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CCCリプレイ外伝『クリーンナップ・クリアランス』02

●Middle 01 子犬を拾った狂犬 Scene Player 犬神乾史

  新宿の警察署から解放された乾史は、足早にねぐらに戻ってきた。
  若葉通り商店街にある廃ビル。入り口では舎弟の一人であるサブロウが、心配そうに乾史の帰りを待ちわびていた。
 
GM:さて、ここからはミドルフェイズだ。シーンプレーヤーは乾史で、場所は若葉通り商店街にある廃ビル前。君がねぐらに帰り着くと、入り口前に舎弟のサブロウ……サブ君が待っている。「あ、兄貴、大丈夫でしたかっ?」
十三:おお、本編でも登場した頼れるサブ君。
乾史:なーに、いつもの小言で終わりだよ。へっ。
GM:「それは良かった……しかし、"また"兄貴がやられるなんて、あの山岐って刑事は相当なもんッスね」(笑)
乾史:ぐは(笑)。うっせーっ!次は負けねぇ!とりあえず中にはいるぜ。
GM:んじゃ、君の部屋――といっても廃ビルの部屋の一角に、捨てられていたソファーやベッド、机を勝手に持ち込んだ程度のものだけど――に入ると、一人の少年が中で待っていた。年の頃、十四、五歳と言ったところ。
乾史:おや、新キャラか?……俺は知っているのかな。
GM:うむ。君の舎弟の一人だ。本名は知らないけど、皆にはヒデと呼ばれているね。「犬神さん、お疲れ様っす!くそーっ、警察の奴ら犬神さんに汚ねぇマネしやがって、許せねぇ!」といって、バタフライナイフを危なっかしく開いたり閉じたりさせている。はっきり言って、下手くそ。
乾史:こらっヒデッ!エモノを振り回して遊ぶんじゃねぇ。
理流:ツキが落ちるわよ(ぼそっ)。
乾史:どこの世界のトレジャーハンターだよっ!
GM:(そんなネタ、歳がばれるぞ……)
十三:どんな感じの子だろう?
GM:髪は脱色しているんだが、ムラだらけ。たぶんコンビニで売ってる脱色剤で自分でやったんだろうなーと推測される。なんというか、育ちの良さそうな子が「気合いを入れるぜっ」と言わんばかりに一生懸命ワルぶっている感じ。
理流:ピアスを空けてたり?
GM:耳に安物のイヤリングをしているのだが、穴ピアスは空けてない。多分怖くて空けられなかったのだろう(笑)。
十三:ヘタレっぽいなあ(苦笑)。
GM:さて、先輩として「そうだぞヒデ。ナイフを振り回したっていい事なんて一つもない」と窘めるサブと、「うっせうっせうっせー!このギョウカイ、ナめられたら終わりなんだよっ!」って言って聞く耳持たないヒデ。
乾史:……じゃあ、刃の部分をガッとつかんで、ヒデのバタフライナイフを取り上げる。
GM:「な、何するんスか、犬神さん」
乾史:ヘタクソが持っちゃいけねえって何度言ったら分かるんだよ。使いたいんだったらもっと腕を上げてからにしな。
GM:「うう、すみません。で、でも、犬神さんも舐められたら終わりって言ってたじゃないっスか~」
乾史:ヒデよぉ、俺がそう言ったのは、そういう生き方しか俺が出来なかったからなんだよ。世の中、ツッパらなくても生きていく方法はいくらでもあるだろ。
GM:「ンなことないっすよ!ツッパらなきゃ、強い奴に潰されるだけなんっすよ!」
乾史:俺やサブにツッパって見せたってしょうがねぇだろ。今のお前は、ただツッパってるフリをしているだけだ。そんなんじゃ、本当に必要な時にツッパれなくなるぞ。外で少し頭を冷やしてこい。
理流:乾史くんカッコイイ!
GM:「わ、わかりました……」と不服そうだけど、とりあえずは頷く。バタフライナイフはどうする?
乾史:返しておくか。ほらよ。こいつは本当に使うべき時に使いな。
GM:了解。ヒデはバタフライナイフを懐にしまい直すと、とぼとぼ部屋を出て行く。
乾史:ったく、ツッパりどころを間違えてやがって……。とりあえずヒデに対してロイスを取るか。同情/憐憫。ネガティブを表で。
GM:サブも同意する。「……ほんと、心配なんですよねアイツ。まあ、あのくらいの年頃の男の心情としては仕方ねぇところもありやすが……」
一同:サブ、お前は一体何歳なんだ!(一同爆笑)
乾史:サブは俺の三倍のコネと十倍の知力を持っているからな!(笑)
理流:どう考えてもサブ君が実権を握っているわよね、これ。
乾史:だーいじょうぶ、もうみんな知っているから(笑)。
一同:お前が言うな!(笑)
乾史:いや~、俺はただの旗印。全てを取り仕切っているのはサブだからさ。
理流:一歩間違えれば乗っ取られかねないわねぇ。
GM:乗っ取れるところをそうしないのが、サブ君の奥ゆかしいところです。
十三:サブ君の有用性はさて置いて。ヒデ君はあまりこの界隈に相応しくない子供のようだな。どういう経緯で犬神君のチームに入る事になったのかな?
GM:彼は新顔です。つい最近、新宿の街外れで一日中ぼーっと佇んでいたところを、乾史が見つけて引っ張ってきた。ちなみに拾った時は某有名中学校の制服を着ていたよ。
理流:狂犬が捨て犬を拾った(笑)。
十三:サブ君といい、何で犬神君の周りには頭の良い子が集まってくるんだろう(笑)。
乾史:んー、やっぱり自分に無い物を求めているんじゃね?
理流:ああ、乾史くんがなんかすごくまじめな台詞を言っている!?(笑)
十三:だ、大丈夫か犬神君!?(笑)
乾史:俺を何だと思っているんだ!(一同笑)……まあいいや。サブに、サツの奴らが気になること言っていたんだけどよ――と『きれいな新宿運動』の件を伝える。
GM:「ああ、兄貴も聞いたんですね」
十三:さすがサブ君。情報早いな。
GM:「あっしが警察に送り込んだ潜入捜査官(アンダーカバー)から報告が入ってきてるんっすよ」(一同爆笑)
一同:アンダーカバーってなんだよっ!サブ本当に何者だよっ!(笑)
GM:ごめんごめん(笑)。さすがに遊びすぎた。サブはここをねぐらにしつつ、昼はカラオケボックスで働いているんだけど、そっちのコネで色々噂話を仕入れたってことで。残念ながら知っている情報は、麻生さんや山岐刑事が知っているものと大差ない。
乾史:……やれやれ、面倒くせぇことになってきたな。
十三:(素に戻って)あー、やっと思い出した。ニューヨークの治安対策で、似たようなことが行われたことがあったな。確か、まずはあちこちの落書きを消して、街に落ちているゴミを拾ってきれいにする、ってキャンペーンだったっけ?
GM:まさにそれです。「街がキレイなら、人は犯罪を起こす気にならない」という理屈で、まずは街をきれいにし、そこにいる不法滞在者を排除。最終的には廃ビルを建て替えてキレイにすることで、スリやカツアゲの出来ない街に作り替えるというもの。今回の『きれいな新宿運動』も、基本的にはこれと同じだ。
理流:文字通り、街の大掃除ってワケね。
十三:たしか本家の方は不法滞在者の就職支援なんかもやっていたはずだが、こちらはどうなのだろうか。
 
「いくら粋がってみても、あっしらガキの出来る事なんてたかが知れてます」

  達観したような表情で、サブロウは語った。

  この街に拒否をされては、子供達だけで生き延びることなど出来ない。だからこそ乾史達は、「地元の人々に迷惑をかけない」「薬や風俗に手を出さない」等といったルールを厳しく定めて守らせることで、「浮浪児の群れ」ではなく「規律のあるストリートキッズ」として住民達に自分たちの居場所を認めさせてきたのだ。

