デンベレ移籍で招じたバルサの新たな問題点と解決方法/シティの陥ったジレンマに対するペップの解答
さらば、愛しき恋人よ
夏の移籍マーケット終盤にして、バルサ一番のポイントゲッターが堂々とパリへ旅立ちました。
ワシぁどれだけお前のことを信じ続けたことか!!
と、日本一のデンベレウォッチャーを自認しているつもりの僕の意見はさておき、デンベレが移籍した後のバルサの右ウイングはハフィーニャが想定通りに収まりました。
ただ、昨年からでもあったんですけどデンベレとはタイプの異なるハフィーニャは、デンベレのように質で違いを見せてくれるところと、右SBがクンデ(開幕はアラウホ)とCBを使ってる以上、アイソレーションな状況を打開してもらわなければならないのですが、ハフィーニャには難しかった。カンセロが加入したので右でコンビ組めたら良くなる可能性はありますが、開幕戦で退場したことによるチャビからの信頼度ガク落ちと、代わりとなった新たな新生登場によってデンベレ後の右ウイングは収まりを見せています。
ラミン・ヤマル。
まだ16歳の超新生がバルサでレギュラーを掴むとは!
ヤマルの登場によって、懸念ポイントとなった右ウイングは埋まりました。今季のバルサは昨シーズンとは攻め方が異なるので、3トップの役割破壊の重要性は高まっています。では、今季のバルサの新戦術と共に見ていきます。
進化の軌跡
■数的同数で優位を作るには?
今季のバルサの攻め方ですが、ポゼッション時には5トップ化して5レーンに対面構築する布陣になっています。
2節のカディス戦ですけど、陣形はこんな感じです。5トップを形成して対面構築図を作る。
ここでも紹介しましたが、5バックを形成されると簡単に数的優位は作れません。フィールドプレーヤー10人のうち半分を5レーンにそれぞれ配置した上で数的優位を作ると人為的に後方がスカスカになってしまう。なので前線は5人が最高人数なのです。
対面構築した5トップ化の布陣の先走りはシティですが、21/22シーズンからですね。フォーデンのゼロトップです。ただフォーデンのゼロトップで対面構築すると、ゼロトップというシステムが数的優位を生み出すためのシステムなので、対面構築化で数的同数にしかならない中でオフェンスに全振りしなくてはならない=攻守のバランスは度外視しないといけないわけです。
それがハーランド獲得による攻守のバランスを均等に出来たわけでもあるんですが、以前も紹介した通り対面構築化した上での数的優位策は一応ありますけど、ある条件を満たさなければ自殺行為になりかねないのです。さて、その条件とは?
■ペップの解答=質的優位からの逆算
まぁ、言ってしまえば簡単なんですが、シティはハーランドという圧倒的な質を手にしたことによる質的優位で数的同数における優位性を生み出しました。5対5で優位を作るのなら、たった1人でも質で違いを見せつけらえれば、5対5と言えども実質「1対1×5」なので相手守備組織は崩壊しますよね、カオスですよねに繋がるわけです。
ここでもう1枚が出てきます。+1となる存在です。
シティにおいてはストーンズです。カオスと化した相手守備陣にメスを入れるかのような存在。
質に対する対抗策は数です。つまりシティはハーランドがいることで相手組織そのものを押し込むことができる。最終ラインだけで何人もの人数を配置せざるを得ないのでそれに対しての対抗策としてシティも人数を掛けなくてはならないです。ここまでカオスに出来て6人目を投入できます。6人目は確実に仕留められなければなりません。それを確信出来なくてはなりません。
■デンベレ後の対面構築策の問題点
話をバルサに戻します。
バルサの5トップ化のフォーメーションです。
左SBのバルデを5トップに組み込んで左ウイングを左ハーフスペースへ。シティで同様のことをやっていたギュンドアンをラインブレイクさせます。
ベティス戦ではカンセロを最終ラインのままにしてビルドアップをやらせていましたが、基本はこのフォーメーションです。
また、シティにおけるストーンズはフレンキーです。「仕留めてヤルゼよ!」なときはフレンキーが出てきます。
問題は5トップで質の違いを見せられるのは誰か。これがいない。ヤマルはちょっと違う。バルデは突破力にスピードはあるけどSBの選手。レヴァンドフスキは35歳で衰えが酷くなってきた。5レーンを埋めてくる相手を崩せなくなってきているのが現状のバルサです。
「いやいや、点は獲れているではないか」
それはごもっともです。バルサの場合、数的同数化で優位性を作れないので、強引にでも数的優位を作ってくる。つまり、相手DF陣がカオスになる前にフレンキーやクンデといった+1を投入するのでカウンターを真正面から受け止めなければならない。それはビジャレアル戦やフレンキーの偽CBをやったカディス戦で顕著に見られました。これは昨年のバルサにはなかった光景です。昨シーズンは基本3トップで役割破壊していました。偽ウイング化したガビが中盤入ってのトランジションの補強に回ったのとは大きく異なりますね。
