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空想物語・『大雨の夜のこと』第2章

夜の散歩

また動き出そうと差し出した前足を引っ込めて、カエルは立ち止まってわたしの方を振り返りこう答えました。

『夜の散文をしているのですよ。』

カエルはとても穏やかな口調で、しかも温かみのある優しい声をしていましたので、
わたしは少しホッとして嬉しい気分になりました。

わたしの方をじっと見つめるその大きな眼は
ビードロ⑴のように煌めいていて、彼の聡明さを映し出しているかのようにとても綺麗な眼なのです。

わたしはその目にじっと見つめられ、
なんだか恥ずかしくなりました。
何を話したら良いのか思いあぐねながら、
しゃがみ込んでカエルが雨にあたらないように傘の下に入れてあげました。
雨はいっこうに止む気配を見せずザンザン、ザンザンと降り頻る(しきる)のでした。

するとカエルがまた話し出しました。

『優しいお嬢さんありがとう。
傘はいりませんよ。
むしろ体を雨に濡らしたいくらいです。』 

少し間を空けてカエルはまた続けました。

『わたしは、隣に住むアマガエルのジェレミー⑵と申します。
ジェレミーと申しましても、雨合羽も着てませんし、貪欲でもありません。

ふだんは庭の持ち主のお爺さんの作った小さな池で暮らしておりますが、
こうして雨がたくさん降りますと池の水面があがりましてね、外に出ることができるのです。
雨の夜はとても良いです。
みんなが集まっていろいろな事を話しますので
とても勉強になりますよ。』

カエルは何かを思い出しているように目を細めて楽しそうな表情を浮かべました。

お話しは第3章に続きます。



⑴ビードロ(ネット調べ)
ビードロは、ガラスを意味するポルトガル語(ポルトガル語: vidro)ガラスの古い呼び名

⑵ジェレミーという名前はピーターラビットに出てくる"ジェレミー・フィッシャーどん”からつけました。わたしのお話しのジェレミーはアマガエルで、とっても優しい紳士です。


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