人災派遣RPGリプレイ最終話『仇星、闇を駆ける時』05
●05
●続・秀史のターン
GM:皆様揃われましたので、最終話第三回開始したいと思います~!!
一同:いぇいいぇーい!
GM:前回、テロリストに包囲された軌道エレベーターを救出すべく、C国の制圧部隊に紛れてメルジャヒ島に上陸した君たち。柳沢の支援で前線を突破し、塔にたどり着いたカヤカと紗綾だが、そこには復讐神アダシこと小菅さんご本人が待ち構えていたのであった!
カヤカ:もう少し引っ込んでいても良かったんだぞ!(笑)
GM:一方その頃。東京に残って前回の関係者を中心に聞き取り調査を進めていたシタナガくんは、パロカと小菅女史についての情報を手に入れた。
まずは小菅女史について。結論。……彼女は、実在の人物だった。『小菅桂子』なる名前もある。
紗綾:なりすましか、適当な名前を名乗ってるかと思ってましたが。
カヤカ:まあ、イチから戸籍とか作るのは大変そうだもんな。
GM:戸籍や生年も含め、はっきりと人生の履歴が残っている普通の女性のようだ。
カヤカ:そうなると当然、なんで普通の人がアダシに?って疑問になるよな。
GM:成績もなかなか優秀。ボランティア精神に篤いようで、高校時代から青年海外協力隊的なものに積極的に参加していたようだね。
秀史:ほう、事実なら立派な志だ。
チシャ猫:復讐の片棒を担ぐとか、ボランティアし過ぎでは?
GM:そして。くだんの大洪水の際に、彼女もメルジャヒ島に通訳ボランティアとして滞在していたことが判明する。
チシャ猫:ですよねー。
秀史:となると、約10年前か。
GM:大洪水で集落が壊滅的に流されたとき、大混乱の中、島南西の高台に逃れて九死に一生を得たらしい。
柳沢:ふぅむ。高台の洞窟といえば、メルジャヒの人たちの生き残りが避難して、だが結局助からなかったところ、だったね?
GM:そして、彼女は日本に帰国した。以前の小菅さんを知る友人に言わせると、「ボランティアには熱心だけど、あくまで普通の子だった。でも、メルジャヒ島から帰ってきた後一度だけ会ったが、まるで別人のようになっていた」とのことだ。
カヤカ:んん、これ、神降ろし……だよなあ。
秀史:神が10年も一人の人間を乗っ取ってきたということか。
チシャ猫:ウチにも10年以上一人の人生を壊してる刀がおるけど(笑)。
GM:……そして、帰国後の彼女の足取りを追うと、今まで各派遣会社の調査部門が調べても尻尾を掴ませなかった『リベンジ騎士団』の実態が、芋づる式に明らかになっていったのだった。
一同:なんと!
正体不明の悪意ある派遣会社『リベンジ騎士団』。
結論として、それはまったく実態のないペーパーカンパニーだった。
すべては彼女、小菅桂子がネット上で運営していたものに過ぎなかったのである。
もちろん組織を運営する専門のスタッフや、実際に復讐を代行する異能力者はいた。しかしそれらはいずれもその場限りの単発契約や、ネット上での業務請負であり、組織の全貌を知るものは誰もいなかったのだった。
秀史:会社の運営といえば、人事・営業・法務・庶務色々あるはずだが。
GM:そういった業務はすべて、人事や法務を専門に扱う会社にアウトソーシングしていた。アウトソーシングされた方も、どこかの中小企業の事務を請け負ったと思っていたり、あるいはこの業界を知るものも「俺は『リベンジ騎士団』の仕事をちょっと手伝ってやってるだけだぜ」と考えていた。構成するパーツがどれも『自分は本体ではない』と思っていたのだね。
紗綾:鵺のような組織じゃな。
チシャ猫:実態がないっていうか、やってることが零細の派遣会社そのものなんだにゃ。
GM:そう、ぶっちゃけるとモデルは、実在する『個人経営の派遣会社』です。腕利きの営業マンが独立して、電話とノートPCだけで人と人を繋ぐやつ。
柳沢:スポーツエージェントとか、出版エージェントとか、海外では結構聞くねえ。
チシャ猫:あのグレムリン達3人組、ラストでさらに小物感増やされて切ない……。
GM:そして小菅女史ことアダシは、恨みを溜め込んでいる人間にネットで接触。復讐を請負い、叶えることで、『神』としての格を少しずつ高めていったようだ。
柳沢:要するに、神としてのパワーを蓄えるための手段だったってことだね。
GM:そして、『リベンジ騎士団』は蓄えた全資産、財産をこの案件に突っ込んでいる。事実上、企業組織としては死んでいると考えてよいだろう。
紗綾:大きな願いを叶えるために、小さな願いをいくつも叶えてパワーアップ。パワーが溜まったので、全リソースを突っ込んで大きな願いを叶えにかかった、ということじゃろうな。
カヤカ:神ってか、やっぱ悪霊では?
