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CCCリプレイ外伝『クリーンナップ・クリアランス』03

●Middle 09 六畳間の惨劇 Scene Player 犬神乾史

  ――木曜日。
  相も変わらず路上では苛烈なキャンペーンが行われている。
  群れの頭として、降りかかる火の粉は払うべきかも知れない。
  だがしかし、犬神乾史はどうにもその気になれずにいた。
 
GM:次のシーン、プレイヤーは乾史だが、他の二人も新宿に向かっているので、任意のタイミングで登場してくれ。
十三:了解だ。
乾史:俺は『きれいな新宿運動』の件もそうだが、なんとなくヒデの事も気にかかるので、折りを見ては街をうろついている。
GM:そんな君の携帯に、サブ君から連絡が入る。
理流:あれ、携帯持ってたんだ(笑)。
乾史:おうッ、らくらくホンだがな!(一同笑)……「どうしたサブ」
GM:『実は……街でヒデを見かけたって情報が入ったんです』
乾史:そりゃマジか。どこでだ?
GM:『大里の婆さんの家の近くらしいんですが……』と、なぜか歯切れの悪いサブ。
乾史:んだよ、ハッキリ言えよサブ。
GM:『それがその……ヒデのヤツ、ナイフをもっていたらしいんです』
乾史:……あ、あのバカったれが!すぐにトヨばあさんの所に向かうぜ!
理流:では、新宿に向かっていた私は、通りをかけぬける乾史君を目撃したことにして、タイミングをはかって登場します。
 
  快足をとばして一気に裏通りを駆け抜け、大里トヨの自宅前に辿り着く乾史。
  そこには自転車でやってきた、先日の銀行員が居た。
 
十三:では私も登場だ。犬神君がトヨさんの自宅に辿り着く少し前に、自転車で到着していたことにする。呼び鈴、もといブザーを押すが……。
GM:「ビー、ビー」…………何度鳴らしても、誰も出ない。
十三:……おや。それでは「大里様~、お出でですか」と言いつつ玄関の戸に手をかけてみる。
GM:鍵は開いている。
理流:うわぁ嫌な予感しかしない!
十三:「お出でですか~」と口にしつつ、戸をそろそろ開ける。そこから玄関の中を確認するけど。
GM:では君は、玄関マットに汚れた足跡を発見する。具体的には、”子供が、土足であがりこんだかのよう”な。
乾史:ではそこに到着だ!「バカ野郎早まんなヒデー!」と叫びながら家の中に飛び込んだところで、十三にばったり出会ったことにします(笑)。
理流:DXはプレイヤー側がこういう演出を出来るからいいわよね(笑)。
乾史:あん?アンタは……えーと、サブが名刺をもらってた大里の婆さんの召使い……そうだ、じゅうぞう!(笑)
十三:そういう君は、サブ君の子分!(爆笑)
乾史:子分じゃねー!?ってか、今はそんなこと言ってる場合じゃねえんだよ。おい、ババア、大里のババアは無事か!
十三:それを私も確かめに来たところだ。……彼の表情から事態の深刻さを悟り、礼儀を無視して家の中に上がり込んで、居間へ乗り込む!
乾史:俺も行くぜ!
 
