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欧州頂上決戦!王国スペインと帝王ドイツ

事実上のファイナル



今大会の好調チーム同士のクォーターファイナル。ファイナルで見たかった!




現在を生きる者、未来を生きる者


■スペインに対するドイツの対面構築

スペインのビルドアップに対してドイツが抑えなければならないのは3選手。

まずは軸となるロドリ。そしてCBのラポルト。さらに最前線へのリンクマンとして振る舞うファビアン・ルイス。ここのローテを打ち崩したい。

ロドリに対してはギュンドアン、ファビアンに対してはジャンがプレス。スペインのビルドアップに嚙み合うようしっかり対面構築を作っていく。

これに対するスペインは、ジャンがファビアンに対して出てくるのを利用。ファビアンが下がることによって背後をモラタ大先生が、

ファビアンが上がればラポルトがドリブルで持ち運ぶ。

スペインの目的はいつでも両ウイング。明確なゴールがあるので、ここへ運ぶ上でのルートを考えるだけでいい。ニコとヤマル。この2人が勝てないSBなどこの世に存在するわけがなく、ここにボールが渡るだけで勝ち確。

ドイツが嵌めたいのはココへのルートを遮断したい。ただファビアンが元々box to boxの選手だということ、ラポルトに想定以上に運ばれたこと、そしてロドリが想定以上にアンカーから動かなかったことでギュンドアンがピン止めされたこと。前半におけるドイツの対面構築は不発に終わる。



■ただでは終わらぬドイツの修正

右サイドでヤマルに起点作られオルモに先制点を許したドイツ。ドイツの修正は最前線に基準点を設けるとこでポゼッションにおける深さを作ること。

ハヴァ―ツと比べると、ポストで基準点になれるフュルクルク投入で、スペインのCBを抑えることに成功。背後にそろえるサネ、ムシアラ、ハヴァーツにスペースを与え、大外に控えるSBからのクロスに対するターゲットとしてのフュルクルクと、幅広い攻撃のバリエーションを見せスペインを押し込む。



■逃げ切りに失敗したスペイン

完全アウェーとなるこの1戦で追加点を奪うことは容易なことではないと判断したデ・ラ・フエンテはミケル・メリーノを中盤に入れ強度を上げると同時に、ニコとヤマルを下げ、よりポゼッションを強めるティキ・タカを進めるが、ドイツが攻勢を強める。

ミュラーとヴィルツを前線に加えるスクランブル攻勢がカオス強度を高め、結果スペイン守備陣に的を絞らせないポゼッションを遂行。スペインSBが内側に絞らざるを得ず、空いた大外に走りこむキミッヒにラウムにはウイングがカバーに走らなければならない。奪ったとて、最前線に控えるはゼロトップのオヤルサバルなので深さは作れず、クロース中心のドイツビルドアップに対抗できずに89分崩れた。




■勝負を分けたのは力の差か、運か

デ・ラ・フエンテの苦手な部分である「試合中の流れを引き戻す劇的采配」には期待できないので、逃げ切りに失敗したスペインが完全アウェーで勝ちきるにはカウンターのワンチャンをしっかり決めるかPK戦で勝つかの2択。延長入ればドイツの方が勝ち筋は見えてるはずだった。


「カオスをコントロールする」ストーミング流儀こそドイツであり、その流れを持ってポジショニングを整えたナーゲルスマンは、今のドイツにとっては理想的な人材なのは確かだ。デ・ラ・フエンテの行った修正がホセルを基準点に投入するくらいしかなく、むしろ中盤のクオリティを削らざるを得なかったことを踏まえると、詰んでいたのは間違いなくスペイン。だが勝ち切ったのはスペインだった。


ホセル投入によってスペインにもたらされたのは、基準点の復活。逆にファビアンを下げたことで中盤はドイツが完全に支配できる陣形になっていた。だがこの基準点復活だけで決勝点を生み出てしまったのは何ともお互いにとっては皮肉でしかない。ホセルの脅威は、レアルのチームメイトであるリュディガーが最も理解しているからこそ、メリーノよりもフォアに流れていたホセルを気にしてしまい決勝点を献上してしまったのはある。しかしホセルの効果が表れたのは唯一この場面だけだった。そしてそれが決勝点になりドイツは沈んだ。


ドイツの敗退は、決して悲観することではない。クオリティで言えば間違いなくこのマッチングは事実上のファイナルにふさわしかった。延長後半のハンドがもしPK判定されていたら、間違いなく上に進んだのはドイツだった。フュルクルクが前段階でオフサイドだったことから見逃されてはいたが、このレフェリングも人によるところが大きい。



スペインの勝ち上がりは運なのか?
逃げ切りに失敗したことで、勝つためにリスクを犯してスクランブル体制になった。やはりいつ失点してもおかしくはなかったし、クオリティ落ちた中盤を必死にカバーしていたのはカルバハルとククレジャのネガトラの強度だった。結果カルバハルは最後の最後に退場し、勇者としてピッチを去った。延長に限ればスペインは負けゲームをなんとか勝ち切った、そんなゲーム。だが、先制点を奪うまではスペインがゲームのイニシアチブを握っていたのもまた事実。カオスが味方したのがドイツではなく、それに最も頼らないスペインだったというのはサッカーの奥深さを感じさせてくれた。


私たちは、サッカーで成功するためには2つのルートがあることを見い出した。一つは、実力を高めること。もう一つは、幸運を味方にすることだ。シーズンを戦い、優勝するためには、両方が必要になる。だが、どちらか一つがあれば、個別の試合に勝つ可能性はある。
「サッカーの歴史は、サッカーのアクシデントの記録だ」というディー・ツァイト紙の記事は正しい。それは、「偶然は論理的だ」というクライフの名言を裏付けるものだ。

サッカーデータ革命 ロングボールは時代遅れか
著者クリス・アンダーセン&デイビット・サリー
訳児島修
  発行 辰巳出版
55項より引用




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