紗綾:神の奴等は人なんぞ体の良い駒としか思っとらんからな。
チシャ猫:おじいちゃんが言うと説得力があるんだにゃーん。
柳沢:体の良い駒を使い倒しているからねえ(笑)。
紗綾:失敬な、ワシを神なんぞと一緒にするでないわ!
カヤカ:もっとひどい何かだもんな(笑)。
GM:続いて、項目その2。パロカについて。……君は前回の関係者でもあるボイザ氏と面会することができた。
秀史:おお、会えてよかった。C国あたりに消されててもおかしくなかったからな。
GM:罪状、というわけでもないが、重要参考人として警察に逗留されているといったところだ。君は伝手を通じて、面会を取り付ける。君が尋ねると、ボイザはパロカの素性について語ってくれる。
パロカはボイザの実の娘である。
十年前のあの日、ボイザ達は森……今、管制塔がある地に伐採に出かけていた。
赤ん坊だったパロカは、母親や他の女子供とともに集落にいたが、そこで乱開発と大雨が原因の洪水が発生。避難するために、南西の高台に逃がれた。
救難信号を送ったが、島を宇宙開発の拠点にしたかったC国と茉莉花グループに黙殺されたため、全滅してしまった。
秀史:ふんふん。ここまでは前回のセッションの情報だな。
紗綾:ひどい話ですぅ、本当に。
柳沢:正直、救難信号が届いたら助かった、というものでもない気がするがね……。
GM:だがその中で、パロカのみが、高台にある裂け目の、さらに奥にある祠に匿われ、助かったのだという。
秀史:祠、か。
カヤカ:ふむ、話の筋は通ってますねぇ……。
GM:「その洞窟には、仏なのか、何かの神様なのか、見たこともない木の像があった。洪水で砕けてしまったが……。その天井に、赤ん坊なら入れるくらいのスペースがあり、パロカはそこに匿われていた」
秀史:そうかー……。
チシャ猫:砕けた像……。
カヤカ:封印だわこれ。
GM:「おそらく、皆洞窟に逃げ延びたが、水位が上がってそこにも水が入り込み、天井のくぼみに避難させたパロカ以外は……」と、ボイザは当時の光景を思いだし、声をつまらせるのであった。
柳沢:……まぁ、経緯としては大体想定内ではある。
ともあれ、ボイザはパロカが助かったことを喜び、男手ひとつで育ててきた。
出稼ぎが決まった後は、そのまま日本に連れてきて共に暮らしていた。
時々やや神がかり的な発言をすることもあるが、あんな体験をしたのだから仕方がないと思っていた。
前回の事件まではごくごく普通の娘だった……。
GM:「……パロカはどこにいるのだろうか」
秀史:「むしろそれを貴方に聞きに来た。父親にすら心当たりが無いとなると、現時点ではお手上げだな」
カヤカ:どこにいるんだっけ!?
紗綾:結局、あの山で小菅さんと一緒にテレポートしてから行方不明ですぅ。
チシャ猫:ネットで拾えない情報に関してはチシャもお手上げなんだにゃーん。
秀史:メルジャヒ島の管制塔の中が最有力候補だろうな。
カヤカ:まあ、他に居そうな場所もないよなあ。
チシャ猫:宇宙ステーションの中にいたらどうしよう(笑)。
GM:「俺達が復讐を企てたことは、後悔しているとは言わない。いや、言えない」
秀史:「だろうな。それだけは口が裂けても言っちゃいけない」
GM:「だが。それはあくまで、俺達の世代の話だ。……あの子は、生き残ったあの子は、そんな怨念のことは忘れて生きて欲しい。……ひどい言い草だということはわかっているが」
秀史:「……虫が良すぎる話だとは分かってるな?」
GM:「……ああ。ダムの爆破で、あの子と同じような子どもたちを何人も生み出してしまうところだったんだ。何も言う資格はない……」
秀史:「死者が出なかったにせよ、茉莉花グループで働いていた多くの人の職を奪い、怨恨をまき散らした。C国は裏で貴方を消そうとするかもしれないし、パロカが報復のターゲットにされる可能性だってある」
GM:ボイザは観念したように目を閉じる。
秀史:「俺は小菅とやらが主犯だと気づいていた」
紗綾:前回も主張してましたね(笑)。
秀史:「計画犯の近くに女の子がいて、あとGMの性癖を考えれば何が起こるかは大体想像がつく」(一同爆笑)
カヤカ:メタいメタい!……久しぶりだなコレ!
GM:な、なんというするどいすいりだー!(笑)
秀史:すみません(笑)。
紗綾:幼女を出すことで定評のあるGM!
