「監督」になった日
9月某日。札幌は涼しく、東京の猛暑が嘘のようだ。
僕は札幌市のやや西側に位置するレストラン「円山惣菜」を訪ねた。
ここは妻もよく通っている馴染みの店で、今回の映画プロジェクトもずっと応援してくれていた。
店のドアを開けるとマスターが「おっ!かんとく!」と呼んでくれた。
僕はマスターに頼んで、映画のポスターを店の壁に貼ってもらった。
最初の1枚だ。
小さなポスターだけど、なんだか誇らしかった。
お店にいたお客さんが、僕とマスターが記念写真を撮っているのを見て、早速ポスターのQRコードをスキャンしてくれた。
マスターは、ほかのお客さんにもポスターを見せて、
「これ!監督が撮る映画なの!」と宣伝してくれている。
学生の頃から「映画監督になる」と友人に言いふらしてきたけど、
「あ、俺、映画監督になったんだ」
と思えた。
その日は調子に乗ってワインボトルを1本空け、2件目の酒場で竹鶴を空け、翌朝、妻のマンションの床の上で目が覚めた。