ど田舎弁護士
「弁護士」と聞くと、東京や大阪などの大きな都市で企業の案件に携わったり、離婚や相続の案件で忙しなく裁判所と事務所を行き来したり、刑事事件の弁護人として毅然と被告人の権利を守るべく公判で「異議あり」なんて言ったりして、かっこいいな〜と思っていました。そんなイメージを抱きながら、ただ法律の勉強が楽しくて好きで資格試験に臨み、運良く合格したものの、具体的に自分は資格を持って何がしたいのかということをよく考えられていませんでした。
ちょうど司法試験を受験した後に結婚・妊娠が重なり、資格をどのように生かすかもピンと来ていなかったので、司法修習は後に延期することにしました。そして、夫が勤務する集落(決して「町」ではない)で一緒に暮らし始めたのですが、そこでの暮らしで得られた日々がとても心地よくて離れ難くなり、すっかり根っこを生やしてしまいました。夢にまで見ていた猫との暮らしもスタートし、あれよあれよと2匹に増えました。
そして、二人目の子供を出産したとき、「このままでは一生司法修習に行かないかもしれない」と思い立って、司法修習に出ることにしたのです。
司法修習は、心から尊敬する法曹界の先輩たちに囲まれ、充実したものとなりました。でも、進路は最後まで決断できず、結局夫が待つ田舎に資格だけ持って帰宅することになりました。
この田舎では、裁判所も遠く、被疑者が身柄拘束される警察署も遠いので、ザ・弁護士業を継続するのが難しいな〜と思い悩んでいました。今ではすっかりテレワークなどが普及し、想像もしていなかった業務に出会えたりして、仕事面でも充実しています。自分が抱いていたイメージに固執せずに、目の前のできることをちょっとずつ集めて行くことで開かれる進路もある(しかも意外に自分にフィットしていたりするのです)。そんな一例です。