人災派遣RPGリプレイ最終話『仇星、闇を駆ける時』14
●エネミーのターン
GM:さてイニシア15。管制塔の『共工』兵士たちは撤退していくため、攻撃はなし。
柳沢:おや、ミッションは成功、ゲームは終了したはずでは?(笑)
GM:(笑)カヤカはステーションの窓から、遠ざかる復讐神をみやる。しかし。『AAA……A……GYAAAAAAAAM!!シナヌ、ホロビヌ!ワレハ、ヒトノモトメシモノ!』声すら届かぬはずの宇宙空間に、そんな思念が響き渡る。
カヤカ:「は?まだ動けんのアイツ!?」
GM:『ヒトガワレヲモトメルカギリ、ワレモマタ、フメツ!!欠片トナリテモ、イズレ、マタ、チカラヲタクワエ!!ヒトノノゾミヲカナエルデアロウ!!』
紗綾:『やかましいわ、神の時代はもう終わったんじゃ、とっとと舞台から降りるが良い!』
GM:すると、復讐神はステーションの破片を叩いた反動で軌道を変え、地球への進路を取り、球体を形成する……。
カヤカ:大気圏を生身で突破する気かよ。
GM:この一大復讐劇と君たちとの戦いで、リソースを使い切り、知性すらも退化した復讐の神だが、欠片の一つでも燃え尽きず地上に辿り着くことができれば、植物のように、いずれまた長い時をかけて、力を蓄えるのかもしれない。
紗綾:ミッションとしてはクリア、でもこのままだと元凶を取り逃がす、と。
GM:嗚呼、このまま邪悪の禍根は残ってしまうのであろうか、てところで(笑)。
秀史:「宇宙ステーションから分離したな?」
チシャ猫:「二君、最後のデータそっちにおくるわよ!」
柳沢:うーん、やる気満々だね(苦笑)。
秀史:実は被ダメージ抜きで250点はかなり怪しい。
GM:続いて、砂浜に居る兵士たちは、まだ停戦の報が届かないのか、君に銃口を向ける!……彼らに停戦したことを告げれば回避できますが、喰らいます?(笑)
秀史:はい(笑)。
一同:ですよねー!
GM:それでは砂浜の兵士の銃撃三回!命中判定(ころころころり)27、27、29。
秀史:雨だから回避もペナルティありますよね。『隠形術』の覚醒で……(ころころころり)通常成功、通常成功、完全成功。
紗綾:(GMの渡した切り札を読む)ええと、このターンに敵から受けたダメージの四倍を奥義に載せられるんですよね。
カヤカ:死なないくらいにたくさん食らうのが丁度いいと。
GM:ダメージ!29、21!
カヤカ:通常成功だから半減して21か。意外と大したことないな?
秀史:GPを適用しないというのはアリでしょうか?(笑)
GM:ありとしましょう!(一同笑)
秀史:ありがとうございます!これで35ダメージ。
柳沢:……撃墜は確実っぽいぞ。
カヤカ:ひえぇ。
●秀史のターン
柳沢:おじさんはパス。兵士達は撤退したし、ミッションクリアしてるしね(笑)。
紗綾:同じく。腕をもう一、二本斬りたかったですが(苦笑)。
GM:では、乾坤一擲、運命の一投をどうぞ!
秀史:『ロングショット』+『アサシネート』(覚醒)+『暗器使い』+『スティング』+『隠形術』(覚醒)+『壁走り』+『殺意の衝動』!
紗綾:破壊神は防御しないから、届きさえすればダメージですぅ。
一同:どきどき。
秀史:まず通常ダメージ、2D6+2で(ころころ)……あ!
柳沢:おおっと!ファンブル!!
紗綾:こ、ここで!
チシャ猫:ぎゃー!ヤシマ作戦って言っちゃうから!(一同笑)
秀史:これは恥ずかしい、本当ごめんなさい。事前にLP乗せとくんだった。
GM:ええっと、ダメージダイスでファンブルでも属性ダメージは乗るっけ?
柳沢:(確認)……うん、属性ダメージは通常ダメージがファンブルでも関係なく入る。ついでに属性ダメージは全部1でもダメージ発生。
GM:では残された属性ダメージで勝負ということで。
柳沢:いやあまさか最後の最後にルールブックを確認することになるとは(苦笑)。
秀史:出血が9D、ここでLPを最大まで乗せて+4D。かつ『殺意の衝動』でダイス目を4、5、6とみなして判定!13D+39+銃撃のカウンター+35で(ころころ)……106!
カヤカ:ひえ。
チシャ猫:たかあい。
紗綾:4倍してこれ?
