人災派遣RPGリプレイ06話『洋灰の雨に茉莉花散る』13【完】
●Ex.『魔弾』のターン
GM:…………さてここでシタナガくん。
秀史:はい。
GM:君は唐突に、凄まじい殺気に貫かれた。
秀史:ぎゃふん!(笑)採石場の方を見ます。
天美:このタイミングで!
紗綾:あれでリタイヤしたとは思っていませんでしたが……!
GM:崩壊したはずの採石場から、君を見上げている男がいる。その視線は、君を見据えて離さない。――目線を切った瞬間に、撃ち殺されるだろう。
秀史:「そういえばまだ片付いてない因縁があったな……!」
GM:君は、男……『魔弾』が、一拍の後に手裏剣を打ち出すことを確信する。今この瞬間に、君が彼を撃たなければ、君か、君の仲間が確実に撃たれるだろう。
秀史:……撃つしかないか。
天美:ええと、シナリオはクリアしていますよね?
GM:はい。シナリオは終了していますので、リソース、露出等は一切考慮不要です。ぶっちゃけ『どのくらいの目が出るか』で演出を考えています(笑)。
秀史:そう言われれば否やはない。『ロングショット』+『アサシネート(覚醒)』+『暗器使い』+『スティング』+『隠形術(覚醒)』+『壁走り』。高度の補正もいれていいですか?
GM:はい。採石場が崩壊しており、君は彼を見下ろす形になり+1修正が付きます。
秀史:了解。それも加えて7D+21(ころころ)39!しょぼっ!
紗綾:2と1が多い。
チシャ猫:動揺してるにゃ。
カヤカ:こんなシタナガさんあんまり見たことない。
GM:ふむ、命中したと考えて、先にダメージを振ってください。
秀史:(ころころ)打撃が10、属性ダメージに『殺意の衝動』を載せて(ころころ)48。合計58です。
GM:これが君の全力かな?
秀史:はい。
GM:OK。…………君の渾身の一投が、『魔弾』に迫る。
天美:回避能力はいかほどか。
GM:…………『魔弾』はその一撃を避けない。
紗綾:ええ?
GM:そして、君の目は、彼の唇が、このように動いたことを捉える。
――いなづまの あとひかるこそ きちじなれ
さきにひかるを ふかくつつしめ――
カヤカ:ええと、『稲妻は後に光ることがよい。先に光ってはならない』。
天美:……狙撃の極意的ななにか?
秀史:猛烈に嫌な予感がする(笑)。
GM:そう。『魔弾』は君の攻撃が着弾する、まさにそのタイミングで狙撃を決行する。……君の攻撃の威力を、まるまる取り込んで!!
カヤカ:取り込んでーッ!?
紗綾:狙撃を狙撃でカウンター、すごい世界ですぅ!
天美:今回フレーバーずるみばかりだぞお!
GM:これすなわち、渾身のカウンターの極意。左肩に受けた衝撃を回転力に変えて、右腕から狙撃する!
秀史:人間じゃねぇ……っ。
GM:命中判定、21D+41で(ころころ)138。
カヤカ:ダイスの数おかしくないですかー!!??
紗綾:私を超えてる(苦笑)。
秀史:これ回避判定どうするんだ?(笑)。
GM:まずは先にダメージを。28D6+62で(ころころ)179。
天美:……リソース全部投入すれば生き残れる気はします。
チシャ猫:チシャも50点止められるにゃよ。
GM:で。
紗綾:まだ何か!?
GM:この179点に×4が入ります。ダメージ716点。
一同:…………(ドン引き)。
カヤカ:あー、『献身』する?相当空気読めないけど。
秀史:…………いや、必要ない。これは、俺に向けて撃っているものじゃない。
天美:では恭輔氏ですかね。全力で救おうとしている私がリタイヤかな。
チシャ猫:(気づいた)あ、色々納得かも。
GM:……シタナガくん。
秀史:はい。
GM:普段の修行であまり意識することはないが、君が修めている木瀬流は、一応『高木神(たかぎのかみ)』を祀っている。君が発掘した文献にもそう書かれているね。
秀史:ほう。
GM:『木瀬』の『木』は高木神、『瀬』は、『流れをくむ末裔』の意味なのだ。
天美:ほうほう?