  最近は、住民達のちょっとした配達仕事や雑用を引き受けて、駄賃をもらう子も出てきた。ようやくこの街と折り合いがつきはじめたと思っていた頃だったのに……。
 
GM:「このキャンペーンのおかげで、いつまた街の人達が敵に回ってしまうかもしれやせん。だから今、ヒデあたりに勝手なことをされるとまずいんでさあ」
乾史:……ふう、ここも潮時、かな。
GM:「……この場所が潮時かどうかは置いておいて、ここを失うと生きていけねぇって奴がいっぱいいるのは事実ですからねぇ。帰る場所がないからここにいるって奴もいますし」――と言って、サブは少し遠い目をする。
十三:そう言えば、彼も帰る場をなくした子供の一人だったか。
乾史:……まったく、面倒クセェことになっちまったなぁ。
GM:君達がそんな風にしんみりしていると……「兄貴兄貴!てぇへんだてぇへんだ!」
理流:ていへんだ底辺だ。三角形の面積は底辺×高さ÷2。
乾史:意味わかんねぇよ!ちなみに俺らは社会の底辺だ(笑)。
十三:誰がうまいことを言えと!(笑)で、何が起こったのかね?
GM:「清風会の奴らが攻めて来やがった!」
理流:清風会?
GM:乾史のグループに時々ちょっかいをかけてくるヤクザ達だ。縄張り争いで何度も小競り合いを続けている。
乾史:清風会ィ?はっ、また性懲りもなく。いつも通り俺が蹴散らしてやる!
GM:では、乾史がビルの表に出たところでいったんシーンを切ろう。
 
 

●Middle 02 新鮮な出会い Scene Player 有本理流


  人材のスカウトとは珍しい仕事もあったものだ。
  持ち前の好奇心を刺激された有本理流は、さっそく若葉通り商店街へと足を向けた。
 
理流:ではさっそく現場に向かいます。
GM:華やかな大通りをはずれ、若葉通りのある細い道へ。気がつけば周囲にはだいぶくたびれた雰囲気が漂っており、スナックやちょっといかがわしいお店が、夜の営業に向けてのそのそと準備を始めていたりもする。
理流:私の場合、ブティックとかがある大通りの方にしか行かないからちょっと新鮮。同じ新宿でもいろいろ違うのねー。
十三:メイド服でそんな所を歩いていたら、その手の店の店員にしか見えんな(苦笑)。
GM:君が物見遊山しながら歩いていると、いきなり言い争う声が聞こえてくる。
理流:ん?それはどこら辺から?
GM:まさに君が今向かおうとしている、若葉通り商店街の入り口からだ。「おめーどこ見て歩いているんだよっ!」「てめーこそどこ見て歩いているんだよっ!」
十三:相変わらず有本君はトラブルを呼び込むなあ(笑)。
GM:トラブルに巻き込んでおかないと明後日の方に走って行っちゃうからさ(笑)。
理流:むー、なんか酷い言われようなんだぞ~。言い争っているのはどんな人かな?
GM:一人は日雇い労働者っぽいおっさん。そしてもう一人は、下手くそな脱色をした髪の少年。野次馬がその周囲を取り巻いている。
乾史:ヒデかよ?頭冷やしに行って喧嘩してどうする!?
理流:最初に因縁をつけたのはどっちかしら?
GM:二人の口論を聞くに、どうも酔っぱらったおっさんがふらふら歩いていたところに、向かいからやって来た少年……ヒデが道を譲らなかったためぶつかったようだ。
理流:どっちもどっち、かあ。それでも、大人が子供に手を挙げちゃダメよね。殴られそうだったら止めに入るけど。
GM:まだ手は出ていないが、口論はエスカレートしてゆく。やがてヒデの方が、「ンな口聞いていーのか!?おれのバックには『新宿の狂犬』がついてんだよっ!」とのたまう。
乾史:(頭を抱える)ヒデよぉ~……。
理流:発言の内容はさておき、『新宿の狂犬』って単語は聞き逃せないわね。
GM:酔っぱらいの方が「新宿の狂犬~?ああ、あの浮浪児どものリーダーを気取っていい気なってるクソガキか」と煽ると、ヒデは「ンだとこのヤロウ!」と顔を真っ赤にしながらバタフライナイフを抜……こうとするのだけど、片手では刃を出せず、こう両手で留め金をはずしてえっちらおっちら刃を出して……ぷすっと指を刺してしまう(笑)。
一同:ダメな子だ~!(爆笑)
理流:……とはいえ、刃物が出てきたらそろそろ笑えないわよね。ちょっと止めましょうか。(手を叩きながら)はいはーい、オイタはそこまで。子供がそんなもの振り回しちゃダメなんだぞっ。
GM:「あぁん?すっこんでろこのクソアマッ!」と、ようやく開くことが出来たバタフライナイフを威嚇するように振りあげるヒデ。
理流:うーん。当たる気がしないなあ(苦笑)。
GM:「向こう行けよっ!子供の喧嘩に口出すんじゃねぇっ!」
十三:自分で子供って行ったら駄目だろう(苦笑)。
理流:やーん、かわいいー、頭なでなでしたくなっちゃう。ロイス取ろっと。慈愛/隔意で。ポジティブを表で。
乾史:理流のツボに入ったらしい。
十三:可哀相に……(笑)。
GM:君がヒデとじゃれ合っていると、すっかり蚊帳の外だった男が「よそ見してんじゃねぇ!」と、少年をどーん、と突き倒す。
理流:あっ、ダメでしょあなたも!子供に手を挙げちゃ!
GM:「あぁん、引っ込んでろこのアマッ!」
理流:あれっ?どっちを向いてもこんな扱い!?(爆笑)
十三:「店の開店準備でもしていやがれ!」
理流:お店?何のこと~?(笑)
GM:実際の所、男もヒデも怒りが収まる様子はない。特にヒデがナイフを抜いたことで、格段に雰囲気が険悪になっている。
理流:……むー、そろそろ実力行使に出た方が良いかな?
乾史:ヤメレ。死人が出るからヤメレ。
GM:君が心の内でそんな良からぬことを考えていると――
 
「アンタらっ!なにやってんだい!」」
  雷声が辺りに響き渡る。
  理流が、野次馬達が、そしてヒデと酔っぱらいまでもが思わず振り返った。
  そこには――仁王立ちで睨みつける齢九十になんなんとする老婆の姿があった。
 
十三:も、もしかしてトヨさんか?
GM:その通り。そしてトヨさんは倒れているヒデ君につかつかと歩み寄り、手に持った杖を首根っこに引っかけて引き起こす。そして……ぱーんぱーんと素晴らしい往復ビンタをかます(笑)。
乾史:でたっ!ババァの往復ビンタっ!(笑)
GM:「持ち方もなっちゃいないくせに、刃物なんぞ振り回すんじゃないよこの馬鹿ったれがっ!」(ぱーんぱーん)「で、でもおれは……」「口答えするんじゃないよっ!!」(ぱーんぱーん)
乾史:(いきなり野次馬の老人)「おお……、ワシも子供の頃はトヨさんにアレを何度もやられたもんじゃ、懐かしいのぅ」
十三:(いきなり野次馬の子供)「スゲー、じいさんあのビンタ喰らったんだ!」
乾史:「あれを喰らったおかげで、わしゃあ当時の子供の中じゃあヒーローじゃった。顔は二倍に膨れあがってもーたがな」(笑)
理流:なんか野次馬が沸いてる(笑)。
GM:「アンタもアンタだよ!」
理流:え!?わたしですか?
GM:いいや、酔っぱらいのおっさんの方。「大の男がこんなガキ相手に本気になって!恥ずかしいと思わないのかい!」
乾史:(いきなり酔っぱらい)「い、いー!?だ、だってぶつかってきたのはそのガキの方じゃねえかよ」
GM:「ふむ、そうさね」と言うとトヨさんは少年の頭をつかむ。そして、ぐぃっ、と男に向かって深々とお辞儀させる。「そのことに関しては、謝る。これでいいだろ?」
乾史:「ま、まあ……謝ってくれればそれで良いけどよ。……けっ、酔いが醒めちまたったぜ。飲み直しだ飲み直しっ!」
理流:おおー、思わず拍手。
十三:「さっすがトヨさんだぜぇ」
乾史:「やっぱり貫禄が違うよなぁ」(笑)
GM:と、そこでトヨさんは理流にも気づく。「アンタ、どこの店の子だい?」
理流:店?(笑)わたしはCCCから来ました。
十三:明らかに質問の意図を読み違えているな(笑)。
GM:「CCC?はて、そんな店有ったかねぇ……CCC?」――と、そんなやりとりをしていると。今度はいきなりガッシャーン、バリバリとガラスが叩き割られる音が大音量で響き渡る!
理流:な、何事!?
GM:音が聞こえた方向は、若葉通りの奥の方だ。そしてそれを聞いたヒデは血相を変える。
理流:むっ、それは見逃せない。
GM:「ありゃあ……出入りだ。清風会のヤツラがまた来やがったんだ!犬神さん、大丈夫っすかあ!」そう言ってヒデは大里さんの手をふりほどくと、一目散に駆け出す。
理流:あ、待つんだぞっ!ねえ!新宿のワンちゃんのこと教えてよっ!
乾史:だからワンちゃんじゃねぇ!