GM:いや、4倍はこれからです(笑)。……トータル、424!(一同爆笑)
カヤカ:十分な威力ゥ!!
チシャ猫:(爆笑)
紗綾:恐ろしい値が出た……。
柳沢:ティウンティウン。……いやー、バカだなー!(笑)
『共工』部隊の放った銃弾が、二秀史の胴に着弾する。
火薬で加速された鉛玉の衝撃が、防弾繊維ごしに体内にめり込む。
深刻なダメージ。
――だが、それは”貴重な推進剤”でもある。
着弾と同時に、空にひときわ大きく雷鳴が轟き、南海の島全域を白く染め上げる。
「目は盲いたが不要。耳も聾だが不要」
刹那。
秀史の無意識は、弛緩しきっていた全身の筋肉を同時に駆動させ、躯体の破損を意に介さず、瞬時にゼロからトップギアに叩き込む。
銃弾が己を吹き飛ばす力。
全筋肉の収縮。
すべてを集約し、左脚を軸に円の動きで絡め取り。
「唯、神を屠る……!」
虚空に向けて、手裏剣を投げ放っていた。
その手を離れた手裏剣は、虚空へ向けて飛ぶ。
落雷の後に生じる電磁誘導の渦に乗り、まさに天に吸い込まれるかの如く。
風に舞い、音速の壁を突き破るのではなく、潜るようになめらかに突破。
大気の層を縫い、温度差の隙間を滑り、減速するどころか徐々に加速してゆく。
一枚。二枚。三枚。音の壁をくぐり抜けてゆく。
上昇、上昇。
大気圏突入の真逆。
蓄積する摩擦熱を受け、手裏剣は加熱し、白熱化し。
液化し、気化し。……ついにその物理的な姿を失う。
だが。
気化しても加速はなおやまず。
鉄の塊は、ついにはプラズマの領域へと到達する……!
カヤカ:プラズマスリケン(真顔)。
柳沢:想定外のことが起きている。
紗綾:もう何でもありですぅ。
GM:ちなみに手裏剣の崩壊は物理ファンブルの演出です(笑)。
秀史:なんてかっこいいファンブル(笑)。
GM:……虚空の暗闇の中、カヤカは宇宙ステーションの窓から地球に向けて落下してゆく復讐神を見送る。呪詛を撒き散らしながら、母なる地球へと落ちてゆく、そのおぞましい姿―――。
カヤカ:「くっそ、逃がしちまう。どうにか……、……ん?」
GM:『GYAHAHAHAHA!!ヒトアルカギリ、ワレモマタアリ、ワレアルカギリ、フクシュウハ――――A!?』
カヤカ:「何か、光った……?」
GM:一閃。地球から遡った流星が、その額を貫いていた。
秀史:「もう眠れ。――パロカの母親は復讐だけを願ったわけじゃないはずだ」
GM:……復讐神の頭部に孔が穿たれ、そこから亀裂が走っていく。亀裂は急速に拡大し……砕け散った。
呪詛ではなく。
今度こそ絶命の絶叫を上げて。
古き神の破片は大気圏に飲み込まれ、燃え落ちてゆく。
人の世に蘇ったいにしえの復讐の絡繰は、今ここに、完全に消滅したのであった。
柳沢:「……終わった、ようだね」
GM:同時に、管制塔を攻撃していた復讐神の胴体も、その動きを止める。
紗綾:あ、なんか気配がなくなったですぅ。
GM:そして、『そんな巨体を木材で構成できるはずがない』という物理法則を今更思い出したかのように、がらんがらんと崩れ落ちてゆくのであった……。
虚空に砕け散った神の頭部が、破片となり重力に惹かれ燃え尽きてゆく。
管制塔の面々は、日が落ちてゆく北の夜空に。
二秀史は、雷雲に穿たれた孔の向こうに。
居垣カヤカは宇宙ステーションの窓のはるか下方に。
呪いを浄化するように輝き降り注ぐ、流星の群れを目にするのであった。
GM: …………お疲れ様でした!これにてミッション、後顧の憂いも断ってパーフェクトコンプリートです!
一同:お疲れ様でしたー!!
●エンディング
秀史:「終わった、か……」(バタンキュー)
カヤカ:「終わったぁぁ……」最後にとんでもないものを見たのでとても脱力。
紗綾:プラズマスリケンに全て持って行かれたですぅ。
GM:正直もう一ラウンドくらいかかって、ギリギリまでボロボロになりつつシタナガさんが頭部撃墜、紗綾さんが腕をあと2本くらい斬って、カヤカくんの判定が達してフィニッシュ、くらいを想定してしました。
柳沢:しかし、結局アダシが復活した経緯は明確にはなってなかった気がするねえ。
GM:……君たちは仕事を終えて、撤収準備に入る。実際にはC国が管制塔を再度支配下に置き、安全を確保した後、MBSが用意した船で、パロカや小菅さんとともに島を船で脱出ということになる。そのタイミングで彼女らと話すことが出来るよ。
カヤカ:かえしてーかえしてー(笑)。
GM:っと、カヤカくんが帰ってきてねえ!(一同爆笑)
柳沢:次の補給船が打ち上げられるまで滞在?
