【映画感想】『リトル・マーメイド』 ★★☆☆☆ 2.8点
1991年公開のアニメ映画『リトル・マーメイド』の実写化作品。正直なところ、公開前までは主演のハリー・ベイリーにいまいちヒロインとしての華を感じていなかったのだが、実際に映像で歌い踊る彼女を見ると印象が一変。抜群の歌唱力と豊かな感情表現で、お転婆で行動力に溢れた主人公のアリエルを実に豊かに演じきっている。
実写化ということもあり、原作では相当にデフォルメされて可愛らしくデザインされていた海洋生物たちも本作ではほぼそのままのリアルな姿に。アニメ版では可愛らしかったカニのセバスチャンや魚のフランダーが、あまりにもそのまんまのカニや熱帯魚の姿で現れて、そのまま人語を話すので最初はかなり衝撃的だったのだが、話が進むにつれてヌメッとしたカニや魚なのに段々と可愛く見えてくるのは、さすがディズニーといったところだろう。特にカニのセバスチャンはアニメっぽいデフォルメされた動きとリアルなカニの動きの混ぜ具合が絶妙で、ディズニー映画のマスコットらしいアニメチックな面白さを一身に背負う活躍を見せている。
一方で実写作品がゆえに、デフォルメの強いアニメ作品の際には気にならなかった「この人魚たち普段何食べてんだろう……」、「エリック王子の王国って、どういう政治体制なんだろう……」というクリティカルな疑問が沸いてきてしまうところが若干難点。
また、アリエルたちを始めとする人魚たちのデザインは煮詰め方がもう一歩足りておらず、コスプレ感が強すぎる場面がチラホラと散見される。ラストのアリエルの父・トリトン王とのシーンはストーリー的には感動的なシーンなのだが、コスプレ感の強い出で立ちのトリトン王が海面にぬぼーっと現れると、感動よりもシュールな笑いが勝ってしまって少し残念であった。
また、演者の肉体表現に重きが置かれる実写作品と、中盤からのアリエルが喋ることができなくなる展開の相性が悪いとも感じた。海の中では非常に魅力的だったハリー・ベイリー演じるアリエルの魅力が、陸に上がると半減してしまいもったいない。全体の構成からすると、序盤の海でのストーリーが長くてダレているのだが、ここを短くしてしまうといよいよアリエルの見せ場が減ってしまうので、ここは意図的なのだろうなと感じる。