●Middle 03 査定対象物件 Scene Player 鷂十三


  面倒な事になった。
  大里氏の宅を辞した後、件の『五倍』するという物件に足を運んでみたは良いが、そこにあったのは五倍どころか、値がつくかも怪しい廃ビル。しかも現在取込中のようだ。
  ガラの悪い男達が、廃ビルの中から子供達をひきずり出している。
  子供達の方は噂に聞いたストリートキッズなのだろう。不法占拠なのだから追い出されても文句は言えないだろうが、男達も大里氏の関係者とは思えないし、ましてや警察関係者とも思えない。
  何とも面倒なことになった。これ以上面倒は増えないで欲しいものだが。
 
GM:十三さんはトヨさん宅を辞した後、問題の物件を確認しに若葉通り商店街にやってきた。だがしかし、目的地に近づくにつれ、なにやら不穏当な光景を目にする。
十三:ふむ。先ほど犬神君のシーンであった、清風会とやらの出入りだな。
GM:その通りだ。ガラの悪い男達が何人も集まって、君が確認しようとしていたおんぼろビルを取り巻いている。手にした鉄パイプで窓ガラスを叩き割ったり、「オラぁ出てこいやガキどもっ!」と叫んで壁を蹴ったり、と大騒ぎ。
十三:十三としては、噂のストリートキッズ同士のいざこざか、と考えますが。
GM:ちょっと違う。男達の服装は、遠目にも判るどぎつい金色のバッチやネックレス。雰囲気からして明らかにヤクザな方々だね。
十三:とても査定が出来る空気ではないな(苦笑)。キャラクターとしては情報が全くないので、ひとまず電柱の影にでも身を隠して成り行きを見守る。
GM:ヤクザ達は窓を叩き割ると、中にいる子供達を引きずり出して道に放り投げたり、よってたかって袋だたきにしたり。子供と武装した大人では戦力差は明白だ。
理流:むー、何よ。大の大人がやりたい放題じゃない!
GM:「とっととこの街から出て行けクソガキども!ここはお前らがいて良いところじゃねえんだよっ!」そういうとヤクザの一人は、倒れている子供に向かって鉄パイプを振り上げる――
乾史:その鉄パイプを横合いからぱしっ、と受け止めて登場するぜ!……やれやれ、いい歳こいたオッサン達がガキを袋だたきたぁ、恥ずかしくねえのか?
GM:「出てきたナァ犬神!今日がテメェの命日だッ!」
理流:なんという三下発言(笑)。
乾史:おーおー良く見りゃそのツラはマサさんじゃあないですかあ。こないだ俺に折られた前歯はもう治りましたかい?
GM:「……へっ、大口叩いてられるのも今のうちだっ!何たって今日は用心棒の先生がいらっしゃるんだからなっ!」というと、ゆらり、という音と共に物陰から先生が姿をあらわす(爆笑)。
十三:本当に三下だなあ~(笑)。

  GM、ボードとコマを取り出して並べる。

十三:あれ、本当に戦闘するのか。
理流:DXだと能力を持っていないエキストラ(雑魚)戦なら、判定なしで勝ったことに出来るけど。
GM:そうなんだけど、今回はみんなの戦闘の練習もかねて敢えてモブ(敵)扱いにしてみました。ヤクザ達のトループ(雑魚の集団をまとめて一つの敵と見なす)が2体、用心棒の先生とやらが1体だ。乾史とヤクザ達が接敵エンゲージしている。
十三:では私は、彼らから少し離れたところに身を潜めている。
理流:私も登場します。ちょうどヒデ君と一緒に現場に到着したところ、ってことで。
GM:了解。ではさっそく、戦闘開始と行きましょうか!

