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キーワードから考える、欧州最新戦術トレンドを占う! part1

トレンド



欧州の新シーズンがいよいよ開幕します!!

今回は昨シーズンの終わりからこのプレシーズンから見る、新シーズンの新たな戦術トレンドをキーワードを元に考えてみます。なんだかfootballistaみたい。


新戦術トレンドのキーワードはコチラ。

  • 4人目のMF

  • 「対5レーン」対面構築

  • SBのCB化

  • Provoking build up

この4つのキーワードから探っていきます。ではどうぞ!!



Part 1 4人目のMF


■4人目が必要な理由

「4人目のMF」とは?

文字通り、中盤に4人目が必要であるということです。


なぜ4人目が必要なのか。
まずフラットな4-4-2が流行した90年代。中には2枚がいました。アリゴ・サッキのゾーンディフェンスは、ピッチを満遍なくカバーするのに適していました。その4-4-2崩しのために考案されたのが4-3-3です。中盤を3枚にすることで数的優位を生み出し、ポゼッションしたい。これが長年続き、システムにおけるトレンドとなっています。大体のチームは4-2-3-1か4-3-3を採用しているのもそうですね。 

ポジショナルプレーの浸透によって、ウイングの重要度が高まり、尚且つ3センターは不動となったことで、いわゆる5レーンをそれぞれ埋めるという形なのですが、これにより4-3-3だけでなく3-1-4-2や対5レーンにおける対抗策システムである3-4-2-1が次々現れました。3-1-4-2はインテルが採用していることで攻撃的なシステムとして昨シーズンはCL決勝まで進出しましたし、3-4-2-1はアントニオ・コンテの代表作になりつつありますが、ローマでジョゼ・モウリーニョも使っていることから5レーンへの対抗策(システム上5バック化できる、3センターに対してシャドー含めれば4人いる)として採用しています。4人目が必要になったのは、3センターに対しての解決策です。あと5レーンで言えば守備においてもMFがいることでリスクを犯す必要もなくなったと。




■4人目のMFの歴史

3センターから4センターにするのに、システム上スタートから4人を中央に採用すると、今最も戦術上大切なウイングを削らなくてはなりません。4センターと言えば3-4-2-1はもちろん、ダイヤモンド型システムがあります。ですが、3-4-2-1だと守備に比重が重くなり、ウイングよりもWBを使わなくてはならないのと大外で優位作るのが難しくなる。ダイヤモンド型だと3-4-3なら別ですけど、4-3-1-2だとウイングを置けないのでポジショナルプレーには不向き。等々。

なので、可変することで一時的に中盤を4枚にすれば問題は解決なので(常に4枚である必要はないから)どこかから移動させる。

その走りがペップ・バルサですね。徐々に3センターが流行しつつあったときにメッシの4人目のMFとしての役割でvsファーガソン、vsモウリーニョをぶっ潰せた。

「4人目」が意識される前に、されるようになるきっかけが5レーンの登場です。大外が重要視されたことが始まりなのですが、極論言えば5レーンが意識されなかったらたぶん4-3-1-2が世界の覇権を握っていたと思うし、可変システム自体重要とされなかった。

続くペップ・バイエルンが全ての始まりでしょう。メッシがいないバイエルンにおけるホットスポットはウイングのアリエン・ロッベンとフランク・リベリーです。

ロベリー

バルサはメッシが偽9番でしたが、ウイングにダビド・ビジャとペドロがいたからできた。バイエルンはロッベンとリベリーという最高のウイングがいるのに偽9番をやる必要があるのか?むしろ彼らに合わせるなら正統派9番が必要だと、1年目はマリオ・ゴメスとマリオ・マンジュキッチ、2年目からはロベルト・レヴァンドフスキを使い、5レーンを機能させるべく前線のシステム構築を行った。そこでウイングを活かすべく生まれたのが偽SB。