  もともと小さな家である。廊下と呼ぶにはささやかすぎる距離を移動して居間の中に飛び込んだ二人が見たものは――
 
  血を流してうつぶせに倒れている大里トヨと、
  ナイフを握りしめて立ちつくしているヒデ、だった。
 
乾史:ヒ、ヒデ……おめえ、なんてことを!と言って顔面を殴る。
GM:呆然と立ちつくしていたヒデはその拳をまともに受け……そこでハッ、と気がついたように言う。「い、犬神さん、おれは、一体、何を……」
乾史:何をじゃねえ!いったいてめぇ、なんでこんなことしやがった!
GM:「え……あ……うぅ……」
十三:待て、それよりまずやることがあるだろう!私はトヨさんの応急手当を。そして君はサブ君に連絡を!(一同爆笑)
乾史:だから、俺は子分じゃねーって!(笑)
十三:いやあながち冗談でもなく。このまま普通に救急車と警察を呼ぶと、立場がまずいのは君たち二人だぞ。
乾史:ぐ、確かにそれはそうだ。
GM:ちなみに、十三が応急手当をすると、トヨさんはまだ生きていることがわかる。
十三:……そうでなくては困る。しかし、どうしたものか。
GM:君がそんなことを考えていると、サイレンの音があっという間に近づいてきて、トヨさんの家の前に次々とパトカーが停車する。
乾史:ンだよそれ、いくら何でも早すぎだろう!?
GM:そしてたちまちパトカーから警官達が現れ、トヨさん宅を取り囲む。
乾史:……じゃあ、迫ってくるサイレンの音をしばらく聞いた後、ヒデの手からナイフをとりあげる。
GM:ナイフとヒデの手には、血がついている。そしてヒデはまだ呆然としている。
乾史:ヒデ、おめえは逃げろ。
GM:「えっ、でも犬神さん……」
十三:何を言っている。君ら二人が逃げたまえ。ここには身元が確かな私が残るべきだ。
理流:十三さんそれでいいの?
十三:私には、上司の指示を受けて顧客の元に向かったという、ここにいるべき確かな理由があるからな。それに、警察に事情聴取された方が、逆に情報が引き出せるというものさ。
乾史:はっ、知らねえ大人に貸しを作る気はねぇよ!
十三:子分のくせに生意気な口を利くんじゃない!(笑)とっととサブ君の元に戻って報告したまえ。
乾史:だから俺は子分じゃねー!?
GM:どちらにしても意味はない。すでに警官達がトヨさん宅を取り囲み、逃げる道はすべて塞がれている!
理流:あ、ちょっと待って、それだと私が登場できなくなる(笑)。
GM:今登場するなら、君が乾史の後を追ってトヨさんの家に入ったところで警察が到着する。登場しないなら、君は警察が取り囲んだ後でトヨさんの家に到着した事になる。
理流:うっ。
乾史:つーか来るのか!?これ以上話をややこしくするのか!?(一同笑)
十三:有本さんチョーKYって感じィ~(笑)。
理流:(苦笑)では、警官隊の後で登場します。自由に動ける人間がいた方が良いし、そもそもキャラとしてはここがトヨさんの家って知らないのよね。
GM:では君は、街で見かけた『新宿の狂犬』の後を追って来たら、いきなりパトカーが家を取り囲んでいる光景を目撃してしまった。
理流:とりあえず電柱の影に身を隠して成り行きを見守ります。
十三:正しく、家政婦メイドは見た、だな。
GM:理流が物陰から見つめる先で、多数の警官達がトヨさん宅の玄関から雪崩れ込んでゆく。そして最後に、パトカーから姿を現したのが……。
乾史:(遮って)だぁめだ~、こりゃ詰んだわ~(爆笑)。
GM:(苦笑)姿を現したのは、高級スーツにオールバックで眼鏡の男だ。
十三:やはり、そうだろうな。
GM:警官隊が君達のいる部屋に雪崩れ込んでくる。そして彼らは倒れているトヨさんと君達を見て血相を変える。
乾史:ナイフは今俺が持っているんだが。
GM:「容疑者確保!」と言いつつ、彼らはヒデを取り押さえる。
十三:待った、ヒデ君を迷わず確保したのか?
GM:イエス。
乾史:待ちやがれ、そいつじゃねえ、俺だ!捕まえんなら俺にしろ!
GM:そこで、警官隊の最後尾から現れた男……辰巳署長が言う。「凶器所持の現行犯で逮捕だ」と。そして乾史にも手錠がかけられる。
乾史:……やっぱテメェかよ、辰巳。
GM:「また会ったな、犯罪者予備軍。……いいや、これで晴れて犯罪者になったというわけだ」
乾史:何も言わず、辰巳をにらみつける。
GM:そんな君の視線を無視して、辰巳署長は部屋の中を見回している。そして十三と視線が合う。「――貴方は?」
十三:私は職務上、大里さんとおつきあいのある者です。失礼ですが貴方は?
GM:そう来るか(笑)。「失礼、私はこういう者です」と警察手帳を見せる。「捜査にご協力をお願いいたします」
十三:署長さんですか。まさか現場にそのような偉い方が直接出向かれるとは。
GM:「区民の安全を守るのが私の仕事です。そのために陣頭に立つ事も必要なのですよ」と署長は言う。
十三:……鷂十三、フタバ銀行の行員です。出来る事があれば協力させて頂きます。
GM:「ほう、銀行員。となると土地関係のお仕事ですかな?」
十三:様々な職務を担当しております。……不思議ですな、なぜ、まず土地関係の担当と思われたのでしょう?
GM:「おや、これは口が滑りました。こちらの女性は不動産の所有者として有名でしたのでね。ましてやこんな、と言っては失礼ですが、セキュリティの低いお住まいですからね。我々も常日ごろから心配していたのですよ」
十三:そうですか。……ではここで、上司の指示でトヨさん宅に向かい、事件現場に出くわしたという事について正直に話す。
GM:ふむ。そこは事実だから、辰巳署長達も普通にメモをとります。
十三:加害者が未成年なのでどうすべきか判断に迷っていたところ、すぐに警察の方々が駆けつけてくださったのです。いや、まさに迅速な対応でした。
GM:「近隣の住民から通報がありまして、ここに駆けつけたのですよ」
十三:ほう、近隣の住民ですか?私がここに来たとき、部屋は閉めきりでした。どちらの方がそれほど早く気づかれたのでしょう?
GM:「職務上お答えすることは出来ませんな。まあ、善意の通報、とだけ申し上げておきますよ」
十三:善意の通報、ですか。市民の協力が得られるというのは良いことですな。
GM:「後ほど改めて事情を伺いたいのですが、ご連絡先を教えていただけますかな」
乾史:そこで、俺は警官達に連行されつつ、十三に耳打ちする。……おい、余計なこと言うなよアンタ。
十三:聞こえないふりをして、名刺を辰巳課長に渡す。
GM:「ご協力感謝します。容疑者は確保しましたので、今日の所はお帰り下さい」
十三:トヨさんはどうなった?
GM:救急車で搬送された。今は病院に向かっているだろう。
十三:では、形式的な礼を述べて退出するとしよう。入院に必要そうなものや、一応トヨさんの身の回りのもの一式を持って、病院に向かいます。
 
  電柱の陰から見守る理流の目の前で、警官達が再び家から出てくる。
  手錠のかかった手元を隠された、二人の少年と共に。
 
乾史:さわんじゃねー!一人で歩けるっつってんだろ!
理流:出てきたのは『新宿の狂犬』君と、ヒデ君よね。ヒデ君の様子は?
GM:どことなくぼうっとして、目の焦点が合っていないような気がする。
理流:むー……。
 
  ヒデと共にパトカーに乗せられて、連行されていく。
  今さらパトカー程度でビビる乾史ではないが――今回ばかりは、周囲の警官達に減らず口をたたく気にはなれなかった。
  

●Middle 10 子犬の叫び、狂犬の意地 Scene Player 犬神乾史

  風向きが変わった――。
  まさにそう形容すべきだろう。
  苛烈な『きれいな新宿運動』の中でも勢力を維持していたストリートキッズ達。
  その瓦解まで、わずか二日しかかからなかったのだから。
 