●第1ラウンド

理流:行動値が一番早いのは私かな。……でもよくよく考えたら、私はまだヤクザと絡んでる子が『新宿の狂犬』ってことを知らないのよねぇ。とりあえずヒデ君をカバーしつつ待機。(ヒデに向かって)ここはお姉ちゃんに任せて、後ろに下がっているんだぞ!
GM:女の人にかばわれていると気づいたヒデは顔を真っ赤にする。「うっせうっせうっせ!どけよこのアマッ!」……えー、行動順だと次はヤクザ達だな。
乾史:ぐは、理流っちだけでなくヤクザにも行動値で負けるとは……ショックだ(本編のルールでは乾史が行動順で一番だった)。
GM:DXだとルール上、銃を使うキャラの方が早く動けるからねぇ。「ええい犬神っ!前歯の恨みをここで晴らしてやらぁ!」とトループ1が乾史を殴る。(ころり)おぉ、いきなりクリティカルで達成値は21!
乾史:(ころり)そいつは無理だ。ドッジよけ失敗。
GM:じゃあ油断した君は一発もらう。16点のダメージだ。
乾史:痛い痛い。装甲点が2点しかないからなぁ。
GM:続いてトループ2が達成値8と言って殴る。
乾史:それなら達成値10でドッジ成功!本気になるぜ。
GM:「く、くそ。攻撃があたんねえ。先生!お願いしますっ!」
十三:(いきなり先生)「どぉれ~(笑)、新宿の狂犬とやらはお前か?大人のルールを俺が直々に教えてやろう」(と言って手を広げる)
理流:先生のカッコってどんなの?やっぱり着流し?
GM:それじゃギャグシナリオになるってば(苦笑)。サングラスに着崩した背広、木刀代わりになる折りたたみ式の警棒を装備している。そして乾史を後ろから、達成値12と言って殴る。「これが大人のルールだ!」
乾史:ンなルールはねぇよ!クリティカルしないとダメだが……(ころり)おお、達成値25と言ってドッジ成功!
GM:くっ。気配を察知して、乾史は振り返りもせずかがんで警棒をかわした。
乾史:ふんっ、そんな不意打ち、俺には効かねえぜ!
十三:いい気になっているな(笑)。
乾史:さーて俺の番だな。マイナーアクションで《破壊の爪》、メジャーアクションで《音速攻撃》+《コンセントレイト》。後ろから不意打ちたぁ、ちょっとお行儀が悪いんじゃないの先生とやら!(ころり)達成値25!
GM:(ころり)それはさすがに避けられない。
乾史:ダメージ26点!かがんだ態勢から振り返りざまにアッパーをたたき込む!
GM:それは……一発KOだね。先生は乾史の拳をもろに顎に食らい、斜め上空に吹っ飛ばされてそのまま隣のビルに激突した。(コマをぱたんと倒す)
理流:おー。
乾史:おやおや、一発でおネンネとはずいぶん頼りになる先生だなぁ?
十三:(いきなりヤクザ達)「ヤベェよ、先生がやられちまったよ!」「どうするどうする?」「ええい、人数じゃこっちが上だ!たたんじまえ!」
GM:まあそんな感じ(笑)。今のところ逃げるつもりはないようだ。
十三:さて、私の番だが……。これ以上騒ぎが大きくなると私の調査にも支障が出るからな。まずはヤクザの方々からお引き取りを願おう。トループ1に対して《絶対の恐怖》+《コンセントレイト》。パトカーのサイレンが近づいてくる、という幻覚で、彼らの士気を崩壊させる。(ころり)達成値は20。
GM:(ころり)回避失敗!
十三:では、11点のダメージを進呈しよう。DXだと、精神攻撃でもHPにダメージ行くのですな。
GM:「や、やべぇよマサ!もうサツが来ちまったよ!」「う、うろたえんなっ!とっとと片付けちまえばいーんだよっ!」「で、でも先生もやられちまったし!」
乾史:けっ、口ほどにもねえやつら。
理流:最後に待機していた私の番ね。GM、GM。ここは是非ヒデ君に「これが『新宿の狂犬』の実力だ」とか叫んで欲しい。
GM:ああ、いいよ。ヒデなら言いそうだしね。「どうだっ!これが『新宿の狂犬』の実力だぜっ!」
理流:あの子が新宿のワンちゃんな訳ねっ!と気づく。で乾史君の方を見て、ああっ、囲まれている!とりあえず助けなきゃ!とフォローに入る(笑)。
十三:わざとらしい(苦笑)。
理流:まだぜんぜん状況がわからないから、敵を攻撃するにも理由がいるのよ(笑)。マイナーで《ハンドレットガンズ》+《ダブルクリエイト》、メジャーで《マルチウェポン》+《コンセントレイト》。(やたらと嬉しそうに)達成値は26。両手に持ったペットボトルをM93Rに作り替えてトループ2に対して攻撃っ!
十三:ちょっと待て!新宿のど真ん中でぽんぽん銃を撃つなっ!(笑)
理流:大丈夫、大丈夫~。新宿じゃこんなこと日常茶飯事なんだぞっ。
乾史:んなこたねぇ!つーか、俺がさんざんヒデに不用意に武器を振りかざすなって言ったのを台無しにすんなよ!
理流:私の場合はちゃんと使えているから問題ないんだぞっ。
GM:ヤクザトループにはそんな達成値をドッジ出来るわけもなく命中。
理流:(ころり)む、ダイス目が悪い。でも固定値が14あるから23ダメージ。やっぱり固定値は裏切らない。
GM:「犬神ィ、覚悟し……うぎゃーー!」(コマをぱたんと倒す)「ちゃ、チャカだとっ!どこの組だっ!」
十三:その叫び声に乾史が後ろを振り向くと、硝煙をたなびかせた銃を両手に携えたメイド服の女が、笑みを浮かべて佇んでいた(笑)。
GM:「し、死ぬなマサーッ!……犬神てめえ、日ごろ武器を使うのは卑怯だとか抜かしてたくせに、あんなヒットマンを雇うなんざどういう了見だッ!」(笑)
乾史:俺じゃねぇー!(笑)(理流に向かって)あんた何者だっ!
理流:私?(少し考えた後、かわいらしく)通りすがりの正義の味方?かな?
乾史:かわいこぶってごまかそうとするなっ!つーか、正義の味方が銃を乱射するなっ!(笑)
十三:二人とも今日も絶好調だな(苦笑)。
乾史:理流へのロイス『隔意』が違う意味になってきたぜ(笑)。
十三:私は有本君に対して同情/不安でロイス取ります。色々可哀相になってきた(笑)。当然不安が表だ。

●第2ラウンド

理流:さて、引き続いて私の番だけど、残りのトループにはぎりぎり射程が届かないので今回も待機。
GM:了解。トループ1が再び乾史を達成値10と言って攻撃。
乾史:ドッジ成功。俺の番か。(ヤクザ達に向かって)お、おい、なんかキチ○イが来ちまったぞ。いったん休戦しないか?(笑)
GM:「ありゃてめえが雇ったヒットマンじゃねーか!一体どこの国のモン雇いやがったんだ!卑怯だぞ!」
乾史:だから俺じゃねー!(笑)あんなの雇うのはむしろお前らの方だろ!
GM:「俺らだっていきなり路上でぶっ放すようなキ○ガイは雇ったりしねえよ!」
理流:き・み・た・ち~?トイレはすませたかな?お祈りは?街の角でがたがた震えて命乞いをする心の準備は良いかな?
乾史:お、俺はこのターン《軽功》でビルの二階の開いている窓へ逃げこむ!(笑)
十三:私はこのターン静観している(笑)。
理流:てーんばつてきめーん!
 
  その後、あきれ顔で静観する十三を尻目に、理流がトループを一掃しましたとさ。
 
GM:先生を倒されて、幻覚を見せられて、あげくマジもんの銃で撃たれたヤクザ達は完全に戦意を喪失して逃げ出す。(理流に向かって)お、おぼえていやがれ!(爆笑)
理流:ええ~?わ、私はただの通りすがりの正義の味方なのに~!
十三:銃を両手に構えながら言う台詞ではないな。
乾史:想像を超えた非常識な事態にぽかんとしてる(苦笑)。
GM:ヤクザ達は十三が隠れている物陰を通り過ぎて、表通りへと逃げてゆく。
十三:私としては、撤退してくれる分には文句はないのでスルーだ。
 
  やれやれ、とりあえずは一つ、面倒ごとが片付いたか。
  十三がほっとしたのもつかの間。
  事態はさらに、面倒な事になってゆくようだった。
 
GM:……だがしかし、問題はまだまだ片付かない。今度は突如として、表通りから幾つものパトカーのサイレンが響き渡る。これは十三の幻覚ではなく、本物だ!
乾史:やっべ、サツが来やがった!
理流:銃をカバンにしまいます(笑)。
GM:表通りに何台ものパトカー、そしてバンが停車する。そして取り付けられたスピーカーからアナウンスが流れる。
 
『こちらは、新宿××警察署です。
  区民の皆様のよりよい住環境を実現するため、
  これより『きれいな新宿運動』を実施いたします』
 
GM:すると、パトカーとバンから警官がわらわらと降りてくる。そして、表通りにたむろしていたホームレス、酔っぱらい、そして君たちが追い払ったヤクザ達を次々と捕まえては、バンの後部座席に放り込んでゆく!
一同:えぇ~!
乾史:(酔っぱらいになって)「んだよぉ、俺が何したっていうんだよぉ~」
GM:「はーいはいわかりましたからこっちに来てくださいねえ~」と言いつつ、両腕をがっしとつかんで、バンの中にぽいっ(笑)。
 