「バルサは毎年、新たに設置した戦術的な動きを身に付けながら進化し続けていた。しかし、2011年クラブワールドカップ(ネイマールがいたサントスに4-0で勝った)の後から、同じ選手たちで進歩し続ける道を探るのは困難だと思ったんだ。なぜなら、これ以上ないというくらい良いプレーをしたのちに、次のステップへ行ける気がしなかったから」
この時、チームを進化させるために浮かんだ1つのアイデアが、左のサイドバックに関する戦術の変更だった(右サイドバックには触れなかった。なぜなら、戦術の理解力に乏しいアウベスがそのポジションにいたため、新たな戦術の変更を加えるのは不可能だったからだ)。ペップはこの変化について、7月のトレンティーノで私たちにこう説明している。
「あの時、バルサでイメージした戦術変更の目的は、ワンピボーテとともに、左サイドバックをドブレピボーテとして敵の攻撃の通路を閉じるために使うところにあった。攻撃を組み立てながら、私たちのチームはワンピボーテの高さまで左サイドバックを上げることができた。しかいs、そこから先は、ボールがワンピボーテよりも前にパスされるまで、左サイドバックはワンピボーテを追い越さないようにする。そして、必要とあらば左サイドから絞って、ピボーテの高さを超えずドブレピボーテの1人となるんだ。左サイドバックをワンピボーテとともにドブレピボーテとして中に入れるアイデアは、私の中でリザーブしてあったんだ」

ペップ・グアルディオラ キミに全てを語ろう 
著者マルティ・パラルナウ 訳羽中田昌+羽中田まゆみ 発行東邦出版
196項より引用

当初は、偽SBは守備のメリットを抑えての採用でした。この守備というのは4人目のMFとして重要なタスクの1つですね。前線は5レーンで埋まっているので、そのカバーリングとしてSBをピボーテ化する。この流れがそのまま現在に引き継がれている感じです。

現在の中盤4枚必要なのは、全ては5レーンから始まっているということです。より詳しく言うなら、5レーンにそれぞれ1人ずつ対面構築するとそれぞれのレーンに1対1が生まれるので、ここに+1、5レーン+1と捉えた方がいいです。



■マンチェスターシティのストーンズMF化

では長い前置きを終えたので、ここからやっと本題です。中盤4枚化してるチームはたくさんあります。まずはシティ。その前にこちらを読んでみてください。

シティのストーンズ改造計画の始まりは、それまでフォーデンのゼロトップやっていたところから正規品CFハーランドを置いたことで、ハーランド周辺をゲームメイカーで固める、バックにカンセロロールがいらなくなった、でも可変して中盤に補充は必要、なところでストーンズが挙がったわけです。

ジョン・ストーンズ

ストーンズのMF化は偽SBでもあれば偽CBでもあるし、始めからMFとしても捉えられるしで、「ポジションはストーンズ」全てはピッチ上の状況に置いて正しいポジショニングをする。


これは後々「対5レーン、対面構築編」でもやりますけど、前線を5レーン埋めてくる相手に数的優位を作らせないために5トップで迎え撃つ。この5トップの陣形は今季から本格的に始動すると思うんですけど、なら+1するなら後方しかないよねでストーンズ。

シティに関してはまた別でやります。ここではストーンズが+1ということで。



■アーセナルのSBのゲームメイカー化

アーセナルの+1は左SBのジンチェンコ。 

オレクサンドル・ジンチェンコ

そもそもなんですけど、ジンチェンコはトップ下の選手でした。SBが板に付いちゃってますけど、ゲームメイカーをSBに置いている。それがアーセナルです。

シティと違うのが、ビルドアップに特化した可変。ジンチェンコが上がるがサイン。最終ラインは左にスライドするわけでもなく、昨シーズンはジャカが代わりに落ちてボールを引き出しています。
3トップが相手最終ラインを牽制し、中盤に制圧しに掛かる。そこでジンチェンコを"本来の位置""本来の役割"に戻して、狭い中盤エリアにスルスル~っとフリーで入り込むことでボールを受けられる。そこからジャカが最終ラインとの中継役をやるけど、今季は代わりにハヴァ―ツなのでココの連携はどうなるか。もしくはライスがインテリオールに入ってジャカと同じ役割をするのか。シーズン入ってからのお楽しみ。

ジンチェンコの偽SBにより、本来の役割を果たすジンチェンコが正規のポジションに戻ったことで相手は+1に対してのマークが出来ない。つまりジンチェンコは自らを解放するべく偽SBと化して中盤を制圧する。アンカーとしてボールを引き出すのと配球するので、ウーデゴールがより高い位置にポジショニングすることができ、本来はインテリオールなんですけど実質トップ下みたいな。より決定機に直接関わることが出来るのも(得点数だけでも15点奪ってる)、ビルドアップにおける負担がないことで、この部分をジンチェンコがフリーな状態でこなしてるこらこそアタッキングサードに専念出来るのです。




■カオスを収めるガビ

バルサの+1は左ウイングのガビ。
ただバルサの場合は、シティやアーセナルのように戦術上のタスクとして可変しているというより、起きてしまうカオスを収めて組織を正すため。