カヤカ:あー、道場には神棚に神様祀ってあるからな。そういうもんか。
GM:『高木神』は別名『高御産巣日神(タカミムズビノカミ)』。日本神話の神で、『ある英雄が放った矢を、投げ返して撃ち殺した』という逸話を持っている。
天美:……ええと、知っています。『国譲り神話』。オオクニヌシに取り込まれ、使命に叛いたアメノワカヒコが放った矢を『この矢、邪な想いで撃ったなら射貫け。善なる想いで撃ったなら外れよ』と言って返した逸話ですね。
チシャ猫:物知りだにゃー!
――敵の放った矢を、投げ返して殺す。
それ即ち『敵の狙撃を受け止め、その威力を己のものとし最大の狙撃となす』。
これぞ木瀬流の到達点にして根源。
神を弑する一撃、『天羽々(アメノハバ)』
高天原から葦原中津国へ。
『大陸を飛び超えて当たる手裏剣』。
二秀史がかつて憧れた御伽噺の真の姿である――
GM:『魔弾』の放った一撃は、音の壁を十数枚貫き、君のそばをかすめーー
秀史:「……そして紡がれた一撃は、神にも勝るだろう」
GM:崩壊するダムから流れ落ちる莫大な水塊を爆散させた。
カヤカ:手裏剣とはーッ!!??
チシャ猫:人がやっていい所業じゃない。
秀史:「音を超え、空を超え、星を超え、天の果てへと届かん」
GM:莫大な衝撃が莫大な質量の水と衝突し、凄まじい量の水蒸気が火山の爆発のように天に向かって吹き上がる。濛々と立ち上る水蒸気は入道雲となり、時間をおいて広範囲の豪雨へと転じるだろうが、工場や、麓の町に大きな被害が及ぶことはないだろう。
秀史:「……美味しいところを持っていきやがって」
GM:『魔弾』は君を崖下から見据える。…………すこしだけ唇を曲げると、ボロボロの体を翻し、瓦礫の向こうへと消えていった。
秀史:「……相変わらず無口なくせに嫌味な野郎だ」
チシャ猫:「似た者同士なんだにゃ」
カヤカ:「死ぬかと思った、ら、ダムぅーーッ!?」
GM:……君は『魔弾』の繰り出した一挙手一投足を、確とその目に焼き付けた。かつて、初めて君に狙撃の技を見せた時のように。
紗綾:おお。
天美:具体的にはどうなったんです?
GM:シタナガくんは奥義『天羽々』を会得しました。
一同:アイエエエ!?
秀史:え、あの4倍ダメージが使用可能?
GM:はい、さっきのアレが使えるようになりました。
天美:わー、オリジナル必殺技だぁ!私もまだ出したことがないのに!
チシャ猫:とんでもねぇ。
カヤカ:火力の桁がおかしい?
紗綾:おめでとうですぅー。
秀史:ありがとうございます!
GM:細かいデータはこちら。
..●木瀬流 ”弑神”天羽々
・ファストアクションで宣言、メインで使用。
・このターン、イニシアは0となる。
・距離は『超遠』となる
「このターンに受けたダメージのダイス数+固定値と
みずからのダメージダイス数+固定値」×4
をダメージとする
使用した時点で、昏倒状態となりセッションから離脱する。
天美:使用した時点でリタイヤ。リスクが大きいなあ。
紗綾:本当にトドメの一撃用か、最初に一番厄介な奴を倒す用……いずれにしても最終回のクライマックスで使う奴ですね。
カヤカ:えっ、つまり——次回これを使う場面が出てくるってことじゃないですか?