GM:……さて次のシーン。乾史は署内の留置場に入れられ、二日ばかりの夜を過ごした。その間に、状況は大きく動いている。
乾史:ヒデはどうなったんだ?
GM:大里トヨさんへの傷害事件の現行犯として、厳しく取調中、と思われる。君とは放り込まれている房も違うようだね。
乾史:ざけんな、やったのは俺だ、って主張するけど。
GM:残念ながら説得力がない。まずヒデが現行犯であること、次に、ヒデは大里トヨさんにナイフを持っている所を咎められ、路上で往復ビンタをされているところを多くの野次馬に目撃されているため、動機もばっちりあること。
理流:私が居合わせたあの時か~。
GM:「公衆の面前で注意され恥をかかされた不良が、逆恨みして老人を刺した」、警察はそう考えているし、世間でもそう受け止められているようだね。
十三:単純な分、説得力があるわけだ。
GM:そしてこの事件以来、君のチームに対する街の人々の感情は急速に悪化している。
理流:あ、トヨさんを刺したから、街の人達が敵にまわっちゃったのか……。
GM:庇ってもらえなくなるどころか、通報されるようになってしまい、今まで逃げおおせていた子分達も大半が捕まっている、という情報を、『きれいな新宿運動』で留置場に放り込まれてくる人達から君は聞いている。
乾史:留置場の毛布の上に寝っ転がりながら、やっぱ、早く解散しとくべきだったのかも知んねぇな……、と呟く。
GM:君がそんなことを呟いていると――突如留置場の扉が開く。「出ろ」
乾史:……ぁあ?誰だよ。
GM:そこに立っていたのは、陰気な顔の刑事――山岐だった。
乾史:はっ、いよいよ少年院ネンショー送りってところかぁ?
GM:「――お前の容疑は晴れた」
乾史:…………あいつじゃねぇ、やったのは俺だって何度も言ってんだろう!
GM:傍らの川岸刑事が付け加える。「残念だけど、凶器のナイフの柄には結城良秀……ヒデ君の指紋がはっきりついていた。犬神君の指紋がついていたのは刃の部分」
理流:うう、返り血も手についていたんだっけ。
GM:「ヒデがトヨさんを刺した後、駆けつけた君がナイフを取り上げた。これで間違いないだろう?だから、君の容疑は晴れたと言うことだよ」
乾史:……ヒデと話は出来ねぇのかよ。
GM:「気の毒だけど、さすがにそれは――」「話をしていけ」と山岐(一同爆笑)。
乾史:なんかオイシイんだけどこのオッサン!(笑)
十三:台詞少ないのにいいところ持っていくなあ(笑)。
GM:そして君は一旦留置場から出された後、面会室に通される。「山岐さんの立ち会いだから特別に許可するんだ。少しでも騒いだらすぐに中止するからな」と、係官が言う。
乾史:……面会室に入って、ヒデを待つぜ。
 
  面会室の扉を潜るときに、山岐がぼそりと呟いた。
「――これが大人のやり方だ」
  乾史に返す言葉はなく、ただ唇を噛みしめるだけだった。
 
GM:やがて係官に連れられて面会室にヒデが入ってくるが、その姿はしょぼくれている。
乾史:しばらく、何も言わない。
GM:「……すんません犬神さん……こんなことになっちまってホントすんません……」
乾史:ヒデ、お前なんでこんなことをしたんだ。
GM:「それが……よく覚えて無くて……でも、ナイフ持ってたし……警察もお前が刺したんだって言うし……だから多分、おれがやったんだと……」
乾史:……お前、トヨばあさんのこと、恨んでいたのか。殺したいと思っていたのか。
GM:「口うるせぇし、ひっぱたくし、ヤなババアだとは思ってましたけど……でも確かにおれがナイフを持ってたから……殺したかった、のかもしれません」
乾史:ヒデ。俺が聞きたいのは、「かもしれない」なんて推測じゃねえんだよ。殺したかったのか。憎んでいたのか。お前の心を聞いているんだ。
 
  十秒以上の沈黙。
  犬神乾史は真っ直ぐに、ヒデを見据え続ける。
  厳しい視線――目を逸らすことも、己の心を偽ることも出来ないほどの。
 
GM:「…………こ……」
理流:こ?
GM:「殺したいなんて、思うわけがないじゃないですかっ!!」ばぁんっ!とヒデは両手でテーブルを叩く。
乾史:……。
GM:「おい、騒ぐなら面会中止と言っただろう!」と係官。ヒデははっと我に返り、「っ、すんませんすんません……」
乾史:……。
GM:「面会は中止だ!とっとと戻れ!」係官に腕を引っ張られていくヒデ。
乾史:お前じゃねぇ。
GM:「……えっ?」
 
「お前はやってない。”俺がそう決めた”」
 
GM:「犬神さん?」「おい立ち止まるな、さっさと出て行け!」
乾史:後のことは心配するな。俺がぜってぇそこから出してやる!
 
  ヒデが連れ出され、面会室の扉が閉まる。
  閉ざされた扉を見据える乾史の瞳には、一つの決意が刻まれていた。
 
  

●Middle 11 全員集合 Scene Player 鷂十三


  土曜日の午前。
  先日トヨに言われてビルの下見に行った日から、もう一週間が経過していた。
  見積もりを届けにいく必要がない休日。
  だが鷂十三は久しぶりの自由な時間を、今ひとつ楽しむことが出来ずにいた。

