推しは本当にいるんだ 【推し香水レポ】
※注意※ この記事は夢についても触れています
前日まで
私にはリア友兼オタ友がいる。彼女とは同じジャンルを嗜んでおりよくLINEや通話で語り合っていた。そしてある日、推し香水を作らないか誘われた。秒で乗った。行こうと決めたのはTwitterでも見かけたことがある『FINCA』というお店だ。
調べると、事前にインタビューシートを作成した方が良いとのことだったため色々と考えた。友人と実際に会った12月某日も、ジャンルの映画を観たあとマックで考え込んだ。時折うめきスマホを睨みつけていた女たちはさぞ奇怪な様相だったろう。改めて特徴や性格を考えると語彙力が旅に出てしまったのだ。できるだけ解像度を高めたいのに出てこない言葉。顔がいいとしか言えない。彼はなんなのか。彼は何を考え、何を考えている?私がこれまで見てきた彼はほんの一面に過ぎないのに言語化するのは愚かなのでは?思いのほか作業は難航したが何とかやり遂げた。
カウンセリング
何とか迎えた2月某日。私たちは期待に胸と鼻を膨らませて現地へ足を運んだ。私が当日持参したインタビューシートの内容は以下の通りである。
ジャンル丸わかりやないかい。ジャンル外のオタクでも私の”推し”が誰か分かりそうだ。しかし権利上のアレコレから、我々はレポでもスタッフさんによるカウンセリングでもキャラクター名を明言できない。よってこれ以降の文では彼のことを”推し”とさせていただく。
この邪念に満ちた紙をスタッフのお姉さんに提出するにあたって羞恥に襲われたものだがプロは顔には出さない。微笑みを浮かべカウンセリングを始めてくれた。幾多ものオタクを相手にしてきたのだろう。面構えが違う。
カウンセリングは基本情報のチェックから始まった。今回はイメージ香水であるため、”推し”の「性別」「イメージカラー」「性格」「職業」などだ。対面で改めて聞かれると紙に書ききれなかった分の思いが物凄い勢いで出てくる。反対側にいる友人も同じ様子で、もうこの時点で楽しかった。私が熱く語った部分には下線が引かれていくため期待が募った。しかし、お姉さんの真の力はまだまだこんなものではなかった。
カウンセリングは次のフェーズに移っていく。推し香水の出来を決めるであろう、「性格」「特徴」「好きなところ」が始まった。基本情報と同じように確認、そして質問タイムが始まった。
イケメンですか?
(インタビューシートの春を迎えられなかった男に対して)これってどういう……?
なんでクリスマスイブに死んでしまったんですか?
結構喋りますか?
見た目より子供っぽい感じですか?
(インダビューシートを見て)モテるんですね
まともに見えてまともじゃないというのは…?
気品はありますか?
お姉さんは凄かった。情報が詰まっている部分を拾い上げる天才だった。こちらが簡単に答えられなかったり、考えたことがなかったことについては「〜〜〜ということでしょうか?」と言語化の補助もしてくれた。スパイとか向いてると思う。
返答の中で最も熱く語ったのは「闇を感じますか?」という質問に対してだ。確かに私の”推し”は闇堕ちをしている。しかし、単に人を害したいなどの悪感情が理由ではない。彼の正義感や優しさによって彼の善性が押し潰されてしまったのだ。世界がもっと優しかったら、人間の善性が彼と同じようにあったら、あの出来事がなかったら彼はきっと多くの人を助け導いたに違いない。以下略。
こんな調子で私の舌は回されまくった。体感では1時間以上だったのにまだ香水作りまで行っていないのだから驚きだった。
香水選び
FINCAでは香水を調合するのではなくパイルアップ方式(2種類以上の香水を重ね付けすること)をとっている。お姉さんは手際よく4本のムエット(テイスティング用の試験紙)を用意してくれた。この時点で既に限界を迎えかけた。推しが居る。キャラ香水のことを私は侮っていた。二次元にいる推しはどうしたって現実世界では触れない・見られない・喋れない(・味わえない)でも香りなら”推し”の存在を、生(せい)を感じることができるのだ。とんでもない話である。
テイスティングと並行してカウンセリングもされるためどんどん”推し”の香りに近づいていく。途中であった「推しは袈裟を着ている」「ならウッディーな香りも足しますね」という流れがトップスピードだった。基本的にパイルアップは2種類で行われるのだが、私はどうしても絞り込めずもう1種類追加してもらった。お姉さんの勧めで最終候補の3本をお店の外で嗅ぐ。コレだ。考える暇もなく確信した。
感動しているところに友人も来た。どれも自分の推しで絞り込めないらしくムエットを沢山持っていた。正直ウケたし、嗅いでみると確かにどれも彼女の推しらしさを感じられる。彼女側のスタッフのお兄さんも相当の腕前だ。キャイキャイはしゃいだ後彼女に激励の言葉をかけ私はお姉さんの元に戻った。
最終的に選んだこの3種類で私の”推し”の香りがこの世界に爆誕した。完全に生きている。ふと彼に抱きついたらいつも通りの優しくて落ち着く香りがする。うっとりして顔を埋めていると笑いながら頭を撫でてくれるのだ……。そんな存在しない記憶が脳裏に過ぎった。
また、会計時に香水を吹きかけた紙片が貰えるのだがこれの使い所は考えなければならない。財布に入れると側から見たら金の匂いで悦に浸っているヤベー女になってしまう。どんな人間でも流石にドン引きだ。「おもしれー女」の称号はゲットできない。財布に入れたとしても人目のつかない場所でやるように。私と友人の轍は踏むな。
ちなみにそれぞれの香水については公式サイトのギャラリーで詳しく見れる。LITTLE WINGについては以下の通り。読んだとき「私の”推し”のことか──っ!!!?」と内なる悟空が叫んだ。
最後に
まずは推し香水を作ろうか迷っている人へ。絶対作った方がいい。私の”推し”は公式から香水が出ていないのもあってFINCAに足を運んだが、公式から出ている人も断然おすすめだ。オタクの数だけ推しへの解釈がある。公式のイメージ香水が絶対という訳ではないのだ。自分にとって「推しがどんな存在なのか」は貴方次第である。特に夢女子には効く。目を閉じて嗅いでみろ、飛ぶぞ。
スタッフさんのカウンセリング力が底知れないため、口下手な人でも上手く情報を引き出してもらえるはずだ。”推し”について語るのがそもそも楽しいし、その上解釈通りの香りを作ってもらえる。これで¥7,200(基本の2種類なら¥4,800)は元が取れているどころの話ではない。また、私がやったような推しのイメージ香水だけでなく、オリキャラのイメージや単にオリジナルの香水作りとしても十二分にエンジョイできると思う。
なんだかステマみたいになってしまったが、それほどにオタクとして最高の体験だった。是非ともまた訪れたい。カウンセリングからパイルアップまで担当してくださったスタッフのお姉さん、本当にありがとうございました。
友人へ
貴方は体験後3日ほどで体験レポを上げていたね。私は4ヶ月もかけてしまいました。何回か急かされ、書く書く詐欺を経ての今です。大変申し訳ない。本当にごめんなさい。以後同じようなことはしないよう気をつけます。