具体的に考えること
司法試験や予備試験の解答に欠かせない「事実の当てはめ」。司法試験を合格した後に待っている司法修習では、この事実の抽出や評価について、ひたすら鍛錬を積むことになります。そして、きっと実務に出た後は、ひたすら「どれだけの事実を引き出せるか(証拠付きで)」について、腕を磨いていくことになるのだと思います。
ここで「事実」という部分ですが、具体的な事実を抽出できることが重要となります。目の前の事案で、誰が、いつ、何を、どうしたのか、ということに着目して、丁寧に抜き出さないと、事実そのものではなく、事実あるいは事実の集合体を捉えた「感想・評価」となってしまいかねません。感想や評価とは切り離して、まずは事実そのものを抜き出して画定したあとで、感想や評価をつける(理由もつけると説得力◎)のがポイントとなるのです。
例を出してみます。例えば、「佐藤さんはいつもスーパーで野菜を買っている」という表現。これは、事実そのものかというと、やや微妙で、「いつも」という部分が抽象的なのです。より具体的に事実を挙げるとすると、「1週間のうち5日」などのように、時的要素が重要となります。この頻度の部分を、「いつも」という「評価」でまとめあげてしまっているのです。
事実のみを抽出し、理由をつけて評価を書くと、こうなります。「佐藤さんは1週間のうちの4日につきスーパーで野菜を買う。1週間は7日ありそのうち5日は半分以上を占めるので、頻度が高いと言える。」
司法試験と関係なくとも、普段の会議や話し合いの中で、抽象的な表現をとってしまうがゆえに紛糾してしまったり、いらぬ誤解を招いてしまったりすることがあるかと思います。そのときに、「時的要素」 を意識して、具体的な事実の部分と、それに対する感想や評価の部分を切り離して議論を進めてみると、少しよい展開が見られるかもしれません。
「○○さんっていつも△△なこと言うよね」というような話があったら、「それっていつのことですか?具体的に何と言っていたんですか?」と聞いてみてください。(時と場合によっては、場の空気を壊してしまうかもしれない勇気と戦う必要があります)