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人災派遣RPGリプレイ06話『洋灰の雨に茉莉花散る』10

●五日目

GM:お久しぶりでございます……。

一同:お久しぶりです~。

GM:四ヶ月も空いてしまって申し訳ないです、ホントに。

天美:仕方ないですよ……。


 この時期、世間ではコロナウィルスの感染が急拡大し、世界のあらゆる部門で混乱が見られた。GMやプレイヤーのリアル職場でも、仕事がストップしたり、あるいはそのしわ寄せで凄まじく多忙になったりと大変だったのである。


GM:いやー、実は、ICSSSAのシナリオで、新型SARSウィルスの感染者を空港や港で阻止するというネタを温めていたのですが、完全にお蔵入りになりました(苦笑)。

秀史:仕方ないですね(笑)。

GM:空港や港を駆け回ってブロックするけど、遊びたい若者が検査待ちを我慢できず脱走するとか、感染がバレると仕事を休まないといけない会社員が嘘をつく、とかのイベントを考えていました。

紗綾:奇しくも実際にありましたね……。

GM:ではイニシアをお願いします。ここからは『箱入りジャック』も行動する!

●ボーナスアクション

GM:前回お伝えしたように、早めに工場に到着したボーナスで、治療か調査ができる。

カヤカ:おれは合間合間で治療してたのと、紗綾さんがサソリ相手を引き受けてくれたおかげで実は結構余裕ある。みんなは?

天美:ぜんぜんないですね!治療に専念したいです。


 相談の結果、多少余力のあるカヤカと、天美の治療で回復した秀史が、残る『海鋼馬エージェントについて』の調査を行い、他のメンバーは回復に努めることとした。


天美:ふぅ。これでだいぶマシになりました。

紗綾:HPはともかくSPが危なかったですう。

GM:実はみんな、ほとんどHPにダメージ受けてないんですよね。

秀史:HPにダメージを受けないよう、他のリソースを使いまくってる感じだな。

カヤカ:バイクとかな(一同笑)。

天美:ややこしくなってきたんで一旦状況を整理しましょう。


 ・茉莉花セメントを占拠したメルジャヒ人労働者。でもその真の目的は賃上げではなく、故郷を開発事業で洪水に巻き込んだ上遠野一族への復讐だった。

 ・復讐の方法は、ダムを破壊して工場ごと水没させること。

 ・でも開発は、上遠野さんと某国、メルジャヒ人達当人の意志によるもの。上遠野さんはその後も支援に尽力しており、客観的には逆恨みとしか思えない。

 ・メルジャヒ人たちを唆したのは以前敵対した『リベンジ騎士団』と思われる。

 ・でも、実際に出てきた敵は海鋼馬のエース四人。国家レベルのエージェントを四人も、誰が雇ったの?

 ・ジャックの言い分ではまだ判明していないクライアントからの指令を受けている?

 ・メルジャヒ人たちは交渉を呼びかけながら、交渉団を海鋼馬のエージェントに妨害させている。

 ・でも、海鋼馬のエージェントたちは人質という絶対の切り札を持っていながら、「帰れ」ではなく「登ってこい」と言っている。

 ・「嘘つきは水に流され、かすめ取るものには星が落ちる」という伝説になぞらえている?


カヤカ:判定項目だいたいクリアしたのに。

紗綾:結局、まだ何も分かっていないんですよね。

秀史:仮説くらいは出せそうだが。

カヤカ:とにかく調査をすすめるぜ。残る『海鋼馬エージェントについて』でビジネス判定。(ころころ)8、ギリ1段階クリア。さすがにこれ以上は狙えないな。

秀史:では続いて俺が。(ころころ)11。これであと2段階だが、ここはLPを(ころころ)2点使って16!残り1段階!

一同:おおー。

GM:では、情報を開示しましょう!君たちは、事前にCCC調査部門に依頼していた内容ももとに情報をまとめていく。第一段階。結論として、海鋼馬メンバーの雇い主がわかったよ。

天美:おー。

GM:このエース四人を雇ったのは。正体不明、小規模、ならず者と三拍子揃った派遣会社『リベンジ騎士団』だ!