秀史:いやー次回楽しみですね!
GM:ちなみに『魔弾』が戦闘中に復帰していたら、さっきのアレを普通にシタナガくんにぶつけていました。ゲーム的には最終盤で昏倒してもらって、次のシナリオで復帰。
秀史:ぎえー!(爆笑)
GM:「身体で覚えろ」
秀史:「くたばれクソジジイ」(笑)
●エピローグ
「なんだ、ありゃあ」
ダムの水が爆散するのを見て、首謀者の一人、上遠野恭輔は虚脱して座り込む。
過去の非道を暴き、茉莉花グループの会長を社会的に破滅させ、ダムを決壊させ、茉莉花グループに致命傷を与える彼の計画は、ほぼ達成されたものの、茉莉花セメントと彼自身の命を奪うには至らず、頓挫したのであった
GM:「……あんたら、きっと後悔しますよ」
天美:「馬鹿馬鹿しい。後悔すら投げ出したあなたと私達は違います」
GM:「復讐の神ってのは、化け物や能力者、悪魔じゃあない。『数式』なんです。どこかで誰かが歯止めをかけなければいけなかった。復讐が果たされるまで災いは続き、果たされると奴は力を増す」
紗綾:「あなた自身、アダシさんとやらに言いくるめられてるだけでは?願いを叶えて成長されたら全然意味が無いですぅ」
GM:「そうです。だから倍々に増えていく報復の連鎖を止めるには、俺のように、『加害者にして被害者』になるか、あるいは――」
秀史:「……数式そのものをぶち壊すしかない」
GM:「そう。神さえも殺すしかないんです」
カヤカ:「神殺し、かあ。業界的に名が売れるヤツだよな?」
紗綾:『本当にからくり仕掛けかい。そんなつまらぬ神、斬り捨ててしまうが良い』
GM:「……もう、それしか手がないでしょうね。でも気をつけて。茉莉花グループの壊滅という大きな『願』を叶えたアダシは、さらに神としての格を増し成長したはずです」
秀史:「先程までは大企業を滅ぼす力。今回成長して、国を滅ぼす力。もしも次に奴が願いを叶えて更に成長したら……」
カヤカ:「考えたくねえなあ!」
天美:「相手が国だろうが神だろうが、私達のやることは変わらない。私達の社会を守るためなら、私達はなんだってやる。あんまり"派遣会社"を舐めないでくれる?」
GM:「そうですね。小菅さんも言ってましたよ。あんた達とは『縁』を感じるって」
カヤカ:「そんな縁いらねえ!」(笑)
チシャ猫:「ウチらがやらんでも、それこそC国が全力で何とかするでしょ」
GM:恭輔氏は気力が尽きたのか、項垂れる。君たちが連行するなら、素直に従う。
カヤカ:んじゃ連れてきます。
GM:そこに依頼人、上遠野明氏が戻ってくる。「とんでもないことになったが……恭輔、そうか……」
秀史:思い返せば、『リベンジ騎士団』はアダシのために作られたということか。
紗綾:『願いを叶える』コマを揃えていたって感じでしょうか。
GM:「CCCの皆さん、ありがとうございました。ボイザ達、メルジャヒの皆も、ダムの水が吹き飛んだのを見て、ストライキを続ける気はなくしたようです。色々と……色々と大変なことになりましたが、ストライキの収束という本来の任務は果たされました」
天美:「……正直、完遂、とは言い難い状況ですけどね」
カヤカ:「仕事自体は、終わったんだけどな」
秀史:「だが、パロカが連れ去られた」
紗綾:「もやもやするですぅ」
チシャ猫:「まーた巻き込まれてるんだにゃぁ」
秀史:「復讐の神が数式なら、現世で権能を振るうためのインターフェースが必要になる。パロカはその依り代にされるだろう」
天美:「彼女の力の源、復讐心を解消すれば、その力を弱めることができるはず……」
