【映画感想】『仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦』 ★★☆☆☆ 2.5点

 現在放送中の特撮テレビドラマ『仮面ライダーガッチャード』と今年8月に最終回を迎えた前作『仮面ライダーギーツ』のクロスオーバー作品。錬金術によって作られた101体の人工生命体ケミーが解き放たれてしまった世界。錬金術師である一ノ瀬宝太郎/仮面ライダーガッチャードたちは、全てのケミーたちを回収するため戦いの日々を送っていた。戦いの中で浮世英寿/仮面ライダーギーツたちと出会った宝太郎たちは、レベル10と呼ばれる強力なケミーの一体であるクロスウィザードと邂逅する。クロスウィザードの力により、ケミーに変えられてしまった英寿の仲間の仮面ライダーたちを救うため、宝太郎と英寿はクロスウィザードの仕掛ける最強のケミー捕獲ゲームに挑むこととなる。



 本作は現在放送中の「ガッチャード」と前作の「ギーツ」のクロスオーバー作品だが、物語の世界観やストーリーは「ガッチャード」がベースとなっているため、2作品が混ざり合うというより、「ガッチャード」の世界に「ギーツ」のキャラクターがゲスト出演しているという方が感覚的には近い。

 作品の構成としては、4チームに分かれたガッチャード・ギーツ混合チームがレベル10のケミーたちの捕獲を試みる前半パート、クロスウィザードの真意が判明する中盤パート、真の黒幕との戦いが描かれる後半パートのおおまかに3部構成となっている。全体の印象としては物語として破綻はしていないものの、各パートの接続があまりうまくいっていないといったところ。

 例えば、中盤のクロスウィザードの真意が明かされるパートについては、前半パートでこのキャラクターの内面の手がかりとなるような描写がないため、中盤での心情描写が唐突に感じる。また、終盤の黒幕の動機についても作中での説明の提示のされ方が後出しに次ぐ後出しであるため、観る側の感情が乗りにくくなってしまっている。こういった齟齬のため、どうにも一本の作品としてのまとまりを欠く作品となってしまっているように感じる。



 一方で、ガッチャードの世界観にギーツの設定を細かに織り込む技量については評価したい。黒幕であるギーツキラーの正体であるとか、本作オリジナルのキャラクターであるギーツケミーに隠された秘密であるといった本作の謎解き要素については、ギーツの世界観をよくよく吟味したうえで、ギーツ本編と齟齬がないように設計されている。むしろ、ギーツ本編では描かれていなかった空白を埋めるようなものとなっており、ギーツのキャラクター、特に主人公・浮世英寿のキャラクター性についての補完となっている。

 また、こういった要素を盛り込み、クロスオーバーとして多くのキャラクターを活躍させつつ、ガッチャードの基本フォーマットである「ドタバタ活劇+ほっこりラスト」に本作もきっちり落とし込めているところも良い。こういったように細かな部分についてはよく整備されているものの、作品の大きな骨子の建付けがいまいちなため、総評としては惜しい作品であるように感じる。

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