秀史:しばらく宇宙で生活してもいいのでは?(笑)
カヤカ:政治的に面倒なことになるだろそれ!
紗綾:バイクに乗って自力で大気圏突入とか(笑)。
秀史:「安全装置ヨシ!」……やっぱり現場猫だ。
GM:では。『ジャージ!帰りの門をつなぐアル!タイミング間違えたら次の補給船が来るまで待機アルよ!』と次元の歪みがみょーん、と。
カヤカ:「よっしゃー帰れるーッ!」
ゲートを潜り、ふたたび管制塔にまろびでたカヤカ。
ほんの数時間宇宙に滞在したという事実を、説明しても誰も信じないだろう。
紗綾:「カヤカさんお帰りですぅ」
柳沢:「おかえり、ごくろうさん。カヤカ君」
チシャ猫:「カヤカ、よくやったんだにゃ」
秀史:「無事で何よりだ」
カヤカ:「お、おお。素直に労わられてんな……さんきゅ」
チシャ猫:「チシャだって褒める時は褒めるんだにゃー」
カヤカ:「そっちもお疲れさん!もうさっさと帰ろうぜー!めっちゃ腹減ったしなんかフラフラするんだよ」
秀史:「間違って誤射したかと……いやなんでもない」(笑)
チシャ猫:「……笑えない冗談なんだにゃ」
カヤカ:「今なんか聞き逃せないこと言ったな!?てかあれやっぱり二サンかよ」
チシャ猫:「っていうかシタナガ君血だらけじゃない!?それ大丈夫なの!?」
秀史:「まぁこれくらい大したことな……」(倒れる)
柳沢:「あれだけ常識外れのことをやったんだ、そりゃ反動もくるだろうさ」
チシャ猫:「ちょ、柳沢さんそんな冷静にっ!!」……紗綾さんも返り血だらけだろうけど心配しない(笑)。
柳沢:「なぁに、CCCの若手なんてみんな仕事の後は包帯ぐるぐるでベッドの上が普通さ」……回復してるけど今回一番ダメージ喰らったのおじさんだからね?(笑)
紗綾:「た、大変ですぅ、あ、そうだ、これを食べればきっとよくなりますです!」(担々麺を取り出す)
カヤカ:「腹減ってるけどそれは口にしたくない」(真顔)
GM:ゲーム的には『昏倒』なので、銃弾のダメージに加えて自分の技の反動で体はズタズタ、スパコン並みの弾道計算をやってのけた脳みそはしばらくあっぱらぱーという感じです(笑)。
秀史:「おほしさまってこんなきれいだったんだー」(爆笑)
一同:カ○ーユ化しとるーっ!?
カヤカ:「二サァァアアン!!!」
秀史:「わーきらきらー」(笑)
ボロボロになりながらも合流した一同。
混乱が収集したタイミングで、『大賢良師』の手回しによりC国の船に乗り込み帰国する事となった。
GM:出向を待つ間、『機材トラブルにより宇宙ステーションの一部が崩壊し、あわや落下事故になりかねなかった』というニュースを耳にする。C国の威信が失墜するほどではなかったが、そのメンツと、諸外国からの信頼は大きく後退し……他国はここぞとばかりに、軌道エレベーターの開発は諸国の合議制で行うべきだという声明を出す。いち早く宇宙の覇権を握り今後の世界を主導していくという野望は、見直しを余儀なくされることとなった。この管制塔を建築した際の悲劇について、復讐はならずとも……報いは受けたのかもしれない。
カヤカ:「ニュースの当人になるのって不思議な気持ちだよなあ」
秀史:「りゅうさんすごーい(最初から最後まで『共工』の掌の上だったな)」
チシャ猫:後遺症が……(笑)。
柳沢:「なに、奴からしてみれば威信を完全に失墜させるつもりで渾身のリソースをつぎ込んだにもかかわらずこの程度の結果しか出せなかったのだから、大失敗というところだろうさ」
GM:船室には、保護されたパロカと、意識を取り戻した小菅さんも収容される。
柳沢:……小菅さんに経緯を聞いておきたいね。
チシャ猫:ですにゃぁ。
GM:小菅さんは「長い夢を見ていたようです」と頭を振る。どうやらアダシに取り憑かれていた間の記憶もあるらしい。
紗綾:ということはアダシの知識を持って今後はうははーな生活をっ!?