GM:君が自宅にいると――不意に携帯電話が鳴る。
十三:む、電話に出よう。
GM:では、電話の声が………………。
理流:?どうしたのGM?
GM:あ、あれ、十三の名字なんだったっけ?(一同爆笑)
十三:おいGM!!(笑)
GM:す、すまん、素でど忘れた!!えっと……ジュウザ、は名前だから……。
十三:鷂!ハイタカジュウザ三十二歳だから!(笑)
GM:そ、そうだそうだった(笑)。『鷂十三さん、ですね。こちらは新宿○○病院です』……トヨさんが運び込まれた病院だ。
理流:なんで十三さんに電話が?
GM:入院した時、身寄りのないトヨさんの連絡先として、十三の携帯を病院に教えてあったのです。
十三:確かにそれが理にかなっているな。……もしやトヨさんの容態に変化が?
GM:『はい、手術は成功し、先ほど意識を取り戻しました』
十三:面会は可能ですかな。
GM:『短い時間でしたら』
十三:わかりました。ただちにそちらに伺います、と言って電話を切る。
理流:うーん、結局、乾史君達が補導されるシーンでも絡めなかったしなあ。どうやって登場しよう?
GM:君がそんな事を考えていると、携帯電話が鳴る。発信元は、CCCの麻生さんだ。
理流:あれ(苦笑)、はい、麻生さんどうされました?
GM:「有本さんご苦労様です。唐突ですが、貴方に伝言があります」
理流:え?伝言ですか?
GM:「はい。『話したい事があるので、新宿○○病院に来て欲しい』との事です。伝言の主は、大里トヨさん」
理流:大里トヨさん、って……。この間、『新宿の狂犬』君のビルに入ってきたお婆さんよね?その後、ヒデ君に刺されたっていう……これくらいの情報は知ってていい?GM。
GM:うん。君も二人が補導された以上、何があったかは当然調べただろうしね。
理流:でもそのお婆さんが私に何のようだろう?――とにかく、すぐに向かいます、と答えて電話を切ります。
GM:さて次は乾史。警察署から外に出ようとしたとき、後ろから川岸刑事が声をかけてくる。「ちょ、ちょっと待ってくれ犬神君」
乾史:まだ俺になんか用があんのかよ。
GM:「どうやら、大里トヨさんが意識を取り戻したらしいんだ」
乾史:……それはホントか!?すぐ行くから場所を教えてくれ!、と言って皆と合流します(笑)。
 
  新宿のとある病院。その病室の一つに、大里トヨは居た。
  手術を終え、集中治療室から出てまださほど時間が経っていないその姿は、先日までの殺したって死ななそうな女傑ではなく、九十歳の老婆相応のものだった。
 
十三:では、私が一番最初に病室に到着する。
GM:「あまり長時間の会話はご遠慮下さい」と医師が告げ、君を中に通してくれる。
乾史:俺も到着。医者は無視して、ずかずか病室に踏み込む。……バアさんはどこだ?
理流:私もその後で到着。……さすがにこの場で乾史君の勧誘はしない。会釈だけして病室に入ります。
GM:病室のベッドには、大里トヨが横たわっている。
十三:この度はご不幸がございまして……。
理流:十三さん、それだと死んじゃってるから!(苦笑)
十三:(苦笑)いや冗談だ。……大里様、お加減はいかがですか。
GM:「まあまあだよ。……最初の応急処置がよかったらしい」
十三:……貴方の事です。このようなお怪我など必ず治ると私は信じております。
GM:十三の声を聞いたトヨさんは、ベッドの上で力なく笑う。「……刺されちゃったみたいだねぇ」
乾史:誰に刺されたんだよ、バアさん!
理流:ここは病室よ。静かにしなきゃダメ、と肩に手をかける。
乾史:その手を振り払う(笑)。
十三:……大里様、警察の捜査では、貴方を刺したのは金髪の少年……ヒデ君ということになっています。あの時、現場にはヒデ君は居たのですか?
GM:「……アタシはずっと一人で部屋に居たつもりだったけど、いきなり後ろから襲われたからね……」
十三:目撃はしていないのか……。
理流:んん?後ろから口を塞がれて、お腹を刺された?
GM:――ではここで、各自《精神》で判定してくれ。目標値は8。
一同:(ころり)余裕で成功~。
GM:君達は気がついた。「後ろから口を押さえて、腹を刺した」ならば、ナイフは逆手に構えた方が自然だ。しかし、ヒデの指紋は順手でついている。
十三:なるほど。状況証拠からして、ヒデ君の犯行とは思えません。
GM:「……ちょいと、アタシの手提げを取ってくれないか、”鷂さん”」
乾史:おお、初めて名前で呼びやがった!(笑)。
理流:決してGMが漢字を忘れていただけじゃないのね?(笑)
十三:(苦笑)では、手提げカバンを取りますが。
GM:「底にもう一つ、チャックがあるだろ……それを開けて」
十三:……開けました。
GM:そこから出てきたのは、複数の銀行通帳、土地の権利書、そして古ぼけた手帳だ。
十三:……失礼、拝見させていただきます。
GM:記載されている貯金額は、いずれも桁違いと呼べるべきシロモノだ。そして土地の権利書は、まさしくあのビルのもの。
十三:大里様……これはいったい?
 
  十三の問いに、トヨはその時だけ、ニヤリ、といつもの笑みを浮かべた。
「……これを、フタバ銀行……いや、アンタに預ける。この金を、あの子達の学資にしてやって欲しいんだよ」
 
