来てね”、といった風な夢は一度も見たことがなかった。

それは、父が生前感じていた罪悪感ゆえだろうか。

でも、今ここで、今までの全てを解放する。

互いにその準備ができた、「その時」がきた、そんな感じだったのだろう。


父は催促せずとも、やはり待っていたんだ。それがはっきりと分かった。


故人は、長く長く果てしなく続く道を、飲み食いせず、ずーっと歩いていて、ずーっと修行していると聞いたことがある。

命日とお盆の時だけ、地上に戻ることができ、その時にお腹いっぱい食べれるとも聞いた。

亡くなった人は、肉体と共に還ってくる訳じゃない。

じゃあ、地球上のどこにいたって、来れるんじゃないか?

言っちゃあ、霊じゃないか。

招き入れれば、ここに来てくれることを受け入れれば、

私が待っていれば、

フランスだって来れるでしょ、きっと!

来てもらおう、祖父母に、そしてお父さんに。


私は、その年から、それぞれの命日とお盆に、うちで一人&遠隔法事をすることに決めた。

たくさんのご馳走と、果物と綺麗なお菓子、男性には日本酒やウイスキーを用意し、可愛らしいお花も添えて、三人の写真の前でロウソクとお線香を焚き、それが消えるまで、私は写真と灯を見つめながらお話しする。

ロウソクとお線香が消えたら、私がたくさんのお供え物を晩酌しながら全部自分のお腹に入れる。

私は霊感はないが、ある時、ロウソクが消えるのを待つ間、

「冷めないうちに早く食べなさい」

と言うおじいちゃんの呟きが聞こえた気がした時もあった。

お供え物を全部食べる理由は、お墓に食べ物を放置しない理由と一緒。

浮遊霊さんたちに食べられないように。


地上に残された人が供養をする理由の一つに、

この世に残った家族が、あの世へ逝ってしまった家族へ、少しでも次の修行が過酷なものにならぬよう、閻魔様に善を送っていることになるのだそうだ。

フランスから、閻魔様へも届きますように。


遠隔お盆や遠隔命日をし始めて、何かが劇的に変わった訳じゃない。

日本へ送った荷物が、トラッキングによると一度は紛失したものの、祖父母と父に拝んでお願いしたら、次の日突然届けられたり、

嫌なことがあって悔し泣きしながらおじいちゃんに「負けない!」などと言いながら、気分を替えるために勉強して、その後バイトへ向かう道中なかなかのお金を拾ったり(パリでお札が落ちているとかあり得ないです)と、

ちょっとした嬉しい不思議体験はあったものの、単なる偶然だったかも知れないし。

私は純粋に、私の想いが届いてると良いな、と思うし、

海外に長く住むからこそ、やはり自分のルーツを意識して、大切にしたい。

今までお墓に行かないと供養できないと思い込んでいたけど、私なりに誠心誠意に供養できればそれでいい。

日本とは時差があるから、日本でまずたらふく食べてもらって、その後フランスに来てまたたらふく食べてもらえたら、それでいいの。

明日8月15日、今年は祖父母と父だけでなく、

お会いしたことのない母方のご先祖さまたち、父方のご先祖さまたちにもお越しいただき、

盛大に盆を行いたいと思っております。

人間である私の胃袋の容量で足りるかな。

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ねこの母
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