バルサは基本布陣である4-3-3を大きくイジらない。最終ラインにクリステンセン、アラウホ、クンデがいて、いずれも対人の強さに速さ、裏への対応を高レベルでやれます。素晴らしい。

そんな頼れる最終ラインなので故にあまり崩したくない。左のバルデは守備よりも攻撃に強みがあるのでココは上がらせたいんですけど、ジンチェンコのようなゲームメイクできるタイプではなく、ウォーカー的な感じのSBなんですよね。ここはバルデに+1やらせても上手くいくイメージは沸かない。逆の右に関しては、クンデは器用です。やらせれば偽SBとか、それこそストーンズがやってるような役目は出来ると思う。だけど、トータルで考えてチーム全体の守備を考えたときに、シティではないんでクンデを中盤に上げて2バックにしたときのリスクの方がデカいとチャビは判断したんじゃないんでしょうか。可変するリスクは、ネガトラで後手に回りやすくなるところです。それでここ数シーズンのバルサはカウンターを受けまくっていたので、最終ラインは安定させたかった。ウイングも、特にここのポジションはチャビは重要視しているので、デンベレは確定。左は実は埋まってなくて、ハフィーニャ右ならデンベレが左、なんですけど、ハフィーニャ&クンデだと、ポジション維持のバルサでは同サイド攻略は結構きついです。
それは守備も例外ではないんで、4-3-3のまま守ると、中盤で数的優位作られて最終ライン何とか頑張ってくれになってしまう。中盤3枚は守備においても現状はきついです。ウイングに下りてもらうとはいっても、ハフィーニャにデンベレなんでそこまで期待はできません。頑張ってくれるけど。

昨シーズン、意外と失点しなかったですけど、見てる側からしたら「そのデータホンマか?」と思うほど中盤はカオス。特にトランジションですね。ベルナベウで叩き潰されたのも要因はそれだし。

1-3で完膚なきまでやられたクラシコ。トランジションに強みを出すバルベルデに大いにやられた

そのバルサが安定しだしたのが年明けてから。1月のスーペルコパですね。ここで本格的にガビ左ウイングやって、バルデを上がらせる、ペドリを落とす陣形。4-3-3は崩してないですけど、カオスを収める意味でのガビが+1となって、特にトランジションなんですけどバルサは安定しだしました。ただガビに求められるタスクが、中盤の+1としての役割なんですが、守備ビルドアップ全てにおける足りていない部分をガビ1人で補う&ウイングの仕事もこなしてもらう多重タスクなので、闘争心鬼レベルのガビでも過労死しないように何とかしてほしいし、ビルドアップと最前線を繋ぐ役目としてのギュンドアン獲得でもあるのでガビの負担だけは何とかしてほしいです。

ガビ・オリジンフォルム




■トランジションの補強 レアル・マドリードの2人

ポジショナルプレーにおける可変がこれまでの3チームでしたが、別例としてレアル。右ウイングのバルベルデも+1としての4枚目役になります。

フェデ・バルベルデ

ジダン体制の時も、あれは人数合わせ的な感じでの起用でしたがやってました。純粋にウイングとして張っているのと5バック化するときの右担当としての起用でした。

それがアンチェロッティの下では、トランジションの強化として+1となっています。

トランジション時の大きな変化として、モドリッチが解放されることです。守備においてもバルベルデがいち早くカバーに入れることと、ポジトラでも中盤に入ることでマークを分散させられます。これによってモドリッチが浮くのでチームに大きな恩恵を与えられています。


そしてもう1人。エドゥアルド・カマヴィンガ。

カマヴィンガ

左SBの人材不足ということでコンバートされただけなんですけど、思っている以上にハマった。たぶん本人はSB嫌みたいなんだけど、カバーリングやサポートの面で+1となれて痒いところに手が届く、まさにそんな感じの役割で終盤はレアルの左SBとして大きく貢献していました。

役割的にはバイエルンの時のアラバみたいな感じ。それをよりサポート型に徹したというイメージかな。今季はMFに戻ってという形ですが、戦術の幅を広げたという意味では、新加入のフラン・ガルシアにも求めるのかね。




はい。ここまで予想ではありますが新戦術トレンド候補の「4人目のMF」を考察してみました。可変、コンバートすることによって今では外すことのできない5レーンやトランジションの強化に繋げています。進化系の続きです。




次回予告

Part2。「対5レーン 対面構築」を見ていきます。


Thanks for watching!!

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