紗綾:『ふはははは!久しぶりに神が斬れる、神が斬れるぞ!』
天美:とは言え、私の出番はここまでなんですけどね(笑)。
秀史:そういやおじさんはCSG47にもパロカにも縁がないですね(笑)。
天美:感情的になり過ぎてる天美をおじさんが宥めてチェンジ、って形で参加するよ。
チシャ猫:「みんな報酬もないのに、やる気満々なんだにゃ」
天美:しかし、今回の件はどうにもなりませんでしたね。埒外で進んで、埒外で終わっていた。
チシャ猫:目の前のことで精一杯という感じでしたね。
紗綾:オロオロして終わってしまいました。
GM:正直な所、意図的に事前調査が不十分、戦闘に忙殺されて、真相はエンディングまで開示されないというフラストレーションの溜まるシナリオになっていました。これは申し訳ない。そのぶん次回で暴れてほしい。
天美:最終回前はそういうのもアリでしょうね。
紗綾:キャンペーンでGMとプレイヤー間でコンセンサスが取れているからこそですよ。
秀史:楽しかったです。
GM:実は前回のキャンペーン同様、また『山』、『がけ崩れ』、『依頼人の裏切り』かよ!という構成でした(一同笑)。
カヤカ:サイトに載ってるリプレイで見たことあるぅ(爆笑)。
実はGM、前シリーズでもクライマックス直前に同じような話をやっていたのである。
紗綾:依頼人は裏切るもの、おぼえましたー。
チシャ猫:まあこのキャンペーン、初回から依頼人側にスパイが紛れ込んでたしにゃ。
天美:早く続きをやらないとモヤモヤがおさまらないー!
カヤカ:消化不良!なんだよな!やんなら後腐れなく片付けてえし!
チシャ猫:カヤカはやる気にゃねぇ。
GM:はっはっは、依頼人裏切り系シナリオはリベンジ編までワンセットだからねえ。
天美:そうそう、それがなくっちゃ片手落ち!
●予告
GM:では……ちょっとだけ先の話を。『みなさん、大変なことになりましたが、まずはお疲れさまでした』と藤村君。『CCCに戻って、ゆっくり休養をとってください』
カヤカ:あ、なんか久しぶりですね藤村サン。
チシャ猫:半年ぶりぐらいに感じるにゃあ(苦笑)。
GM:『そして復調したらすぐに、新たな仕事を受けていただきます』
紗綾:「既に次の仕事が入れられているですぅ、馬車馬のごとく働かされるですぅ」
カヤカ:「藤村サン。……サイッコーっすよ」
天美:ということは、この件の続き、ってことですよね。
紗綾:正直、既に社長案件ではと思わなくもなかったり。
秀史:「いや……。恐らく、この案件は強いだけじゃだめだ。アダシに『縁』がない存在は関われない」
GM:『はい。その通りです。残念ながら、これは『貴方達でなければ』ならない案件となります。『衛星軌道上にC国が所有している宇宙ステーションが危機に瀕しています。任務難易度:総合評価A++(国家・史学級案件)』。……MBSの『大賢良師』とコンタクトしてください!」
一同:……宇宙ステーション……!
秀史:「これが、『星が落ちる』……か」
カヤカ:「いきなり行きたくなくなってきたなー」と任務内容を聞いて目を逸らすのであった。
GM:ということで。
”――アダシ様に願をかけるんだよ。
『人から掠め取るものの頭上に』
『星が落ちて一族郎党国ごと滅べ』
ってな”
……些細なまじないは怨土に芽吹き、今、災厄の禍津神となる。
次回キャンペーン最終回、――『仇星、闇を駆ける時』。
カヤカ:神殺しシナリオだーッ!
GM:あと一回、お付き合いくださいまし。
天美:では、こちらも以前のキャンペーンに倣って。……『首を洗って待っていやがれ』。
一同:お疲れ様でしたー!