一同:い、いい話だー!?(一同爆笑)
十三:手帳の方も拝見しますが。
GM:そこには……乾史のチームに所属する、あの廃ビルにいた子供達全員の通り名、性格、そして将来の身の振り先が事細かに記されている。『ユウスケ、両親が追い出したことを強く後悔している、家に帰るべき。ヒロト、大人しいが手先が器用、職人の素質あり。セイジ、頭が良い。きちんと勉強をすれば伸びる……』データや上っ面だけを見ていては決して書けないものだ。
十三:トヨさん、これは……!
GM:「……そうそうくたばるつもりもないけど、アタシの先がそう長くないってのも事実さ。どんな形であれ、あのビルを買い取った人間があの子達を追い出さないはずがないからね。だったら、今のうちに売って、あの子達が自立するための元手にしようと思ったのさ……」
十三:あのビルには、それほどの価値があるのですか?
GM:「……これはまだ一部の人間にしか知られていないことだけど。近々新宿駅前と地下街の再開発計画があってね。あのあたりはこれからの繁華街のど真ん中になる予定なんだ。地価も跳ねあがる……冗談抜きに五倍くらいにはね」
乾史:じゃあ、あの『きれいな新宿運動』とかってのは?
GM:「再開発にあたっての下準備、だろうねえ」
十三:となればトヨさん、敬天興業もその話は知っているのではないですか?
GM:「ああ。間違いないだろうね。『きれいな新宿運動』で店やビルのオーナーが次々と権利を売りに出し始めている。それを敬天興業が買い漁ってるって噂だよ」
理流:なるほど、再開発が始まったときには一気に五倍の利益になるわけね。
乾史:けっ、大人が考えそうな事だぜ。
GM:「アタシもあのビルを売って金を儲けようとしていたのは事実さ」とトヨさん。「でも、敬天興業が買取先と聞いては売るわけにはいかなかった」
十三:敬天興業とは何者なのですか?
GM:「敬天興業なんてのはただの看板。奴らの本体は、清風会ってヤクザどもさ……」
乾史:……そうか、そう言うことかよ。
GM:「ヤクザにくれてやるには、ちぃとアタシもこの街に長く居すぎたからね……」
十三:このまま再開発計画が進めば、土地の権利を買い占めた敬天興業、いや清風会は莫大な資金と利権を手にするわけだ。新宿の勢力図が書き換わるだろうな。
理流:それでトヨさんは値段をつりあげて、ゴネていたわけね。
十三:となると、トヨさんを刺してヒデ君に罪をなすりつけたのが誰か、想像がつくというものだな。
GM:「フタバ銀行の担当者はヤクザに抱き込まれていることにも気づいてなかったみたいだけど、アンタなら任せられると思ってね……だからアンタに、この金の管理もたのみたいのさ」
十三:承りましたとも、大里様。
理流:ねえ、その手帳って、全員分の身の振り方が書いてあるんでしょう?
GM:そうですねえ。
十三&理流:乾史君は?(爆笑)
GM:ふむ、ではヒデサブ乾史どれから行こう(笑)。
乾史:じゃ、じゃあヒデから。
GM:では、乾史がサブに調べさせた生い立ちなどのデータが、より詳細に記されている。そして、『ヒデ:親御さんとはすれ違い。家に戻ってやりなおすべし』とある。
乾史:なんでンなところまで考えてあるんだよ……。
理流:じゃあ、サブ君は?
GM:『サブ:好きに使え』(一同爆笑)
一同:ですよね~(笑)。
十三:では犬神君の分を……。
乾史:読み上げようとするところで手帳をひったくるぜ。……待てよ、俺は金なんぞいらねえ。同情惹こうと思ってあのビルに居たわけじゃねえ!
 
  乾史の声を、まるで予期していたかのように、大里トヨはまたも笑った。
「生憎と、アンタにやるもんなんてないよ」
 
理流:(笑)な、ないんだ。
GM:「アンタの行き先を色々考えたんだけどね。学校も就職もアンタにゃ向いてない」
乾史:そりゃそうだ、といいつつ少しだけ傷つく(笑)。
GM:「山岐は学校に行かせたがっていたみたいだけどね」……そうトヨが言うと、いつのまにか病室の入り口に山岐が立っている。
理流:いつの間に(笑)。
十三:というか、馴染みだったか、この二人。
GM:「まあ山岐も昔は悪かったからねぇ~。アタシが更生してやらなかったらどうなってたことやら」
理流:山岐さんも昔はやんちゃだったの?
GM:相変わらずの仏頂面のまま、山岐は少し目をそらす(笑)。そこで彼女は理流の方を向く。「お嬢ちゃん。アンタはCCCの子だね?」
理流:やっぱり知ってたのね(笑)。……はい、CCCの有本理流と申します。
GM:「……だと思ったよ。街中でいきなり銃を撃つ子はなかなかいないからね」(一同爆笑)
理流:あれは正当防衛ですから!(満面の笑み)
GM:「本当は麻生ちゃんに頼むのがスジなんだけど、アタシはこんなだからね。……一つ、アンタ達に仕事を頼みたいんだが」
理流:……はい、なんなりと。
GM:「清風会の地上げをやめさせて、あの子達を助ける。アンタらなら、それが出来るはずだ」
理流:――はい。CCCとして全力を持って事に当たらせて頂きます。
GM:「そうかい……頼むよ。それから、その仕事に、この小僧も加えてやっとくれ」
乾史:……おい、勝手にそんな話決めんな婆さん!
GM:「――言っただろう、学校も就職もアンタにゃ向いてない、ってね」
乾史:……。
GM:「アンタが抱えてる力は強すぎるのさ。自分一人だけを支えようとしたら、かえって暴発しちまう。アンタみたいのはね。周りを支えようとしているくらいで丁度いいのさ」
乾史:…………へっ。お節介もほどほどにしろ。俺は誰の指図も受けねぇよ。
 
  そう言い放つ乾史。だがその唇には――少しだけ笑みが浮いていた。
 
理流:依頼の件は承りました。ですから、大里さんもゆっくり休んでください。
GM:「そうさせてもらうよ……」と言うと、しゃべり疲れたのか、トヨは目を閉じる。
十三:死ぬな、トヨさーん!(爆笑)
乾史:ナースコール!ナースコール!(笑)
GM:(笑)「眠っているだけです。しかししばらく安静が必要ですから、どうか外に……」と医者が言う。
十三:判りました。退室します。
 