  路上に散らかされたゴミが、ゴミ収集車に放り込まれてゆく。
  落書きが塗りつぶされていく。
  そして、人々が車に放り込まれていく。
 
  お前達は汚いものだ。不要なものだ。
 
  それはどんな言葉よりも雄弁な意思表示だった。
 
理流:ひっど。ここまでやるの?
GM:やります。そして警官達の陣頭に立つ男……髪を丁寧にオールバックに撫でつけた銀縁メガネの男に、乾史は見覚えがある。
乾史:辰巳署長、だな。あんにゃろうが自分で出張ってきてるのか。
GM:君らが見ているうちにも表通りの『清掃』は進んでいく。もうじき、こちらの若葉通り商店街にも警官がやってくるだろう。
十三:それは困るな!私は捕まるとは思えんが、職務質問とかはされたくない。
乾史:俺はすでにビルの中に逃げ込んでいる(笑)。
GM:サブロウがビルの窓から顔を出す。「ヒデっ!何してる早くビルん中入れ!」その声に我に返ったヒデ、それからヤクザに引きずり出されていた子供達が、慌ててビルの中に逃げ込んでゆく。
理流:あ、ちょっと待って!私も『新宿の狂犬』に興味があるの!とヒデ君についていって、どさくさ紛れにビルの中に入りま~す。十三さんはどうするの?
十三:ふむ。……私としては、あまり積極的に中に入る理由がないのだがね。廃ビル同然とはいえ不法侵入になるし。
理流:あ、そっか。家主さんの指示だもんね。
GM:君がそんな事を考えていると。「ほほう、さっそく確認に来ているとは、少しは見所があるようだねぇ銀行員」なーんて声が、背中からかけられる。
十三:出たな(笑)。……これはこれは大里様、ご自身でお越しとは如何されましたか?
GM:「ちょうどいいところに来た。あんたボディーガードをしなさい」
十三:(思いっきり素の声で)はあ?(爆笑)
GM:トヨさんは十三の腰のあたりをばんばんと叩き、「かよわいあたしが不良のたまり場に行こうってんだ。いい大人として護衛したくなるのが当然だろう?ついでにアンタも査定がしやすくなる。これが一石二鳥ってもんさ」
乾史:ボディーガード代は出そうにないなこれ……(苦笑)。
 
  まったく面倒ごとは尽きないものだ。
  十三は見えないように一つ肩をすくめ、こう述べた。
「ええ、所有者の大里様のご依頼とあれば、私もビルの中に入るのにやぶさかではございませんとも」
 
  

●Middle 04 ファーストコンタクツ Scene Player 犬神乾史

  ほうほうのていで廃ビルの自室に戻ってきた乾史。
  窓から身を乗り出して下を眺めると、警官達による補導や職務質問が行われている。
  いや、その厳しさはほとんど掃討と呼ぶべきものだった。

乾史:……ちっくしょー、あの辰巳ってヤロー、いくら警察だからって好き勝手やり過ぎだろう!?
GM:「いよいよ始まっちまいましたね、『きれいな新宿運動』」とサブも物憂げだ。
乾史:けっ、なーにが『きれいな新宿運動』だよっ。名前だけキレイにして中身をごまかそうってハラだろどうせ。
理流:どっちかって言うと『新宿大粛清』って感じよね。
十三:まあそこを敢えて『きれいな新宿運動』と名付けてのけるあたりがお役所のセンスなのだろうさ。
GM:サブの呼びかけもあり、子供達は廃ビル内に避難することが出来た。みなそれなりに怪我をしているが、捕まった者や重傷者はいない。
理流:はーい、ここでヒデ君と一緒に登場。大丈夫、ちゃんと歩ける?肩貸そうか?
GM:「うっせー!かまうなよこのアマッ!」
十三:きっと理流の姿を見た子供達はドン引きで後ずさるんだ。「おい、あの女だ」「さっきいきなり銃を撃ってたヤツだろ!?」「ヒットマンだ、ヒットマンが来た」(笑)
乾史:じゃあ、俺もキ○ガイは怖いけど勇気を持って(笑)一歩前に出よう。……おい女ぁ、テメェヒデに何するつもりだ。返答次第によっちゃあ女っつっても容赦しねぇぞ。
理流:私はこの子の保護者に会いに来ただけなんだぞっ。
GM:「あぁん?おれに保護者なんていねー!おれは一匹オオカミだ!」とヒデ君。
理流:やーんかわいい~!頭をナデナデしてあげるんだぞっ。
十三:群れに所属しておいて一匹狼もなにもなかろうに(苦笑)。
乾史:……いいからヒデから手ぇ離して失せろ。
理流:むー、せっかくさっき助けてあげたのにひどいんだぞ。
乾史:いきなり後ろから銃を撃つようなヤツ、信用できるか。
十三:ほどほどに険悪ムードになったところで登場だ。……あー、取り込み中のところすまないがね。
乾史:ああん?今度は誰だよ?スーツなんか着やがって。
理流:あれ?十三さ……と口に出しかけて止めます(笑)。
十三:私は全力で有本君を視界に入れないようにしつつ(笑)、こちらの建物の家主様がお話をしたいとの仰せだ。少し耳を傾けてはもらえないだろうか?
乾史:家主ぃ?ってまさかっ!
GM:十三に続いて入ってきたのはトヨさんだ。すると子供達も「ババァが来た」「大里のばあさんだ!」「大家が来た!」とざわめく。
乾史:俺とはどういう関係なのかな?
GM:「お前達はいつまでもこんなところにたむろして!ここはねぇ、あたしのビルなんだよ!今日こそはここから出ておゆき!」
乾史:なるほど、そう言う関係か(笑)。……わりぃなバァさん、こちとら行くとこねぇんでな。
GM:「乾史!頭のお前がいつまでもそんなだからここに子供が集まってきちまうんだよ!いい年こいて恥ずかしいったらありゃしない!」
乾史:いい年こいて、って、バァさんにだけは言われたかねぇな(一同笑)。
十三:……なにげに大人扱いされてるんだな(笑)。
GM:「半人前のくせに口答えするんじゃないよ!まったく、そんなことだからお前の下のが世間様にご迷惑をかけるんだ!」
乾史:ああん?いつ誰が迷惑かけたよ!?――ってところでヒデの様子に気づきます(笑)。……おいヒデ、オメェ、どうかしたのか。
GM:「あ、いえ。その……それは……」
理流:……ねぇねぇ、『新宿の狂犬』ってあなたのこと?
乾史:ンだよテメェは。俺が自分でつけた名前じゃねえよ。
理流:そっか~。この子のバックについてるのは君なのか。
乾史:……バック?そりゃどういう意味だよ。
GM:「いやそれはその、」
理流:えっと、さっき表の通りでちょっとトラブルがあってその時に……と言いつつ、先ほどの事件を全部説明してしまいます(笑)。
十三:確信犯だ(笑)。
乾史:……それは本当なのか。ヒデ。
GM:「だ、だってアイツ、犬神さんのことをバカにしやがって、だから……」
理流:もー貴方はおにいちゃんなんだからちゃんと面倒を見なきゃだめなんだぞっ。
乾史:アンタは黙っていてくれ。
理流:むー。
 
  いつもの短気な怒鳴り声とは少し違う。
  乾いた口調で乾史は静かに告げた。
「ヒデ。――お前、家に帰れ」
 
GM:「そ、そんな……!」
乾史:ここにはここのルールがある。最初にそう教えたはずだぜ。それが守れないなら、ここから出て行け。
GM:「な、舐められたら終わりって犬神さん言ったじゃないっすか、だから俺は……」
乾史:さっきも言っただろ。今のお前は、ただツッパってるフリをしてるだけだってな。……なあヒデ。お前、いいとこの坊ちゃんなんだろう?
GM:ヒデの顔が、さっと赤くなる。
乾史:ここに来る前の事はやたらに聞いたりしない、それもルールだから今まで言わなかったがよ。……ここにいるのは他に行くところがない連中ばっかりだ。だから「ここにいるためのルール」を守んだよ。ルールを守れ。守れないなら帰れ。他に帰る場所があるんだから。
 
「…………か、帰るところなんてあれば」
  真っ赤な顔に涙を浮かべ、ヒデは叫んだ。
「最初っからこんなとこ来ねぇよ!」
 
GM:そう言うと扉を開けてヒデはビルの外へと走り去ってゆく。
乾史:それをしばし見送ってから……なあ、サブ。
GM:「……なんでしょうアニキ」
乾史:どうせお前の事だから、ヒデの家の事くらい調べてんだろ?(爆笑)
十三:サブ君便利すぎるなあ!(笑)
理流:ってかそれは経験値を払ってコネを購入するべきじゃない?(笑)
乾史:確かになあ(笑)。<コネクション:裏社会>あたりで今度正式に取ろう。今回はあくまで演出扱いで、平目でヒデの素性を知ってるか判定(ころり)。あ、クリティカルで18(一同爆笑)。
十三:サブ君の支援は半端じゃないな!
GM:「ああ、ヒデですね」と言うと胸ポケットから手帳を取り出すサブ。「本名は結城良秀、十三歳。あっしが放った”草”の報告に拠れば……」(一同爆笑)
乾史:お前はアンダーカバーだけでなく下忍も使うのかよっ!?
理流:いずれ新宿のフィクサーとかになれそうようねこの子。
GM:「……いいとこの坊ちゃんで、親の期待がどうとかで、小学校の頃から家庭教師がついて猛勉強してたみたいっすよ。んで、その甲斐あって、中学から超一流の進学校に入ったみたいなんですけどね……」
 
