穏やかな午睡
幾つかの事務的な用事と近辺へ出かける予定があったため,ついでに帰省していた.
鈍行で山奥まで向かう.改札でICカードが使えずに現金支払いになるなどローカルな感じを久々に肌で実感した.
温泉に浸かった後のコンビニ飯はいつもより美味しい気がする.そんなことを冗談めかして考えながら作業をしていた.
旅先でも平気でコンビニを使い,宿でいつも通りの作業をこなせるようになった自分の変化を成長と呼ぶ努力をしながら,翌日には写真のワークショップに参加した.
旧家の民家を用いて作られた民藝資料館で,各自持ち寄った写真データからサイアノタイプ(青写真)を作る.電子データから物理的な支持体へ化学変化を伴う焼き付け作業.参加者の多くが,家族やペットの写真を選んでいた.なるほど,物質化して保存したいものって,そりゃそうなるよな.
ちなみに私は実家の犬の写真を選んだ.程よい距離感で好きな存在だ.
ワークショップの後は主催者による講演会.世界とか民藝とか生き方とかについての高速なトーク・セッション.点と点でしかなかった言葉がつながって線になり,幾何学形状を構築していく.そんな感覚を得られて楽しかったけれど,小難しい言語化をすっ飛ばして「よかった」と言ってのけようぜ,という話でもあったので,よかったと噛み締めて言ってみる.よかった.
帰りの高速バスではフォロワーさんの書いた作品を読み,心拍数が跳ね上がるなどした.とても上質なものを摂取すると,自分もそれをしてみたくなる.最近の良い傾向だなと思いつつ,早速書いてみると難しい.「自分でもできるかな?」から始まる無数の挫折と障害は楽しいスパイスなので,「さぁ自分ではどう実現しようか」と血液が回っていく感じが嬉しい.
最近は,自分のつくったものへ反応がいただけることが増えた.得難いものだ.大切にしていきたいし,感謝の念を持ち続けたい.いつもありがとうございます.
疲れ果てて熟睡.溶け合った夢の光景は可視化には難しい.
青写真を父方の祖父母に見せに行く.犬を大変可愛がっているので,喜ぶだろうかという孫の計らいである.
結果として,結構喜んでもらえた.額装された青写真は現在仏間に置かれている.犬の青写真と仏壇.個人的に好みの光景ではある.
帰り際,母方の祖父が入院している病院へ面会にも伺った.
平日午後の斜光で満ちた病室.穏やかな午睡の雰囲気の中で,寝ている祖父と少し話した.
午後の空気感を捉えた文章をいつか書きたい.そう思った.