秀史:CSG47。ここまでは推測のとおりだな。

カヤカ:社名より忠臣蔵47の方が記憶にある(苦笑)。

紗綾:って、ここまでやらかす復讐の相手は誰なんです?不条理な社会システムとか、キミがいないセカイとかそういう系?

秀史:だとしたら、異能力者版の『無敵の人』だな。迷惑極まりない。

天美:むしろ恨み買ってるの我々ではありますが。

GM:「派遣会社が別の派遣会社に仕事を委託する」というのは業界ではままあることですが、『リベンジ騎士団』のような零細が、『海鋼馬』のような大手に委託するというのはかなり珍しい。報酬もべらぼうな額が必要となるはずだ。

紗綾:普通、大手がやりたくない仕事を中小に投げることはあっても、逆はないですからね。

GM:これらから推測するに、『リベンジ騎士団』は採算度外視のとんでもない赤字になっているはずだ。謎の派遣会社とはいえ、経営が傾くレベルの支離滅裂の行動、というのが君たちの分析だ。つまり、この任務は彼らにとって通常業務ではなく、社運をかけるような一大プロジェクトと考えられる。

チシャ猫:そこまで恨まれてたの!?

カヤカ:いや、さすがにワンミッションでそこまで恨まれてたらたまらねえよ。

天美:復讐代行業者が復讐代行依頼するとか哀しすぎる。

紗綾:って、「『リベンジ騎士団』が黒幕っぽいけど動機は謎」のままですぅ(苦笑)。


GM:続いて第二段階。『箱入りジャック』の能力の詳細がわかる。彼は戦闘においては、ゴーレムを使役して戦う。解析完了により。ジャック本人と、ゴーレムたちへの攻撃時、命中に+1Dのボーナスがつくようになった。

天美:助かります〜。

紗綾:『ぬぅ、傀儡使いか、姑息な』

チシャ猫:紗綾さんは傀儡使われやん(笑)。

天美:最近は紗綾さん自身も割と人間離れしてるから。

カヤカ:フォローになってねえ。

GM:そして、ゴーレムも凡庸のものではない。海鋼馬が開発したドロイドに、魔術を込めた泥をまとわせることで、人間のように俊敏に動き、機械のように頑丈なスペシャルゴーレムを生み出すとのことだ。

秀史:厄介だな!

GM:そして最後。ジャックのゴーレムは「スラッシャー」「シューター」「ガード」に分かれている。

天美:三体……。面倒ですね。

GM:「スラッシャー」は高威力打撃を1ターン2回、シューターは射撃を範囲攻撃してくる。そして、「ガード」はジャックをかばう。こいつを倒さない限り、ジャックには攻撃が通らないと考えていいだろう。

カヤカ:なんかゆるキャラゴーレムの時を思い出してきたぞ(笑)。

GM:続いてボーナス。ジャックは「セキュリティシステム」を2回使用できるのですが、チシャさんが妨害コードを解析したとして、1回に減りました。

チシャ猫:実質20点削ったことになるんだにゃ。


●ファストアクション

敵の情報が開示され、このラウンドのイニシアは以下の通りとなった。

交渉団:(最速) 秀史:20 『魔弾』:18(行動不能)
『箱入りジャック』16 『ゴーレムスラッシャー』12
『ゴーレムシューター』12 紗綾:10 カヤカ:9
天美:9 チシャ猫:9 『ゴーレムガード』8

GM:続いて、ファストアクションお願いします。

天美:交渉団は最初に行動していいんですよね?では、工場エリアに移動。

GM:はい。では途中、悪路のため車を降り、依頼人含めた一同は工場へ登っていくのであった。

紗綾:私もファストアクションで移動。交渉団を護衛して同行するという態です。

カヤカ:んじゃ、おれが工場の裏門で出迎え。

秀史:我々も工場に向かおう。天美さんを載せて『高速移動』、工場エリアに到着。

チシャ猫:チシャは動かないにゃー。

GM:了解。では、交渉団と実働部隊は工場に全員集合。それをチシャさんがバックアップという形になります。役者も揃って、ここからクライマックスだ!

