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バルセロナ、ポジショナルプレーの歴史/第3章 引き継いだ哲学 グアルディオラの残した伝説
前回の続き。
以下参照
適当な続きで初めて、どうもすいませんでした
ライカールトのバルサが終焉した07/08。後任に託されたのは、ドリームチームの超重要人物、ペップ・グアルディオラです。
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もともと後任候補は何人かいまして、最後にフロント内で分かれたのが、ペップとジョゼ・モウリーニョ。2年連続無冠で終えたバルサからしたら、モウリーニョのような短期で結果を出せるスペシャルワンは理想。さらに、ロブソンとファンハールの時にコーチングスタッフとしてバルサにいたので、バルサの哲学を知るものとしてふさわしいと。それで最終候補まで残りました。最後はクライフの助言もあり、哲学に沿っているのはペップだろうということで、当時バルサB指揮官であったペップのトップチーム監督が正式に決まりました。
ペップの最初の仕事は“粛清”。チーム内の不満分子であったロナウジーニョにデコ、エジミウソンら主力の放出。そしてカンテラ出身者をベースにチーム作りをスタート。
いよいよ、伝説が始まります。
Football of the LEGENDs
■バルサのDNA
ドリームチームから10年。指導者となってバルサに戻ってきたペップ。バルサBで共にしたメッシ、ブスケツ、ボージャン、そしてマンチェスター・ユナイテッドよりカムバックしてきたピケなどをチームに加え始動しました。
「黒い羊」の告発人であるエトーも、当初はペップの構想外でした。放出したメンバーがビッグネーム過ぎて、しかも補強として獲得したのが、セビージャからダニ・アウベス、セイドゥ・ケイタに加えユナイテッドからピケだけ。あとはBからの昇格でした。かなり見劣りするメンバー。今ではビッグですが、当時はメッシの10番、イニエスタの抜擢はロナウジーニョやデコの穴埋めとしては力不足として見られました。エトーもチームプレーに徹するなどしてペップの信頼を勝ち取り、結果このシーズンのダントツ得点王に。メッシ、エトー、アンリと前線の破壊力はすごかった。ただ、もっと凄かったのが中盤でした。
■奇跡的な1年目
シーズン開幕戦のヌマンシア戦。アウェーでの昇格チーム相手にまさかの0-1で黒星スタート。続くホームのラシン・サンタンデール戦でもドローに終わるなど滑り出しは最悪。早くもスタンドからは白いハンカチ(白旗を意味する)が目立つなど、ペップバルサは初めからはよくなかったです。
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ですが、よくなかったのはここまで。ここから快進撃。ぶっちゃけ言うと、ペップ1年目はライカールトバルサとそんなに違いはなかった。クライフの残したDNAがライカールト通じても残っていたということでしょう。右はメッシがカットイン、アウベスオーバーラップ。左もアンリが裏抜けて背後からアビダルが、と。ただ、ライカールト体制との決定的な違いが中盤です。チャビ、イニエスタ、そしてアンカーに収まったヤヤ・トゥーレのバランスが前年を上回った。ヤヤはまだ2年目でしたけど、チャビとイニエスタはカンテラ上がりということで流石すぎた。そしてペップが温めていたあの策が火を噴きます。
メッシのCF。
エトーにアンリいてメッシを最前線で使う意図がそんなになかったのですが、いわばゼロトップです。ドリームチームでもやってました。その時はラウドルップでしたが今回は同じトップ下を本職とするメッシ。メッシは元々はトップ下を本業としたパサーです。ただ、決定力は本職顔負けの能力があった。ゼロトップに打って付け過ぎた。
幸いエトーもウイングをやってくれたので奇跡的にフィット。それを始めてやったのが09年終盤のベルナベウでのクラシコですね。バルサがトップを走っていたとはいえ、背後からレアルが猛烈に追い上げてくるなかでのまさに天下分け目の1戦。ベルナベウで6-2の圧勝で締め、リーガ優勝をモノに。コパ・デル・レイも獲り、残すはCL。スタンフォードブリッジでのラストプレーでイニエスタが決めたミドルでファイナルが行われるローマ行きのチケットゲット。最後は連覇目指すユナイテッド相手に2-0で勝ち、史上初の3冠達成。チーム作りなど振り返れば、この年はラッキーが多かったなと。スタンフォードブリッジ然り、ベルナベウであんなにレアルがあたふたするとも思わなかったし、下馬評では最終ラインが1人もそろってないバルサより断然ユナイテッド有利だったし。