  もともと体が小さく気の弱いところのあるヒデは、学校でいじめられるようになり、次第に登校を拒否するようになったという。がしかし、両親は常に「頑張れば出来る、もっと頑張れ、学校へ行きなさい」の一点張り。家にいることも学校にいることも出来ず……ある日帰宅途中の新宿をさまよううちに一夜を明かし……そしてその日から、家に帰らなくなったのだという。
 
乾史:ふーむ……。
理流:私、サブ君もいっしょに引っ張ってった方がいい気がしてきた(爆笑)。
十三:普通にCCCの情報収集で活躍できそうだしな。
理流:というかむしろ、CCCに乾史君を売り込んだのはサブ君なんじゃない?
十三:「うちのアニキには天下を取って欲しいんでさあ!」とか(笑)。
乾史:じゃあ、他の子分達に向けて。――ちょうどいい機会だから言っとくぜ。ヒデだけじゃねえ。ここにいる奴で帰るところがあるやつぁ、家に帰れ。さっきの警察のやり方を見たろ?どうせ、ここも長くねえ。
GM:「そんなこと言われても……」「家に戻ったって……」「俺は……」なんて呟きがぼそぼそ聞こえた後、シーンとしてしまう部屋の中。
理流:(素に戻って)なんていうか、乾史君ってリーダーをやる気はないの?
十三:いじめられている子供がいたら守ってやる、だけど勝手に後ろについて来られてチームを作られても迷惑……というところかな?
乾史:さあな(苦笑)。
GM:「そうだよさっさと出ておゆき!ここはアタシのビルなんだからね」とトヨさん。
乾史:バアさん……今は口を挟まねえでくれよ。
GM:「挟むも挟まないも、アンタ等がここに居座ってる事がそもそも問題なのよ!ほら、銀行員!」
十三:は、私ですか!?(笑)
GM:「このガキ共に、このビルが誰のものか説明しておやり」
十三:……仕事とは不自由なものだな、本当に。
理流:そこでやっほー十三さーん、とこっそり手を振ります。
十三:(朗らかに)やあ有本君。私は君とは会ったこともないし、誰だかまったくわからない。ましてや君の名前が有本理流だなどと言うことも知る由もないので私に声をかけないでくれないか(一同爆笑)。
理流:あ、扱いがひどいんだぞ~。
十三:……がしかし大里様、一つ事前に確認しておきたいのですが。貴方は本当に、このビルを売りたいと考えている。それでよろしいのですね?
GM:「……アンタは説明すればいい。それ以外のことを頼んだ覚えはないよ」
十三:……では、カバンの中からそれなりに法的根拠がある書類のコピーとかを取り出して言いましょう。このビルの所有権は間違いなく大里トヨ氏にあり、彼女はここに不法に居座る者を追い出す権利がある。
乾史:法的根拠がある書類のコピー、なんて見せられて判る奴はいねぇよ!(苦笑)
GM:「うーん登記関係もしっかりしてますね……本物ですよ」とサブ(一同爆笑)。
乾史:ショユーケンとか言う前に。そもそも誰も借りねぇし買い手もつかねえんだろこのボロビル。
GM:「それこそアンタが口を挟む話じゃないよ。だいたいこのビルは売ることになってるんだしねえ、銀行員?」
十三:はははーそうですな。(棒読口調で)ただしそれに関しましては今一歩お互いの意見のすりあわせが必要なところではありますがー(笑)。
理流:……むしろこの子達に居座ってもらった方が、それを理由として値切れるんじゃない十三さん?(苦笑)
十三:ウム!実はここにトヨさんご本人が居なければ真っ先に提案したかったくらいだ(爆笑)。
GM:「とーにーかーく。このビルは売り払う。アンタ等は出て行く。アタシの言いたいところはそれだけ。それから乾史!」
十三:言いたいところはそれだけ、と言いつつ続けるあたりさすがです大里様(笑)。
GM:「アンタも『新宿の狂犬』とか呼ばれて何時までもいい気になってると、そのうち痛い目にあうよ!ちょいと喧嘩が強いからって、アンタ一人で出来る事なんてたかが知れてるんだからね!」
乾史:ハイ、サブが居ないと何も出来ません(爆笑)。
十三:おい、そこでギャグに走るのか!
乾史:いや冗談(苦笑)。へっ、と明後日の方向を向く。
GM:「……ところで、さっきから気になってたけど、アンタはなんでここにいるんだい」とトヨさん。
理流:へっ?……あ、そうだったそうだった(笑)。改めて、ねぇ、やっぱり君が『新宿の狂犬』なのね?
乾史:知らねーなあ。
理流:いや、だってみんなにそう呼ばれてたじゃない。
乾史:知らねえったら知らねえよ。だいたい何だテメェは。奇天烈な服着て銃をぶっぱなしやがって。
理流:えーっと、……真面目に行きましょう。私は有本理流。人材派遣会社CCCというところで働いていて、貴方をスカウトに来たの。
乾史:はぁ?何寝言いってんだテメェ。
理流:私や貴方みたいな人が何人も働いているの。お給料も結構いいんだぞ~。
乾史:どうだっていい。失せろ。
理流:……プレイヤーとしてはわかってたけど、結局こうなるわよねえ~(苦笑)。
乾史:俺もこれ以外に返事のしようがないしな(苦笑)。さてどうしたものやら。
 
  「出て行け」と言われて出て行けるのならそもそもこんなことにはなっていない。
  スカウトしようにもそもそも相手にまったくその気がない。
  どちらの交渉もまったく歩み寄りのないまま、徒に時間だけが過ぎていく。
  気がつけば陽は落ち、夕暮れとなりつつあった。
 
GM:「……はぁ、しょうがない。結局こいつらには何言ったって無駄ってことさね。痛い目見なきゃわからないのさ。ほら銀行員!」
十三:は、何でございましょう(笑)。
GM:「あたしゃ帰るよ。エスコートしなさい。それからアンタ等!お客さんが帰るときはちゃんと見送る!」
乾史:なんとなく整列して見送ってしまう子分達(笑)。
理流:わ、私も見送るのかしら。
GM:「そこのお嬢ちゃん!アンタも帰るよ」
理流:ええー!?私もですか?
GM:「こんな電気もないところに女の子が一人で残ってどうするんだい!話があるならまた今度にでもすればいいだろ」
理流:(メモを見返す)……仕事としては、具体的な時間制限は無しで、乾史君が補導されちゃう前にスカウトすればいいのか。まずは伝えることも伝えたし、今日は帰るしかないかな。
十三:……あ、GM。私は一連の流れで、この中で唯一、まともな話し合いが出来そうな相手がサブ君だということに気づき、名刺を渡しておく(笑)。
GM:では、サブ君は携帯のアドレスを教えてくれる。
十三:それをメモして、トヨさん、有本君ともども退場しよう。
理流:私はトヨさんにロイスを取ろう。感服/恐怖。感服が表で。
 
「じゃあね『新宿の狂犬』さん!さっきの話、考えておいてね!」
  そんな言葉を残して、ババアと銀行員、そしてけったいな服を着た女はビルから出て行った。
「――なんだったんだ、アイツらは」
  怒りを通り越して唖然とした表情で、乾史はドアを見つめるより無かった。