チシャ猫:魔術師とかならともかく、古代からずっと眠ってた邪神の記憶とか、もらっても全然使えなさそうなんだにゃ―。
柳沢:「聞かせてくれますかな? あの時、あの場所で、何があったのか」
小菅女史は語る。
いわく、あの洪水の日、崖の上の洞窟に避難した彼女とメルジャヒの人々は、仏像のようなものを発見。まさしく藁にもすがる思いで助けを祈ったのだという。
だが、聞こえた神の声は救いをもたらすものではなく。復讐神アダシと名乗り、人々の命と引換えに、日本の会社とC国への復讐を遂げることのみを約束したのだという。
そして、復讐の見届人として、一人の命だけは助ける、と。
カヤカ:「うっへぇ」
秀史:「かみさまはーかみさまなんだねー(復讐神はそんなものか)」
柳沢:「それがパロカで……。貴女はアダシの化身となった、と」
GM:すべての命が失われるか、一人の命を助けるか。人々は選択を決め、己の血を捧げた。動き出した仏像の槍は、最後に残っていた小菅さんの体を貫き、体内に寄生し……あとは君たちの知ってのとおりだ。
柳沢:「……パロカの命を救うために、復讐を強制したようなものじゃないか」
GM:「最初にアダシを呼び覚ましたほどの強い恨みの念が人々にあったのは間違いありません、私の中でずっと渦巻いていましたから」と小菅さん。「それでも……彼らの選択が間違っていたとは、私は言いたくない、のです……多くの人々が不幸になったことを知っていても……」
柳沢:「結局のところ、彼らの恨みは、洪水を引き起こすような強引な開発を行った茉莉花グループとC国へのものだったのかな?」
GM:「理屈で考えれば、そのはずです。でも、開発に賛成していたのは彼ら自身でもあります。だから……。筋道の通っていない怒りだということも、どこかにあったのかも、しれません。人々の思いはずっと、復讐の念だけではなく。後悔の思いも、渦巻いていました」
秀史:「ぱろかがいきてるよー(パロカに生きて欲しかった思いを誰も否定できないだろう)」
カヤカ:シタナガさんが字幕で良いこと言ってる(笑)。
GM:するとそこに、パロカが声を上げる。
柳沢:お?
GM:「星が落ちたよ」
カヤカ:「……そう。それ、最後までわっかんなかったんだよなあ。悪いやつには星が落ちる、んだろ?」
GM:「みんなの願いが果たされたんだよ。悪い人にはきっと罰があたったんだよ」
柳沢:どういうこと?ちょっと怖い(笑)。
GM:さっき君たちが見た流星のことのようだね。
紗綾:アダシの破片が大気圏に突入したあれのことですね。
「だから、もう……」
出会ってから、ずっと微笑んでいた少女は。
「お母さんたちも、自由になれたんだよね」
そういうと、ようやく。
泣き始めたのであった。
紗綾:「よしよし、もう大丈夫ですよー」
柳沢:「……一番"悪かった"のは、自らの業を遂げるために、人々の窮状を利用したアダシ、だったのかもしれないね」
カヤカ:「復讐とか、後悔とか。全部星になって燃え尽きちまってればいいんだけどな」
秀史:(熟睡中)
GM:破片はすべて燃え尽きた。気配も完全に消えている。太古の眠りから目覚めた、無限に成長する悪意のプログラムは、君達の手によって粉砕されたのであった。
※
GM:日本の領海に近づくと、藤村くんからの通常通信が入る。『お疲れさまでした、皆さん!』
柳沢:「やあ、藤やん。こちらは万事解決したよ」
GM:「東京についたら、怪我の治療と、帝国ホテルのスイートでの万全の睡眠と食事をご用意しています。ゆっくり体を休めてください!」
カヤカ:「ぃよっしゃァ!」
紗綾:「やったー!おいしいご飯ですぅー!」
カヤカ:「ついでに仕事も休みたいけど、全部吹っ飛ばしたから近いうちに仕事しねえとなー」
GM:「任務達成のお祝いと、新たなるA級エージェント、『竜殺し』にして『神殺し』の誕生祝いを!皆さん、過酷な戦い本当にご苦労さまでした!」
柳沢:「はぁ、余計な肩書が着いちゃったか。ますます仕事がやりにくくなるなあ」
チシャ猫:「必要ない二つ名なんだにゃー」
秀史:「Zzz……くらえー弑神ー」