GM:そこは美少年を出すと暴走するプレイヤーが居るので幼女にしている、と強く主張しておきます(笑)。
秀史:「……そのうえで、パロカがさらわれると確信しながら敢えて見逃した。貴方が逮捕されたらパロカを守れる者はいなくなるからな。そして神に連なるもの、という大義名分があれば、CCCで保護をすることもできる」
GM:ボイザは様々な心情が巡っているのだろう、君に対してこれ以上話せることはないようだ。……実際にはC国への復讐も、諦めたと言えるわけではないのだから。
チシャ猫:普通の生活を続けていたら時間の中で薄れさせる、自分を納得させられることでも、目の前に手段が提示されると揺らいでしまうでしょうしね。
柳沢:……彼らの復讐の件は、やはり欠片も理があるとは思わんが。その感情すらアダシによって増幅されたものなら、何ともやるせないねえ。
カヤカ:小菅さんはメルジャヒの人じゃないけど、復讐とか恨みとかを抱いたんだろうか。どうして私がこんな目に、とか。小さな恨みを、アダシに付け込まれた……。
柳沢:そういう流れだと思うよ。C国や茉莉花グループが救援を握りつぶしていたにせよ、その確証は近年になってようやく明るみに出た話だし、明確な敵もいないのに憎悪を十年も維持するなんて難しいことだよ。
GM:「もしも。あの子にもう一度会うことができたなら……、きちんと謝りたい」
秀史:「……それくらいの猶予はあるだろう」
GM:……以上、調査項目の終了です。
●【済】小菅とパロカについて
・パロカはメルジャヒ南東部の高台の洞窟でただ一人生き残った。
・小菅女史もどうやらそこにいたらしい。
『メルジャヒ 高台の洞窟』に向かえ!
GM:そして、『メルジャヒの洞窟』が開示されます。
秀史&カヤカ:お、隠しマップ。
紗綾:ダンジョンですぅ。
GM:アダシに関しては、文献や伝承がそもそも存在せず、調査ではこれ以上の情報を得ることができない。もしもこれ以上知りたければ、パロカと小菅が生き延びたという、南西の洞窟に行って現地調査をするしかないだろう。
カヤカ:……つってもこれ、行けるのは誰だ?
紗綾:私達は管制塔にかかりっきりですぅ。
柳沢:ぶっちゃけ古文書でも霊感系でもおじさんの仕事なんだけどなあ。
紗綾:柳沢さんが戦艦の主砲から打ち出してもらうとか。
カヤカ:グラビティキャノンおじさん!(笑)
秀史:とりあえず私が向かってみましょう。サブ行動はなしで終了。
カヤカ:じゃあこっちは戦闘継続だ!
●第2ラウンド
GM:では、第2ラウンドのイニシアお願いします!
柳沢:ここは敵の行動に先制できるかがかなり重要になってくるねぇ。
チシャ猫:14
軍港&砂浜の兵士:12
紗綾:8
小菅(アダシ):8
カヤカ:7
秀史:7
柳沢:6
となった。
柳沢:続いて軍港エリアの天候。(ころころ)4、雨。
GM:君が軍港で兵隊とバチバチやりあってると、小雨が降り始めたと思いきや、あっというまに振り始める。
柳沢:混雑度は下がるが、判定はマイナス。これから突破しようという時に面倒な。
●メルジャヒ島 戦況図
●ファストアクション
GM:続いてファストアクション!『高速移動』したい人!
柳沢:管制塔エリアに突破をはかる。兵士が補充される前に突破してしまおう。車を持ち込めているのでコストはそこまででもない。『臨機応変』を加えて3Dで……(ころころ)、回った!21で楽勝。
チシャ猫:つよい。
GM:君は散々に軍港を引っ掻き回した後、船から降ろされていた搬送用のライトバンに搭乗、一気に突っ切り突破した。
柳沢:『臨機応変』、なにげに弱点スキルなのでAP+2なのよなー。
カヤカ:急に車がこっちに突っ込んできた。
柳沢:「……やれやれ、追いついたと思ったらこっちでも荒事かい? カヤカ君も紗綾君も好きだねえ」
カヤカ:「好きでやってねえよ!!?」
秀史:俺はCCCの手配したヘリに乗って島に向かう。軍港エリアは兵士が補充されてしまうだろうから、イントルーダーに有利な砂浜狙い。
チシャ猫:東京から意外と近いメルジャヒ島(笑)。
秀史:ホントは実はすでに忍び込んでいて艦長のワインセラーの中からエントリーとか考えてたんですけどね(笑)。
チシャ猫:竹で作ったアメンボ靴で海を渡ってくる(笑)。
カヤカ:海面から竹筒だして泳いでくる(笑)。
秀史:素直にダイバースーツで侵入しましょう(苦笑)。
GM:『侵入移動』となり、目標値は12だ。不穏な海域に密航となるので、ちょっとした手管が必要になるって感じ。
秀史:2D6+14なので(ころころ)問題なし。ダイバースーツを脱ぎ捨てエントリー。
紗綾:スネークばりの潜入ですね!
秀史:近くまではヘリで運んでもらって、そこからは潜水で(笑)。
秀史:砂浜エリアの天候判定。(ころころ)こちらは晴れだな。
GM:君は手練手管を駆使して上陸に成功した。しかし、砂浜は激戦の真っ最中。身を隠す場所もない開けた砂浜で、君にもさっそく銃撃が殺到してくる……!