  山岐刑事が退出した後、病室から待合室に移動した三人。
  銀行員、女子大学生、ストリートキッズ。
  歳も立場も違う三者が一室に居る光景は、些か奇妙だった。
 
理流:ではここで、声をかけます。――貴方も協力、してくれるわよね?
乾史:…………はぁぁぁぁぁぁぁぁ……(全力でため息をつく)。……誰かの思惑通り動くのは俺の流儀に反するが、背に腹は買えられねぇ、か。
理流:誰かの思惑通りに動く必要はないんだぞっ。君が……乾史君が、自分のやりたことをやればいいんだぞっ!
乾史:――はっ、俺はいつだってそうだよ!
理流:よーし、それでこそオトコノコなんだぞっ!と頭を撫でる。
乾史:さわんじゃねー!てゆーか理流、おめー馴れ馴れしすぎなんだよっ!
理流:あ、そうそう、CCCのお仕事ですから、十三さんも協力よろしくお願いしますねっ!
十三:生憎、これは私の表の仕事でもある。……今さら挨拶は結構だ。そこの少年もな。我々の仕事は、君の今までの喧嘩とはものが違う。そして君が賭けるものは、君達自身の生きる場所だ。その現実を自覚できているのかね?
乾史:じゅうぞうの言う、現実ってのが何かなんて俺の知ったこっちゃねえが。今俺がやんなきゃ行けないことはわかってるぜ。――ヒデをはめたヤロウを見つけてぶん殴る。そんでヒデの罪を晴らす。まずはそこからだ。
十三:――ふん、それだけ判っていればまずまずか。ならば協力するとしよう、犬神君。


●Middle 12 真犯人の行方 Scene Player 犬神乾史


  週末だというのに、人通りの極端に少なくなった街。
『きれいな新宿運動』はすでにその目標を完遂しつつあるようだった。
  もともと、何の権利もない自分たちが居座る事はスジが通っていない。
  だから、街の人達に「出て行け」と言われるなら仕方が無いとも思っていた。
  だが、その裏に、街を喰い物にしようとする奴らがいるとするならば――黙って排除されてやる義理はない。
 
GM:さて、ここで一つお知らせがあります。
乾史:ほう?
GM:今までは各個人が独自に情報を集めていたのですが、CCCの正式の依頼となったため、各自がもう一回ずつ、それぞれ気になることを調査することが出来ます。
十三:それはありがたい。先ほどから調べたいことを色々リストアップしていたのだよ(笑)。
乾史:じゃあまずは俺が行こう。十三と理流に言う。……なあ、アンタ等なら、ヒデをハメやがった連中についても、何か判るんじゃねぇのか?
理流:じゃあ、CCCの情報網を、私を仲介にして乾史君が使うって感じかな?
乾史:同時に、サブ達、まだ捕まってない子分達も総動員して、事件の目撃者の情報を集めさせるぜ!(ころり)8。
GM:CCCのネットワーク、そしてストリートキッズが仕入れて来た噂話を統合すると、前回は調べきれなかったヒデの行動がだいたい判明する。
理流:CCCのネットワークは大したものね(笑)。
十三:演出するなら、コンビニの監視カメラなどのデータを借りたとかそこらへんだろうな(笑)。
GM:君に追い出された後、ヒデはコンビニや路上で夜を過ごしていたが、ある晩急に姿を消した。そして事件当日、妙に朦朧とした状態で、ナイフを握ってトヨさんの家に向かうヒデの姿が確認されている。
乾史:まあ、そこまではだいたい予測の範囲内だな。他にないのか?
GM:もう一つある。トヨさん宅の近所の人達に改めて目撃証言をとったところ、ヒデが事件を起こす直前に、現場の付近で不審な人影が目撃されていたことが判明した。
理流:今まで警察は気づかなかったの?
GM:現行犯逮捕だからね。ヒデが来たか、とは聞いても、他にも人がいたか、とは聞かなかったのさ。そしてこそこそしていたわけではないが、巧妙に人目につかないよう振る舞っていたため、目撃していた人も言われるまでほとんど思い出せなかったらしい。
理流:巧妙に人目につかない振る舞い……ねぇ?
GM:この事実と、CCCを経由して入手したトヨさんを刺した手口を合わせると、一つの事実が浮かび上がってくる。トヨさんを刺したのは、恐らく正式に兵士としての訓練を受けた者だ。
十三:軍隊関係者、か。ヤクザや警察とは少しまた違う展開になってきたな。
乾史:くそ、結局大した情報はつかめなかったか。
十三:そんなことはないさ。実行犯が居たことが判明しただけでも一歩前進だ。


●Middle 05 新宿の女傑 Scene Player 有本理流

  有本理流はやる気になっていた。
  CCCへの正式の依頼となれば、出来ることもまた増える。
  たしかに男の子をスカウトするという任務も楽しいが――。
  悪党をやっつける任務となれば、もう一段気合いも入ろうというのものだ。
 
理流:次ですね。私は清風会についてさらに詳しく調べてみます(ころり)、7。
GM:君は清風会について気になる噂を耳にした。先日の戦闘で君たちに倒されたヤクザ達なんだけど。
乾史:ああ、マサとか用心棒のセンセイだな。
GM:逃げ出した後、『きれいな新宿運動』のバンに収容された彼らだが、その後、実は証拠不十分、乗除酌量の余地ありでお咎めなしとなっていた事が判った。
乾史:はぁ?酔っぱらいとかホームレスを容赦なく捕まえてるくせに、肝心のヤクザは放免かよ?
十三:ヤクザの中でも、清風会だけ、ということか?
GM:清風会だけだね。
理流:なんかすっごく、個人的な命令が出たっぽい気がするぞ~(笑)。
GM:そしてもう一つ。清風会は、人材派遣会社『海鋼馬公司(ハイガンマーコンス)』と強力なコネがあることがわかる。
一同:海鋼馬かぁ~!
乾史:……おっと、俺はこう言わなきゃな。ハイガンなんとかって、なんだ?(笑)
理流:私たちCCCと同じ、特殊な力を持った人間を派遣する会社なんだけど。
十三:そのメンバーは特殊部隊崩れや元傭兵、ゲリラ、犯罪を好む外道の能力者などで構成され、主にヤクザや犯罪組織の用心棒として派遣されることが多い。……もっと単純に言えば「悪の派遣会社」というところか。
GM:そして、さらに次の情報を得ることが出来る。海鋼馬に所属する機械化兵士……戦傷を負った兵士を改造したサイボーグだね……が何人か、新宿近辺の任務に派遣されている模様だ。
乾史:つまりこいつらが、清風会とからんでる、ってことか?
十三:戦闘になった場合、数が多いと少々厄介だな。
理流:実は私たちの能力って、基本的に元のルールをそのまま転用しているから……。
乾史:支援とか庇うとかの能力が無いんだよなあ~(苦笑)。


