文学トリマー #毎週ショートショートnote
「今回は521文字か」
髭を撫で付けながら男はモニターに出力された結果を見て呟く。
習慣になった毎週ショートショートの執筆作業だが、ここからが腕の見せどころだ。
多種多様な作家が参加するこの企画の主なルールは、毎週発表されるテーマと文字数制限。テーマに則して粗く文章を組み立てた後で、制限に合わせて文字を削るのが男の普段のやり方だ。その工程は、さながら文学トリマーといったところか。
今回は100文字近く削らないといけない。さあて、と男は作業に取り掛かる。
「この『無精髭を触ってしまうのが男の癖だった』は本筋には関係ないから『髭を撫で付けながら』くらいにしておくか」
「『呟いた』は『呟く』、『取り掛かった』は『取り掛かる』だな」
枝打ちするように記述を書き換えていく。文体が固くならない程度に短い単語にまとめ、リズムが悪くならない程度に体言止めなどの小技を挟む。
「よし、こんなもんか」
ぴったり410文字。男はエンターキーを押した。
了(410文字)
以下の企画に参加させていただいています。