●Middle 05 新宿の女傑 Scene Player 有本理流

  明けて翌日、月曜日。
  いかに気ままな大学生といえども、まるきり授業に出ないというわけにもいかない。
  いくつかの必須の講義を受講した後、その足でCCCに向かう理流。とりあえず麻生さんに現状を報告することと――調べてみたいことも出来たので。 
 
GM:というわけで、ここからは調査フェイズだ。各自時間を費やすことで、シナリオについて気になることを一つ調べることが出来る。最初のプレイヤーは理流。
理流:は~い。まずは一通り、麻生さんに報告をします。なんか新宿に行ったら、なんかばたばたしてました(笑)。
十三:それは報告とは呼ばん(笑)。
GM:「有本さんに依頼した以上、ばたばたするのは想定内です」
理流:微妙にひっかかる物言いだぞ~(苦笑)。『新宿の狂犬』に出会ったことを話し、彼がストリートキッズ達を守っていたことを報告します。
GM:「そうですか……。では頑張って仲良くなって下さい」(笑)
理流:私は仲良くなるつもりはあるんだけど向こうがね~。というところで情報収集。
GM:「必要なことでしたら、CCCのデータベースを活用してくださいね」
理流:私は『大里トヨさん』について調べます。
十三:おや、そっちを調べるのか。
理流:うーん。個人的に好奇心がうずいた(笑)。『新宿の狂犬』のスカウトが手詰まりな分、こっちを調べてみようかと。
十三:なるほど。ではそちらはお任せしよう。
理流:ええっと、『新宿の狂犬』のねぐらになっているビルの大家さんについて、CCCで知っていることはありませんか?と麻生さんに訪ねる。<情報:CCC>で判定!(ころり)9!
GM:いい目ですな。「大里トヨさん。この辺りでは結構有名な方ですね」と麻生さんは地元の名士のデータベースを引っ張り出してくる。
十三:CCCにはそんなデータベースまであるのか(笑)。
GM:そりゃあもう。街の資産家なんて格好のカモ……もとい、お客候補ですからね。
十三:なるほど。そう言われれば納得だな。
 
  大里トヨは、古くから新宿に住んでいる生き字引の一人である。
  太平洋戦争の空襲で焼け出され、やはり焼け野原と化した新宿に流れてきたらしい。家族は無し。夫や子供を戦争で失ったとも聞くが、定かではない。
  女手一つで粗末な屋台を引いて商売を始め、闇市の露天商となり、小銭を貯めてアパートを購入。少しずつ家賃収入を増やしては土地や建物を買い増ししていった。
  折からの高度経済成長からバブルによって地価が急騰したこともあり、一躍新宿に大きな影響力を持つ資産家となったのだが、当人は未だに、昭和当時のボロ家住まいを続けている。しかも小銭の勘定にうるさい、買い物はかならず値切るなどの生活ぶりから、ご近所では守銭奴ばあさんとして有名である。
 
理流:うーん、バリバリの戦中派って感じねえ。
GM:理流は目がよかったので、さらにもう一段階情報を得られる。トヨさんを知っている者達の間では、ちょっとした興味というか、噂話が流れている。
理流:噂?
GM:うむ。それは、「トヨさんは、儲けた金をどこにためこんでいるんだろう」ということだ。ビルや土地からたくさんの収入があるはずなのに、当人はボロ屋暮らしのケチケチ生活。いったい稼いだ金を何に使っているのか?と皆不思議に思っているわけ。
理流:家族もいないんだっけ……。となると本当に使い道が不明なわけか。
GM:そして、トヨさんが最近、土地を売ろうとしている事も君は知ることが出来る。ここの情報は、十三に説明した通りのことだ。
理流:なるほど。だから十三さんが付き添っていたのね、と納得しておこう。
乾史:……ためこんだ金の使い道かぁ。
理流:あ、私は十三さんにメールします。
十三:削除します(爆笑)。
理流:ひ、ひどいんだぞ~!
十三:これは表の仕事表の仕事……(笑)。
乾史:極力関わり合いにならないようにしていやがる(苦笑)。
十三:いや、君が引き受けてくれるならそれでもいいが?
乾史:すみません(一同爆笑)。
理流:……ええっと、トヨさんのお金について情報を流しておきます。あ、ついでに、もう何日かしたら時間を見つけて『新宿の狂犬』……犬神乾史君をまたスカウトしにいくって書いておきます。現場で会ったらよろしく、と。
十三:返信、『了解』(笑)
理流:ド、ドライな文面だぞっ(苦笑)。


●Middle 06 利殖屋の前線日誌 Scene Player 鷂十三


  見積もりを渡すだけの片手間の仕事――そんな甘い目論見は崩れ去った。となれば対策は一つしかない。すなわち……本気で取り組んで、早々に片付けるのだ。
  売りたいといいつつ法外な値をつける大里トヨの不可解な言動、ビルにたむろするヤクザ達。十三の腕利き銀行員としての知識が、取引の実態を次第に明らかにしてゆく。
 
十三:私のシーンだな。早速、平日の銀行業務をこなしつつ、調査を進めるとしよう。
理流:トヨさんについては私が調べちゃったけど。
十三:私は『今回の土地取引の内容』について調べようと思う。特に『敬天興業』関連を念入りに。
乾史:『敬天興業』ってなんだっけ。……(メモを見返す)ああ、トヨさんのビルを買い取りたいって会社か。
十三:うむ。トヨさんが土地を銀行、というか私の上司に売って、上司がこの『敬天興業』に売る事になっているわけだ。<情報:CCC>で『今回の土地取引』の中身を精査!(ころり)、12です。
GM:さすがに本職、目がいいなあ。今回の取引は、まずトヨさんが「土地を売りたいので良い買い手を探してくれ」と言いだし、君の上司……問題児の前田さんがそれを引き受け、買い取り先を探していた。そこに名乗りを上げたのが、『敬天興業』だ。
十三:他に名乗りを上げた業者はいなかったのだろうか?
GM:新宿の優良物件と言うことで、他にも何社か居たようだが、君の上司、前田さんが『敬天興業』を何かにつけてプッシュしたのが効いて、ここに決まった。
十三:買い手の『敬天興業』とはどんなところだろうか。
GM:新宿に割と古くからある不動産屋で、土地の売買を行っている。
十三:ということはトヨさんの商売敵?
GM:いいや、あまり縄張りが重ならないので、それほど接触はなかった。
十三:トヨさんは、自分の土地の買手が『敬天興業』と知っている?
GM:知っている。
十三:……では質問です。トヨさんが売値を五倍に、などと無茶を言い出したのは、売却先が敬天興業だと知った前?後?
GM:判った直後、だ!
十三:あっはっはっは!……ったくボケ上司が(ぼそ)。
乾史:え~っと、つまりどういうことだ?
十三:簡単に言えば、トヨさんは土地は売りたいのだが、『敬天興業』に売るのはいやだ、ということらしい。だから急に無茶な売値を言い出したのだろう。『敬天興業』、ここに絞ってもっと詳しく調べたいのだが。
GM:君が仕事の合間にそれらの事を調べ上げたところで、折良く前田さんがやってくる。「鷂君、大里さんの件、一体いつまでかかっているんだい?困るなァ~」
十三:はっはっは、前田課長、本件、事前に伺っていた話と内容がずいぶんと違うようではないですか。
GM:「えぇ~?別に変なことはないよ。君は大里さんと契約を交わしてくればいいんだよ。まったくぅ、早くしてくれないと、ホラその、困るんだよネ」
乾史:(素で)コイツうぜぇんだけど!?(笑)
GM:ちなみに、彼に特定のモデルはございません……よ?(苦笑)
十三:おや、それほどお急ぎの案件とは伺っておりませんでしたが?
GM:「えっ?そりゃあその、ナニがソレでいろいろあるし」
十三:『敬天興業』さんへの売却のお話……ですかな?
GM:「うっ、そ、そうなの。早く君が話をとりまとめてくれないとぉ、ボクが敬天興業さんから怒られちゃうんだよ、どうしてくれるのサ」
十三:GM、敬天興業への売却話は、正式に行内の承認を得ているのだろうか?
GM:承認は得ている。……というより、実際の所は前田さんがごり押ししたと言う方が正しい。
十三:……ふむ。
GM:「とにかくさぁ、もう一回トヨさんのところに行ってきてよ。十回行ってダメなら百回、百回行ってダメなら一万回行くのが銀行員の仕事だろう?今日の仕事は……ホラ、後に回していいから」
乾史:いいわけねえだろ、このボケがぁーッ!!(一同爆笑)
理流:後に回して、って結局、「後でお前がやれ」ってことよねぇ……。
十三:……ええ、しかし向かう前に、大里様と敬天興業のご関係について教えていただきたいのですが。
GM:「いや?特に関係はないって聞いてるけど」
十三:おや?……そこはスルーなんだ、前田氏……。
GM:「っていうか、いつまでもごちゃごちゃおしゃべりしてないで、さっさと出かけなさいよ鷂君!?」ちょっとキレ気味です。
十三:いやしかし、この取引はあまりにも杜撰で……
GM:そこで隣の課の三村さんが口を挟む。「鷂ぁ、お前不健康なんだからたまには外を歩いてこいよ。納期のヤバイ仕掛かりがあったら携帯からメールでも俺に打っとけ。フォローしといてやるから」そう言って君に片目をつむってみせる(笑)。
乾史:出来る男だ~!(笑)
十三:(苦笑)仕方がない、これ以上前田氏からの情報引き出しは諦めて、三村さんのお言葉に甘えて再び現場に向かいます。