●Middle 14 エリートの横顔 Scene Player 鷂十三

  手元には続々と集まってくる情報の断片。
  だが、鷂十三はそれらの断片からひとつの『絵』を見いだすことが出来ずにいた。
  清風会、敬天興業、『きれいな新宿運動』。
  それらをつなぐ”要”がどこかにあるはずなのだ。
 
十三:最後は私か……。
理流:正直、今までの情報だと事件については、わかったようなわからないような、って感じなのよね。
乾史:俺も目が低かったしなあ~。
十三:えぇと、『きれいな新宿運動』に関連する土地問題と犯罪組織および彼らとコネのある海鋼馬の動向と、それに対する警察の対応について調べる。
乾史:……それって全部じゃねぇか!(爆笑)
十三:(苦笑)しかし、そのくらいまんべんなく調べないとつながりそうにないのだが。
GM:まんべんなく調べるなら広く浅い回答が得られる。一点に絞るなら同じ目でもより詳細な情報が得られる。
十三:つまりそれは、要点を衝いた上手い質問をしろ、ということだなGM?(笑)
乾史:カネの動き、とか?
理流:警察の動き、じゃない?
十三:……(黙考)……いや。ここは『辰巳署長について』で一点特化で調べるべきと判断する!(ころり)21!
理流:さ、さすが調査系。目が違うわ(笑)。
GM:……その質問はいいところを衝いている。銀行とCCC、表と裏のネットワークを駆使して十三が辰巳の身元を洗い出してゆくと……非常に興味深い事実が判明する。
十三:ほう?
GM:すでに述べたように、辰巳署長は東大を優秀な成績で卒業し、そのままキャリア官僚として警察に入ったのだが。学生時代の彼は、どうも学業そっちのけでアルバイトに熱中していたらしい。
乾史:大学生がバイト?別に珍しくもないじゃないか。
GM:彼のバイト先は『人材派遣会社海鋼馬公司』っていうんだけどね(一同爆笑)。
乾史:わーお!(笑)何やってんだよエリート学生!
GM:彼は裏社会に片足を突っ込んでは、麻薬の売買や人身売買に手を染め、犯罪組織の用心棒なんかも勤めていたようだ。表の顔はエリート学生、裏では犯罪組織を仕切って、かなりの利益を上げていた、ともっぱらの噂だ。
乾史:なんでそんなヤツが警察官になってんだよ!?
GM:「そういう人間が権力の中枢に食い込むってのは”らしい”よな」と、当時の彼は語っていたそうです。
理流:警察も採用試験の際にちゃんと身元調査しなさいよ~!(笑)
GM:もちろんしている。しかし、彼はついに尻尾を出さなかったし、決定的な証拠も残していない。今回十三がCCCのネットワークを駆使して気づくことが出来たが、それを世間に証明することは難しいだろう。
十三:ふむ。犯罪組織の用心棒をしていた、ということは、ただの頭でっかちではないということだな?
GM:うむ。調査で21を振った十三は、辰巳署長の正体にも迫ることが出来まる。彼は常人ではなく、君たちと同じ異能力を持つ者だ。
理流:まさか署長さんがボスキャラとは……。
GM:現役時代の二つ名は『圧電素子(ピエゾ)』。生まれつき電気を操る事が出来る体質の持ち主で、頭の良さとはまた別に、接近戦では凄まじい強さを誇り、その腕は海鋼馬でも一目置かれるほどだったそうだ。
乾史:雷、ってことはブラックドッグのシンドロームだな。
GM:そしてこれは噂だが、辰巳署長は今でも、当時関係のあった犯罪組織や海鋼馬とコネクションがあるようだ。
乾史:ちょい待ち。その犯罪組織ってのに、清風会は含まれているのか?
GM:含まれている。
乾史:……なるほど、連中、グルだったってわけか。
理流:あ、わかった。辰巳署長が銃や麻薬を必ず検挙するっていうのも………。
十三:清風会に事前に用意させて、マッチポンプをやっていたんだろう。となれば、海鋼馬のサイボーグ達を動かしているのも辰巳署長とみて間違いないだろうな。
 
