厳選なる抽選の結果、見事ご当選されましたので…
『厳選なる抽選の結果、見事ご当選されましたので…
マイ・ホスピタル編集部一同』
5月のはじめだったか、高齢の母の胃の検査への付き添いをした。
私は、暇をつぶすのが得意である。
検査室の前で私は暇をつぶす。
病院に置いてあるフリーペーパーを手に取り、
特集記事を読んだり
クロスワードパズルなどして。
最後のページにプレゼントコーナーがあったので、
冊子への感想など熱く記入し、応募してみた。
かの有名な『雪女』や『耳なし芳一』などの
怪奇小説をかいた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が、
好んで食べていたという赤い色をした羊羹がこの号のプレゼントであったのだ!
羊羹はさほど好きではないが、
可愛らしい赤い色の羊羹には惹かれるものがあった。
昔はハガキだったであろう応募要項も今じゃ、
スマホ一丁で即(そく)完了である。
『当選は発送をもって代えさせていただきます。』
この文句で当選した事は、何度あっただろうか?
ほとんど落選していたと思う。
いや、そもそも応募した事があったであろうか?
そうしているうちに、『ハーンの羊羹』のことは
すっかり忘れていったのだった。
そしてきょう、ハーンの愛した羊羹が届き
元気になった母ともうすぐ90歳を迎える父と
皆で食べる喜び。
プレゼントに当選した小さな喜び。
こう言うのが、ちょっとした幸せなのだと思った。
そのちょっとした幸せを今、
噛みしめるのだった、
ハーンの羊羹と共に。