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■本格始動 メッシのゼロトップ
2年目はエトーとの実質トレードでイブラヒモヴィッチが来ます。
前線に足りていなかった高さというオプションですね。アンリもエトーも空中戦強くはなかったし、ライカールトの時はゴールキックでマルケスを最前線に上げてポストプレーさせていたし。
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この年にブレイクしたのがカンテラ上がりの選手です。まずはピケ。終盤戦にレギュラーを掴み、CL決勝でもスタメン。マルケスにガブリエルミリートが負傷していたの契機にスタメンを不動のものにしました。それと同じでいうとブスケツも。スタメンを本格的に確保したのは2年目の09/10。アンカーとしてかつてのペップの役割をこなす4番としては理想です。そしてペドロ・ロドリゲス。このシーズン終了後に行われる南アフリカW杯にサプライズ選出されることになるウインガーは、アンリの負傷離脱によってウイングを完全に自分のポジションにしました。
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え~と、一応小見出しで「本格始動 メッシのゼロトップ」とか書きましたけど、これをやりだしたのは終盤戦です。それまでは伏線みたいな感じで、4231のメッシトップ下を基本フォメにしてました。イブラがいたからですね。
と・こ・ろ・が!!
ウイングやらないイブラがCFにいる以上、メッシがやれるわけがありません。でもペップがそれを強行した。だから
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こうなってしまった。「i am Zlatan」という著書でもバリバリ書いてますけど、マジで仲悪いなこの2人。イブラに「メッシをCFで使うからウイングやってくれ」と怖気づくことなく言ったペップに対して「F〇CK YOU!!」って言っちゃったんだもんなぁ~。イブラからしたら自分よりもメッシを重要視してる→つまりこのチームの王は俺ではなくメッシ!!→ペップ F〇CK!!となったわけです。イブラこの1年で去りましたが、高額な移籍金が掛かるのでローンしか手が出せず。そんでお互い別々の道に行くことで一致しているので、レンタルで行くならどこがいい?と聞くと、マジな顔して「レアルだこの野郎!!」と言っちゃうわけです。CR7にカカ、ベンゼマ獲って「シン・銀河系」を作り出そうとしているレアルに、流石に出せないでしょうね。結局ミランに行ったと。
ゼロトップはまだ試作段階です。終盤になって、ボージャンの戦力化にめどが立つとようやく本腰入れるようになったかなと。このシーズン、CLは獲れなかったけど2冠は達成。だけどそのCL。セミファイナルで衝撃を与えたインテルの指揮官がレアルにやってきます。戦争の幕開けです。
■伝説の幕開け
南アフリカW杯でスペインが優勝。まさしくバルサのフットボールが天下を取った時代です。
そのバルサに対して真っ向から盾を突こうとしたクラブがあります。ご存じレアルマドリード。ジョゼ・モウリーニョが切り札として登板です。
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皆さんの知るバルサのサッカーはこの年からのバルサです。それまでは試行錯誤。本格的なペップ色に染まり始めるのはこれから。
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補強はW杯得点王としてスペイン優勝に大貢献したダビド・ビジャ。このビジャを従来のCFではなく左ウイングへ。メッシのゼロトップがモノになります。
この仕組みはドリームチームと同じ。今のシティみたいに全てのポジションがシステマチックになっているわけではないです。メッシがいたことで複雑化する必要がなかった。だから強かったんでしょうね。