 
十三:さて、これで情報も出そろったようだし、いったん状況を整理しようか。
理流:まず、新宿区の再開発計画が持ち上がって、乾史君達の住み着いている若葉商店街の土地の値段が、将来跳ねあがることになった。
乾史:んで、警察署長の辰巳がその情報を知って、昔から裏でつきあいのある暴力団、清風会にその情報を流し、清風会は今のうちにビルを手に入れて大儲けをしようと企んだ。
理流:清風会は自分の所のチンピラ共を使ってビルに住んでいる子供達を追い払おうとしたが、リーダーである犬神君に阻まれ続けていた。
十三:これとは別に、ビルの持ち主である大里トヨさんは、自分の年齢のこともあって、ビルを売却しようと銀行に持ちかけていた。これを知った清風会が、私の上司である前田を抱き込み、ダミーの不動産会社「敬天興業」を使ってトヨさんからビルを買い取ろうとした。
理流:それに気づいたトヨさんは、途中から売値をつり上げてゴネることで、なんのかんのと時間を稼いでいたわけね。
乾史:ンで、手詰まりになった辰巳のヤロウは「きれいな新宿運動」を起こして、今度はお上の力で俺等を追い出しにかかったわけだ。
理流:でも、それも街の人たちが乾史君達の味方にまわっていたので上手くいかなかった。そこで、ゴネているトヨさんを刺して、その罪をヒデ君にかぶせた……か。
乾史:まとめればこんなとこか。……へっ、つまんねえカラクリだぜっ!
十三:では分析が出来たところで、次に反撃の手段を探るとしよう。
乾史:ンなの決まってんだろ!辰巳のヤロウをぶん殴るんだよ!
十三:落ち着きたまえ犬神君。警察署長となれば当然、普段は警察署にいる。表立って手を出すことは不可能だ。
乾史:じゃあそのハイガンなんとかの連中を全員ぶっつぶせばいいんだろ!?
理流:賛成したいところだけど(笑)、さすがに三人では無理なんだぞっ。ここはなんとか、署長をおびき出したいところよね。
十三:ただ殴って済む話でもない。署長と清風会の癒着の証拠。トヨさん傷害の真犯人が奴らである証拠をつきつけて、署長と清風会を失脚させなければ、いずれにせよあのビルは清風会の手に渡るだろう。
乾史:……そうだな。じゃねえとヒデも無実が証明されねぇし。
十三:とはいえ、現状では証拠不足なのは否めないな。どうしたものか……。
理流:ねぇ、敬天興業の実体は、清風会が作ったダミー会社だったわけよね。だったら清風会か敬天興業のどちらかから、証言が得られないかしら。
十三:ふむ。確かに連中から情報を聞き出してしまうのが一番早いだろうな。何しろ交渉ごとは私の領分だ。
理流:さすがプロなんだぞっ(笑)。
乾史:なんのプロだか知らねぇが(笑)、そうと決まれば簡単だ。ビルの周りを清風会の連中がうろついているから、そいつらをとっちめて吐かせればいい。

●Middle 15 反撃の狼煙 Scene Player 鷂十三

  十三達が若葉通り商店街に戻ると、果たしてビルの前に、清風会の構成員がたむろしていた。
 
GM:「へっへっへ、ガキどものいなくなって、ついにこのボロビルが俺達のものになるってわけっすねえ~」「往来ででかい声を出すな」等といった会話が聞こえる。
乾史:ちっくしょう、好き放題言いやがって、といいつつ物陰から駆け出そうとする。
十三:では、それをたしなめめつつ前に出て、清風会の方々に話しかけよう。すみません、清風会の方々とお見受けしますが。
GM:「あぁ?」「何だオメェは」とすごむけど。
十三:ここで《錯覚の香り》を使用。符を彼らの前にかざし、瞬間的に催眠術をかけるという演出で【交渉】判定。(ころり)20だ。
GM:そんなん抵抗出来るわけがない(笑)。「俺達を清風会と知って……むにゃむにゃ」全員の眼が焦点を失い、催眠状態に入る。
十三:では彼らを物陰に連れ込んで、と。さあ、尋問タイムだ。
乾史:辰巳はどこにいるっ!?
理流:落ち着いて乾史君。いるのは警察署よ(笑)。
GM:「辰巳……署長……ああ……面倒なんだよなあ……」
十三:ほぅ、面倒。何が面倒なのだね?
GM:「バアさんを刺したのをガキに押しつけるのは……うまくいったから……またあの人に……金を払わないと……仕事が増える……」
理流:お金の受け渡しはどうしているの?
GM:「あの人は……スタイルにこだわるからなあ……振込とか小切手は嫌がるんだ……面倒くさいなあ……」
十三:つまりは、直に受け渡しをするということか。
乾史:辰巳の野郎が次に取引をするのはどこでい!?
GM:「きっと……いつもの場所だ……。東京湾沿いの倉庫に……ちょうどそれっぽい雰囲気の倉庫があるんだ……また、ウチのオヤジとあの人と、お互いの兵隊を引き連れて……スーツ着なきゃな……面倒くせぇ……」
理流:……ああ、ようやく署長さんの行動パターンが理解できた。ようするに署長さんって、「カッコいい悪役をやりたがる人」なわけね。
十三:取引の日時はいつだ?
 
「今夜……だよ……」
  そこまで聞けばもう用はない。発言の内容を録音すると、十三が術を使って男を昏倒させる。今度目が覚めたときは、自分が何をしゃべったかも思い出せないだろう。
 
理流:ヤクザがたくさん、それに元エージェントの署長さんに、海鋼馬の連中かー。
十三:我々三人では、やや数に難があるかな?
乾史:へっ、面白ぇ。こうなったらとことん、やってやるぜ!
理流:そうね。私も悪を見逃す理由はないんだぞっ。
十三:決まりかな。ではクライマックスに向けて……おっと失礼、私はロイス枠が一枠余っていたのでここで結んでおこう(笑)。
理流:あれ、まだ埋まってないの?
十三:初期ロイス三つ、PCロイス、シナリオロイスのトヨさん、有本君だな。
乾史:じゃあ、ヒデとか?
十三:実はヒデ君とはほとんど面識がなかった。
理流:十三さんはずっとトヨさんと行動してたしね。
乾史:いや待て!そうだ、じゅうぞうには上司の前田さんがいるじゃないか!(一同爆笑)
十三:うわー、どう考えてもタイタスにして切る以外の選択肢がない(笑)。清々しいほどの無能さに、感服/侮蔑で取っておく(笑)。
GM:……準備はOKかな。ではこれよりクライマックスシーンだ。導入に際しては、DXリプレイの書式にならって小説形式で盛り上げてみようかと思います。
一同:了解~。

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