この3トップで役割破壊できた理由は、それこそ対面構築する理由と同じで質的優位を生み出せたからです。それがデンベレです。
デンベレの役割破壊が右サイドに相手を寄せ集めることに繋がり、それが左の可変システムを活かせた。バルデ1人では違いは作れません。ガビやペドリはそもそもそんなタイプでもない。
今のレヴァンドフスキには質で違いを生み出せる力はありません。昨シーズンですらデンベレしか違いは見せられなかったのが、そのデンベレが去ってしまった。あれだけバルサに忠誠心のなくともチャビが引き留めに走ったのは、それだけの価値がデンベレにはあったからなのです。そしてそれは、デンベレ不在だったELプレーオフ・ユナイテッド戦で皮肉にも証明されてしまったのです。
■フレンキーに与えられたタスク
そんなこと言ってもデンベレはもう去って行ったので、ココからはどうしましょうか?を考えるしかありません。
そこで最初に戻りますが、ヤマルがハマった。そして右SBにカンセロが来たことによるハフィーニャへの相乗効果。変化を加えるなら新戦力です。
カンセロに求めるは、これまで右SBをやって来たクンデやアラウホとは違い攻撃で違いを作るところ。ハフィーニャがアイソレーション化でも打開を図るのは難しいのであるならば、カンセロでなんとかするしかない。カンセロ後の世界では少しずつ打開策が見えてきています。ここは何とかなりそう。あとはフェランの右ウイングでもカンセロいればストライカーに専念できることもあります。
次が左ウイング。というか左ハーフスペースを支配できる偽ウイングですが、トランジションの強度を補うという名目でガビが昨シーズンやってました。ただそれはデンベレで質的優位を作れるが前提条件です。そのデンベレがいなくなったことによる配置変換としてジョアン・フェリックス。
今は対面構築化なのでトランジションよりも目の前の1対1で優位性を作り出すことが先決です。ここはガビよりは期待はできるし、実際にフェリックスは違いを作っているのでココはまた今度。
じゃあ結論として、今のバルサが質で違いを生み出すには問題について、
そんなのありません!!
そもそもハーランド並みの化け物が世界にゾロゾロといるわけないですし、そんな選手を今の金欠バルサが買えるわけない。フェリックスはその可能性があるタイプだと思いますけどね。ただ5レーン対面構築は上のレベルへ行くためには避けては通れない道なので(実際に2季連続CLグループリーグ敗退の打開策として必要)、チャレンジする価値はあります。だけどハーランドやデンベレクラスの役割破壊が期待できる戦術兵器がいなくては成り立たないのですが、そこがCLにおけるバルサの懸念点ですね。これ以上前線に人数を掛けるわけにはいきませんし。
バルサがシティと同じになれた仕組みとしては「+1」の部分。ストーンズとフレンキーです。
ストーンズが5トップ+1として加わるのは最終奥義としてなんですが、フレンキーの場合はディフェンスラインを崩すための一環に過ぎないです。
リーガ第3節のビジャレアル戦から、フレンキーのゴールシーン。
フレンキーがボール保持。前線は5トップ化しています。
ハーフスペース担当のガビとギュンドアンが下りてくる。これ、結構肝な動きです。シティは張り付いていたとしてもハーランドという核弾頭がいるのでなんだかんだほっとくだけでもスペースができます。ですがバルサはそうはいかないので時間掛かっても人数掛けてでもスペースを1個1個使うしかない。
ここでギュンドアンが赤丸の位置に下りてパスを受けます。
ギュンドアンが受ける。と同時にレヴァンドフスキが動く。
5トップが角度をつけることでスペースを作り、そこに新たに生まれるスペースを順に突いていく。このシーンであればギュンドアンのいた位置にレヴァンドフスキが。するとどうなる?
今季のフレンキーに求められているのはこのプレーです。1対1×5の対面構築図ではなく、1対1の構図のまま相手陣形をずらしつつスペースを生み出す。そこに+1のフレンキーが上手く使い捌く。バルサ流の5レーン対面構築です。数的同数の状況で質で違いを生み出せないのならば位置的に優位を作る。ポジショナルプレーですね。開幕直後のバルサの現在地です。
次回予告
来月にはクラシコなので、1ヵ月はバルサの記事連投します。「ジョアン・フェリックス取扱説明書」「フェランの変化」「新生バルサの守備」のどれか
Thanks for watching!!
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