一同:おらーこいやー!!(笑)


人災派遣リプレイ0605


●メインアクション

 護衛の紗綾と、先行してたカヤカの先導により、交渉団はようやく茉莉花セメントの工場裏門に到着。逆周りで山を登った秀史、天美も到着しており、ついに一同は合流することができた。

 そこで待ち構えていたのは『箱入りジャック』だった。

 「ヨーホーホー!ようこそおいでくださいました、茉莉花ホールディングス交渉団の皆様!私、『箱入りジャック』と申します。さささ、交渉団の皆様はこちらに。メルジャヒ人労働者の皆さまがテーブルでお待ちしていますよ」


GM:そういうと、門を開けて『交渉団のみ』を工場内に通す。

カヤカ:「よし、じゃあ行くか」一般人ヅラして潜りこむ(笑)。

秀史:「やめとけカヤカ。俺たちを通さないのも向こうの依頼主の注文だ」

カヤカ:「まあ半分冗談。面が割れてるからな。でもなんとか入れないかな?」

天美:「相手が魔術師では、私の『妖精』も見抜かれてしまうわね」

チシャ猫:「電波にも干渉してくるからチシャのぬいぐるみもバレそうにゃね」

GM:と、そこで「ああっといけない。そこの塀の上に、依頼人の息子さんが!」

カヤカ:「げ」

GM:言うと、工場の門から少し離れたところの弊の上から、首にロープをつけられたままの依頼人が立たされて、バランスを崩して足を踏み外そうと……。

カヤカ:「ん、な——あークソッ、わーかーりーまーしーたー!」

GM:今ダッシュで助ければ間に合う。判定は不要。

カヤカ:ダッシュするんだよなあ!罠だとしても動かないとどうしようもない!

一同:さすカヤ!

GM:依頼人の息子、恭輔氏が足を踏み外してズルっと落下する直前に、君は受け止めた。

カヤカ:「あっぶな!確保!」

天美:「偉いわ、カヤカ君!」

GM:「ホホホ、これで約束通り、依頼人のご子息は無事にお返ししましたよ」その間に交渉団は中に通され、門は閉ざされてしまった。

紗綾:罠の可能性は?実は人形で爆発するとか。

チシャ猫:人質に爆弾がくくりつけられているとか。

GM:君たちの警戒はもっともだ。だが、衰弱しているが、どうやら息子氏本人に間違いないようだ。罠の類もない。

天美:とりあえず心肺呼吸を確認して応急処置。

GM:「おおっと、そこまでですなあCCCの準エースの皆さん!」こちらも門の外に残った『箱入りジャック』。

秀史:どの道我々が奴らと戦って勝たないと、ダムの崩壊に巻き込まれて死ぬがな。

天美:「いちいち準をつけるのが鬱陶しいわね」

チシャ猫:「準エース準エースうるさいんだにゃー、チシャ達はチシャ達なんだにゃん。またの名を、カヤカと愉快な仲間たち」

カヤカ:「はいそこおれをオチにしない」

GM:「『小空母』『双尾蠍』の撃破、見事でした。シグマの脳筋だけでは物足りなかったのですが、君たちであれば不足はない。我々も零細企業の委託業務などというつまらん仕事に乗った甲斐があった。この『箱入りジャック』、久しぶりに滾ってまいりましたぞ!ハハハッハハハツ!!」

天美:「買い被り過ぎよ。ウチにはもっと上のランカーが幾らでもいるんですけど?それとも、私達程度じゃなければ勝つ自信がなかったのかしら?」

チシャ猫:「(ヒソヒソ)天美さんってやっぱおじさんの娘さんって感じするにゃよね」

秀史:「(ヒソヒソ)梟雄らしさがな」

チシャ猫:「(ヒソヒソ)アレ、かなり怒ってるんだろうにゃぁ」

GM:「エージェントには旬がありますからな。なまじエースになんてなってしまうと、あっという間に後輩のお守りやら書類仕事で忙殺されて、なかなか全力勝負が難しいのですよ」

カヤカ:「まさか本当に全力勝負がしたいだけで仕事受けたってことか?」

紗綾:要するに、誰も相手にしてもらえなくて寂しかったから理由をかこつけてかまって欲しい?

