【映画感想】『ウーマン・トーキング 私たちの選択』 ★★★☆☆ 3.5点
とあるメノナイトの集落で、一人のレイプ犯の逮捕から、家畜用の麻酔薬を用いたレイプ事件が集落ぐるみで行われていたことが発覚する。逮捕された犯人の保釈を求めて集落の男性が出払っている2日間の間に、残された女性たちは自分たちのこれからの去就と男たちへの対応を協議することとなる。
女性たちの代表はそれぞれ異なる意見を持っているが、大きくは「集落の男性たちと戦う」か「女性だけで集落を出ていくか」の二派に分かれており、そのどちらを選ぶかで激しい舌戦が繰り広げられる。本作はこの女性たちの会議が作品のほぼ全てを占めているのだが、興味深いのはこの会議がさほど理詰めでは進んでいかず、話し合い自体はかなり終盤になるまで平行線をたどり続ける点である。
最終的には上記の2つの案のうちの一方が満場一致で選ばれるわけだが、この結論にいかにたどり着くかというと、女性たちの共感と経験の共有によってなされるのである。本作では、男たちと戦う案と集落を出ていく案のそれぞれのメリットとデメリットを巡って女性たちの激しい議論が繰り広げられる一方で、話し合いは参加している女性たちの経験談や子どもたちへの思いなどが語られることによって頻繁に脱線する。
しかし、この脱線こそが女性たちの意見を一つにまとめあげ、結束させていく。皆レイプ被害者であり、その多くが幼い子どもの母親たちである彼女たちを結束させるのは小難しいイデオロギーの対立ではなく、自身の経験したような被害を次世代の子供達には味わわせてはならないという強い決意なのである。