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第十三首-いつもより遠心力の強い日にかるくゆるめたままの涙腺

十三首目。いったいいつ頃からそうなったのか定かではないですが、まるで冷たいものを食べ過ぎたお腹のようにゆるゆるになってしまったわたしの涙腺もかつてはきゅっと強く締められていて、あれは本当に高校生でした。

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ぐるぐるぐるぐるぐるぐる。

公園のあの、ぐるぐるするやつをあたしは回していて、ぐるぐるするやつの中には誰もいなくて、だからあたしはひとりでそのぐるぐるを回していて、もう一分? いや三分くらい? とにかく回していて、たぶんたまにスカートの中とか見えちゃってるかもだけど気にしない。勝負パンツだけど気にしない。いや、気にはするけどそんなことよりぐるぐるが止まらなくて、公園の、じゃなくてあたしの、頭の、中の、ぐるぐる。

どうしてそんなことをしているのかって問われても答えはなくって、いや、答えはあるんだけど、それが正解とは限らなくって、限らないっつーか不正解で、不正解だけどそうですか、ってわけにはいかなくて、ファイナルアンサーだけどおしまいにはできなくて、そしたら頭の中がぐるぐるでぐるぐるでもそれに追いついたらぐるぐるはぐるぐるじゃなくなって、ただの真っすぐなしゃきーんになるって、そう思ってだからあたしは今このぐるぐるをそろそろ五分? 回してる吐き気と戦いながら。

駒みたいに回って、でも、駒だって回りつづけることはできないなんてこと小学生だって知ってる。でもなんでみんな知ってるんだろう。学校ではそんなことは教えてくれなかったのに。

駒じゃないあたしは転がるようにして地面に仰向け、耳元でぐるぐるが風を裂く音を聞きながら自分に問いかける。

ファイナルアンサー?

上空、はるか遠くの夜空に小さな花火があがって、それが散っていくのをあたしはじっと見つめる。見つめて、それから小さく目を閉じる。

まぶたの裏側で、遠くの誰かのことを想った。

いつもより遠心力の強い日にかるくゆるめたままの涙腺(笹井宏之)

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