カヤカ:大迷惑かまってちゃん。

秀史:「俺たちをここまで引っ張って戦って勝て、までが依頼主の注文なんだろう?」

GM:それには答えず、ジャックが合図すると、塀の向こうから、ドロイドが三体飛び出してくる!「ここで、これをこうして……」と何やら呪文を唱えると、地面から湧き出た泥がまとわりついて、サイボーグめいたゴーレムが生まれるのであった!事前情報の通り、「スラッシャー」「シューター」「ガード」だね。

天美:魔弾は今回含めてあと2ラウンド行動不能。それまでに仕留めたいですね。ちなみにGM、質問ふたつ。

GM:はいどうぞ。

天美:いち。戦闘の趨勢は交渉の結果や、交渉団の安否に関係する?

GM:しない!

天美:に。今から戦闘を離脱するなり突破するなりして、交渉団のところに駆けつけることはできる?

GM:できない!チシャさんはわかるが、動画では交渉団が工場内に到着したところが大々的に中継されている。君たちも、逆に言えばジャックたちも、異能力者が乱入することはもう不可能と思われる。

天美:了解です。とりあえず目の前の戦闘に集中しろ、と。

カヤカ:逆に言えば、注目は交渉団の方に行ってるからカメラは気にしなくていいってことだよな。「さっさとぶっ倒してあっちに追いつかないとな」

天美:「猫さん、状況は逐一伝えて頂戴。いざとなったら、突入します!」

チシャ猫:「まぁライブに異常があったらすぐ伝えるにゃよー」

天美:おっと、このエリアのトラップの内容はどんなです?

GM:罠はない。ミッション『箱入りジャックを倒せ!』以上!

紗綾:わかりやすぅい(笑)。

GM:そして、宣言しちゃいますが、この箱入りジャック戦の勝利をもって今回のミッションは終了です。色々もやもやはあると思いますが、隠しボスがいるとかはありません。リソースを出し惜しみをせず頑張ってください!!

カヤカ:おーしやったるか!


●秀史のターン


秀史:事前の調査結果によると、『シューター』が大火力、範囲攻撃、HPは少なめだそうなので、まずこいつを潰すべきかな。

カヤカ:混雑度3かあ。山奥なんだけど、カメラも近くで回ってるししゃあねえか。

GM:こちらは固定値なので、15以上で命中確定です。

秀史:では「シューター」を殴ります。『アサシネート(覚醒)』+『暗器使い』+『スティング』+『隠形術(覚醒)』+『壁走り』
で(ころころ)命中50。

GM:ほげぇ!完全失敗です。ダメージどうぞ。

秀史:まず通常ダメージ(ころころ)9点。

GM:これはGPで弾いた。

天美:割と硬い。けど、シタナガさんの本領はここから!

秀史:本命、貫通ダメージ12Dで(ころころ)39!

GM:君の攻撃は、内部の骨格にはいたらなかったが、そこにまとわりついている泥の肉を大量にこそぎ落とした!大ダメージは入っているが、まだ生きている!

秀史:速攻!なにかされる前にこのターンで黙らせる。先程のコンボから『壁走り』を抜いて(ころころ)57!

GM:だからこっちは15固定だと(笑)。

秀史:ダメージ。物理ダメージ、は弾かれて、貫通ダメージが(ころころ) 45!

天美:さっきより大きい!

チシャ猫:エグい。

GM:んんーんー、『シューター』は倒れました!

紗綾:おおー!

GM:ちっ、全員にエリア攻撃をしたかったのに。

秀史:それを恐れたからこその全力だ。残りSP3点。治療してもらった分を使い切った(苦笑)。


●『魔弾』のターン

GM:続いてイニシア18の『魔弾』。行動不能2回め、何もできず。

カヤカ:おやすみ!

天美:ずっと寝てて!

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