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逆襲のドイツと皇帝クロース/蘇るゲルマン魂
「強いものが勝つのではない。勝ったものが強いのだ」
ここ6年ほど低迷の続くドイツ。
ちょっとテクニカルな路線に走ってみて世界を獲ったものの、あまりドイツとの相性は良くなかったというか、それができるのはバイエルンの選手だけで大半のドイツの選手はそれを表現するのには難しかったという哀しき結末。
バイエルンのサッカーって、ラングニックやクロップに代表されるようなストーミング流儀とは正反対なポジショナルプレー志向であって、最近はそうでもないかもしれないですけど、ドイツ全盛期がちょうどペップ・バイエルンでしたからね。
今のユリアン・ナーゲルスマンは、ストーミング流儀のトップであるトーマス・トゥヘルから後継に認められた人物ですが、わりとやってることはポジショナルっぽいというか、ドイツ人に合ったポジショナルプレーですね。
フリックでも立て直せなかった中で、ナーゲルスマンもバイエルンを解任されたばっかで就任してEUROまで時間ない中難しいやり繰りをして迎えた本大会ですが、果たしてその出来栄えは如何に。
Germany for EMPEROR
■ギュンドアンの苦悩
ドイツにとって最も心がえぐられたゲームこそ、昨年10月シリーズの日本戦ですよね。当時はフリックでしたけど、この日の日本が取ったドイツ対策こそ”ギュンドアン徹底潰し”でした。
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ギュンドアンに対して遠藤航がガッツリプレス。これによってドイツは前進できない。
ハヴァ―ツを最前線に置いているため、ドイツは実質ゼロトップ。ヴィルツも本来はトップ下なので、ここが横並びする形になるんですね。そこでギュンドアンにボールが入ることで日本は
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ドイツのゼロトップを利用して一気にラインを押し上げる。ギュンドアンへの圧を強める。
ギュンドアンがボールを戻して組み立て直そうとしても、
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ドイツ前線が、日本のコンパクトな陣形にスペース無く窒息。どっちが本家ストーミングや!って話ですけど、当時のドイツの悩みが、ギュンドアンに入らないと前線に運べないというビルドアップギュンドアン頼みなところ。ここさえ潰せばドイツの起点はすべて破壊されるので、ショートカウンターの獲物としてギュンドアンは狙われるということです。
ナーゲルスマンに変わっても、ビルドアップにおけるレーンの配置は決まっていても、人材的にギュンドアン頼みになりがちなので重要解決材として本大会までの課題として残りました。
■助けて!クロース!
そんなドイツに、ナーゲルスマンが助けを求めたのがクロース。
ビルドアップから前線へつなぐリンクマンと、ポゼッションに関わる役目を全て引き受けているギュンドアン解放運動の発端としてクロースカムバックを企てていたナーゲルスマン。代理人が同じだったをいいことに口説いたみたいですけど、実際問題としてクロースがボランチに収まるだけでドイツのあらゆる問題が一斉解決できそうだったのも事実。
ギュンドアンの負担ってバルサでも同じで、特にフレンキーが離脱して以降はペドリもケガで離脱中だったこともあり、アンカーでビルドアップ孤軍奮闘していてなかなかの重労働だなと思ってましたが、そのバルサを上回る重労働をドイツ代表でやっていたので、クロースが入るだけでどれだけ負担が軽減できることやら。
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ナーゲルスマンのビルドアップの特徴はバイエルン時代、ホッフェンハイム時代から続く中央オーバーロード。ペナ幅でさらに5レーンを形成して、大外はSBのみ配置。迂回ルートとして用意しておく。
クロースはレアルと同じで最終ラインに加わってボールを配給。ここに対してプレスを掛けずらいんですけど、その理由こそビルドアップから解放されたギュンドアンが出口として前線に配置されているんですよね。クロースにプレス行っちゃうと背後のギュンドアンが暴れる。役割を分担したことでドイツのポゼッションはだいぶ楽になりました。クロースとギュンドアンは相互関係にあったのですね。2人はプリキュアです。
■ナーゲルスマンの設計図
ではここでナーゲルスマンの設計図を見ていきましょう。
極端な中央オーバーロードでかなり密集してるんですが、この密集でもキッチリエリアを作っています。その選手起用も特徴的で、ウイングにはカットインできるようシャドー系アタッカーを使う傾向が強いですね。
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中央にムシアラとヴィルツが入り込んで、ギュンドアンとハヴァ―ツでポイントを作る。
これだけ相手が中央密集されたら、相手DFも中央に絞らざるを得ない。そうすると大外で1枚余るSBに入れられる。
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ギュンドアンをこういうところで使いたいんですよね。ビルドアップに関わらせるのもいいんですけど、密集地帯の間でキープできるのがギュンドアンは鬼なので、そしてそこへ針の穴を通すかのようにパスを出せる精密機械も控えている。
ここのギュンドアンに入れるってのがポイントなんですけど、何の工夫もなくだと、ただただゴール前に密集を生み出してしまうだけ。オーバーロードする上で相手を広げたい。そのためにはクロースに対してプレスを仕掛けさせるんですけど、そのために出てくるのがココ。
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ボランチに残っているアンドリッヒに喰いつかせる。縦長に伸ばしたところでアンドリッヒと見せかけておいてのギュンドアン。これが効く。開幕戦のムシアラのゴールはこの形でしたね。
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クロースとギュンドアンの立ち位置はこれです。相手もそうなんですけど中央オーバーロードですよね。
これ、相手選手の体の向きを見てほしいんですけど、
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前後で分断されてるし、それぞれ前から行きたい後退したいで分かれている。これによりポッカーンとスペースができちゃった!
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ギュンドアンがバックステップで下がりながらクロースからパスを受ける。ドイツの狙いはコレ!!
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軽々前向くギュンドアン。あとは最終ラインを突破するだけ。
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ラインブレイクするハヴァ―ツへ。ミッションコンプリート。
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クロースがいることでギュンドアンが活きる。その最たる例でした。
■皇帝はかく語りき
かつてのフランツ・ベッケンバウアー。ミヒャエル・バラック。窮地のドイツを救う、その強者の姿は皇帝そのもの。
前評判の低いホスト国を救うのは皇帝の存在。キャリアのラストダンスとして代表に戻ってきたクロースの存在こそドイツの求めていたカイザー。存在だけでチームの巡りを好転させる男の活躍なくしてドイツの復権はならず。
母国と共に有終の美を飾れるか。
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ダークホース?ランゲラックのオーストリア
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