●Middle 07 路地裏作戦会議 Scene Player 犬神乾史

  二日。
  わずか二日で、街中の浮浪者、酔っぱらい、不法滞在の外国人らが保護施設の車に呑み込まれ、次々と街から姿を消していった。
  ゴミも人も片付けられ、キレイになったはずの街は、なぜか居心地の良さよりも息苦しさを感じさせる。裏通りの各勢力が大打撃を受ける中、それでも乾史のチームは比較的少ない被害に留めていた。
 
乾史:俺の番か。……えーっと、出て行ったヒデの行き先を知りたいんだが(苦笑)。
十三:出て行けと言ったのは君だろう(にやにや)。
乾史:うっせーほっとけ!(笑)
GM:サブが追跡しているのだが、まだ見つかっていない。「ったく、ヒデのヤロウどこに行っちまったんですかね。親ん所に帰ったんならそれはそれでいいんですが」
乾史:うーむ。……やっぱり俺は『きれいな新宿運動』について調べてみるぜ。お上が本気で俺達をつぶしにかかってきているのなら、所詮勝ち目はないからな……。
理流:あれ、意外と弱気な発言じゃない。
GM:「アニキ、そんなガラにもねえ事言わないでくださいよ」とサブ。
乾史:……他の連中にも言ったけどよ。帰る場所があるなら帰りゃいいんだ。これで解散するのなら、いい機会なのかも知れねぇよ。
GM:「確かに、……あっしらは勝手にアニキについていっただけのチームだし、アニキ自身は一度もチームを大きくしようとしたことはなかったですけど……」
乾史:ババアも言ってたけどよ、このビルだって俺達のものじゃねえんだ。もしこの街が、俺達に出て行け、って言ってるのなら――いつまでも居座るのはスジじゃねえさ。
GM:「アニキ……」
乾史:子分達に情報を集めさせて、サブから報告を受けるという演出で……<情報:裏通り>(ころり)8。とにかくサブ、『きれいな新宿運動』のせいで、今この街はどんなことになってるんだ?
GM:新宿の裏通りには、ヤクザ、海外系の犯罪組織、浮浪者、ギャングまがいの不良学生、乾史達のようなストリートキッズなどなど、様々な勢力が小競り合いを繰り返しているのだが、『きれいな新宿運動』は全勢力に軒並み大打撃を与えている。
理流:暴力追放キャンペーンとしては、それなりに効果が上がっているということね。
GM:だがそれ以上に、街の活気が失われている。ちょっと崩れた服装で道を歩いていれば職務質問され、不審な点があれば即バンに詰め込まれる、という状態のため、表通りを歩こうという人もいなくなってしまった。
十三:身元も生活態度も完璧です、なんて言い張れるような人間は、歓楽街にはそもそも近づかないだろうしな。
GM:だがそんな中、君のチームは比較的被害を軽微に留めている。補導された子分達もわずかだ。
乾史:お、それはまたどうしてだ?
GM:「……実は、この街の人に色々と助けてもらってるんです」とサブ。「アニキの方針もあって、あっしらは他のチームの連中と比べても、随分街の人たちには親切にしてもらってますから」
十三:きっと警察の巡回が近づいて来ると、街の人達がこっそり逃がしてくれたりするんだな。
理流:売れ残りのパンとかを持たせてくれるのよきっと(笑)。
乾史:ヤベェ、素でいい話じゃねえか(笑)。……しっかし、そもそも何でこんなキャンペーンやろうって事になったんだろうな。
GM:「この街に新しい署長が来てから、ってのがもっぱらの噂でさぁ」
乾史:署長……辰巳のヤロウか。
GM:「ええ。もともとこのキャンペーン自体、辰巳署長のごり押しで始まったもののようなんです」
乾史:いけすかねえヤロウだぜ。なんだか知らねぇが、俺達を目の敵にしてやがるしな。クズだのゴミだの、好き勝手言ってくれやがる。
GM:「なんでも、東大を凄い成績で卒業して、そのまま警察に入り、あの若さで署長になったとか」
乾史:かー、ぺっぺっ!お高いエリート様ってわけかい。
GM:「ええ。それで最初は幹部候補としてデスクワークをしていたみたいですが、やがてマル暴に異動になったそうです」
乾史:おや。マル暴、ってことは暴力団対策だよな?
十三:頭でっかちのエリートが異動させられるにしては、随分タフな職場のようだが。
乾史:そこらへんでなんか不良とかヤクザとかに因縁があったってことか?
GM:「そこまでは……。ただ、そこでもやっこさん、随分成績が良かったらしいです。捜査をすれば、ほぼ確実に拳銃や薬を摘発するって有名だったそうです」
理流:……確実に摘発?それちょっと怪しいなあ。
GM:「その後、出世してここの署長に収まったそうです。あっしがつかんでるのは、今のところこれくらいでさぁ」
 
  

●Middle 08 忍び寄る『悪』Master scene:

GM:さて、調査フェイズが一段落したところで、マスターシーンが入る。
乾史:おお、DXって感じだなあ。

  どことも知れないビルの一室で、一人の男が部下から報告を受け取っている。
  部下の報告は満足のいく物なのだろう。
  男は部下が喋るに任せ、時折うなずくのみだ。
  だがしかし。
「――順調で大いに結構。しかし例の物件の進捗状況はどうだ?」
  芝居がかった慇懃無礼な物言い。すらすらと報告をしていた部下の顔が、途端にさっと青ざめる。
「……は、実はその、地元の住民が何かと奴らの味方をしているようなのです。それで少々手こずっておりまして……」
「言い訳は聞きたくないな。私が求めているのは、結果だけだ」
  型通りの台詞回しを、むしろ楽しむように男は口にする。
「は、今しばらく時間を頂ければ必ず……」
  男は額に指をあて、やれやれと頭を振ってみせる。
「意外と信頼を得ている、か……」
  悩んでいる、わけではない。
  この男はむしろ、悩んでいるフリを楽しんでいるのだ。
「――ならば、相応の手を打つとしよう」
 
乾史:おいおいおい、なんか凄く嫌な予感がするぞ!?
理流:……これ、どうみても辰巳署長、だと思うんだけど。
十三:うぅむ。調査フェイズを終えても、今ひとつ全体像が見えんなあ。

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