衝撃的な試合、それはこのシーズン初めてのクラシコです。開幕から飛ばしに飛ばしまくってるモウリーニョのレアル。2節で昇格組のエルクレスに土つけられた以外は全勝の2位バルサ。最強のバルサ相手に、唯一真っ向から打ち破れたモウリーニョ率いるレアルがどんな試合を見せてくれるか。このクラシコほど世界中が目をくぎ付けにしたゲームもないでしょう。
スタメンです。
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立ち上がりからバルサが押します。開始2分でいきなりメッシがクロスバー直撃のシュートを放つと、8分にチャビが裏に抜け出してあっさりバルサが先制。
レアルの陣形はカオスでした。バルサは右SBのアウベスがずっと高い位置に張り出してほぼウイング状態。これに引っ張られてディ・マリアが左SB 化します。この試合、右スタートだったディ・マリアですが、アウベス対策ですぐにロナウドとポジションを入れ替えてます。
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こんな感じ。
バルサ後方は、ロナウド&ベンゼマに対してアビダル&プジョル&ピケで数的優位作って対応。中盤はメッシが下りてきて、こちらも数的優位。前線はビジャとアウベスが幅とってペドロが実質偽9番役。ほぼフリーマン。回したい放題でした。
ドリームチームと同じ原理原則ですが、偽9番として中盤に下がることでマッチアップするCBはどうすればいいのか問題が発生。留まっていたら中盤でパス回される。付いていくと裏にスペース空ける。実際にチャビの先制点は引いていったペドロに釣られたペペの裏のカバーに入ったリカルド・カルバーリョの裏をチャビが突いたわけです。
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もう後はバルサのオンステージ。中盤でパス回しまくって、相手が出てきたらビジャが裏抜ける。この形で後半にビジャが2発。最終的に5-0の圧勝。まさかの結果。
この流れは最後まで続きます。4月にリーガ、コパ決勝、CL2連戦の合計4試合のクラシコが2週間に行われる「クワトロ・クラシコ」でも、コパはレアルに譲ったものの、CLでは圧倒。ウェンブリーでの2年ぶりユナイテッド戦では、2年前とは雲泥の差ほどの完成度をファーガソンに見せつけて優勝。この10/11シーズンのバルサは、サッカー史上最強のチームともいえるほどでした。
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■最後の進化 復活の343
ドリームチームの343は433の派生型でした。当時は442が多かったので4番が浮く、そこをガリヒョロのペップでも出来たのですが、その後はジダンやカカといったフィジカルあるトップ下が出てきたことで4番にもフィジカル対応が求められました。ブスケツは高さもフィジカルもあるので、本当に理想すぎる4番ですね。
そのブスケツがいることで、最後の進化としてペップが用意したのは、ドリームチームと同じ343でした。
このシーズンの補強の目玉は、念願だったセスクの帰還。アーセナルで若くしてレギュラーそしてキャプテンまでも務めた男は相思相愛でバルサ復帰を果たします。このセスク獲得こそ、ペップの隠し玉でもある343の現代風アレンジのピースとなったのです。
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トップ下にセスクが入る343ペップバージョンは、セスクとメッシがダブル偽9番みたいな感じでお互いがポジションを入れ替え攪乱。
そこそこ上手くはいきましたが、モウリーニョとの抗争での疲弊、バルサの監督としての疲弊、など自らの髪の毛を犠牲にするほどのエネルギーを割いて最強チームを作り上げました。
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■伝説の終わり
2012年をもって終了したペップバルサ。サッカー史上、もっとも偉大なチームとしてありとあらゆるタイトルを獲得してきました。クライフの信条でもある「美しさ」に勝負強さを兼ね備え、現在のシティとは違いタイトルの数、CLを2度制したこの事実はとても大きなことです。現代のポジショナルプレーの起源。ドリームチームからペップバルサまでを振り返りました。バルサ編は以上終わり。さようなら!!
次回予告
ちょっとここらへんで個人技紹介でもしましょうか。
Thanks for watching!!