スマホ使用の影響有害コンテンツだけじゃない
オーストラリアで、SNSの16才未満の子供の利用を禁止する法案が決議がされたことは話題になっている。理由として、有害コンテンツの閲覧による害悪問題やイジメに繋がっていることもあるが、SNSだけでなくスマートフォン(以下スマホで表記)をはじめとするデジタルディバイス機器の利用時間による子供達の脳への影響や子供時代に体験して身につけていく人との関わりかた、分析、判断力にも影響することがわかっている。
成長期の脳が発達しない
脳トレゲームの監修などでもおなじみの東北大学の加齢医学研究所の川島教授は、2010年から仙台市と協力して市内の小中学生の学習意欲に関する調査研究をしました。
「学力検査の成績」と「スマホ(ゲーム機などのディバイス含む)についてのアンケート回答」をもとに、小学5年生から中学3年生までの「成績」と「平日に勉強以外でスマホを使う時間」との関係を調査。
スマホを全く使わない子どもよりも、1時間未満の子のほうが成績が良い。それは、自分の意思で使用時間を1時間未満にコントロールできている子が含まれる可能性があると考えている。そこを除けば、スマホを使うほど、学力への悪影響が出ていることがはっきりと読み取れるとしています。
睡眠時間7〜8時間という同じ条件で成績を見比べてみると、一般的には「勉強時間を確保できていない」「睡眠不足で集中力が下がっている」といった理由が思い浮かびますが、スマホを3時間以上使っている子は、勉強を3時間以上やっていたとしても平均点以下で、30分未満しか勉強していないが、スマホは1時間未満という子にすら成績が及んでいない結果が出ています。
川島教授は「平均11歳の子ども223人の脳を3年間モニタリングした結果、スマホを含むネット漬けの子どもほど、思考や創造のほか、人の気持ちを理解したり、場の空気を読んだりするような高次なコミュニケーションをつかさどる前頭前野を中心に、脳が発達していないことがわかりました。記憶や学習に関わる海馬や、言葉に関係する領域などにも影響が見られます。スマホを使っているときは脳があまり活発に動いていないという文献は多く出ています。紹介した調査は小中学生を対象としたものですが、成長段階にあるという点では、高校生にも同じことが言えます。すでに成長している大人も使わない機能は、どんどん衰えていきます」
中高生は、コミュニケーションに関わる前頭前野が特に発達する時期ですが、スマホで楽をしてしまえば、その発達が打ち消されてしまう可能性があります。逆に、スマホの使用をコントロールできる人の脳は、勉強や日々のコミュニケーションなどによって活発に動くため、「気づいたときには大きな差が開いているのではないでしょうか」と警鐘を鳴らします。
「脳は、悪い習慣を断ち切るだけで、機能が回復することもわかっています。つまり、スマホと上手に付き合えるようになれば、再び発達していきます。」(川島教授)
内閣府「令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査報告書」)によると高校生のスマホ利用率は97.9%り、高校生にとって、持っているのが当たり前のものになっています。
スマホとどう付き合うか
スマホは便利なものであることも事実です。電車の時刻を調べる際などに活用しています。ただし、使いすぎると学力や脳に悪影響が出ることがデータに表れているし、スマホにはアルコールよりも麻薬に近い依存性もあるので、そのことを知らないままズルズルとスマホを使い続けたりせずに、メリット、デメリットを理解して自分なりに道具として、使いこなしていくかを考えることが良いのではないでしょうか。
1日の行動を書き出してみてスマホにどれだけ振り回されているかを知る。スマホを近くに置いて勉強するだけで成績低下します。
ながらではなく、通知をオフにするとか聞こえない見えない場所に置くなど工夫が必要かもしれません。
川島教授によると、自分を律するということは、実は脳にすごくいい刺激になり、それを中高生の間に経験しておくことは、スマホを使いこなせるようになるだけでなく、思考やコミュニケーションをつかさどる前頭前野が発達するチャンスにもなります。また、スマホがなくても困らないという経験を一度でもできていれば、『スマホの使いすぎで、そろそろまずいな』と気づいたときに、自分でブレーキを踏めるようになると。
川島教授の調査については、下記のURLでご覧いただくことができます。
スマホ、PCなどディバイスの利用リテラシー
平成世代は、パソコンもあり携帯→スマホが生まれた頃からある世代です。子供のいる世代もまた小中高の時代には、世の中に使われていました。
池袋の交通事故被害者に対する誹謗中傷で、中学生が書類送検されました。
対面だったらしないことをSNSではやってしまう落とし穴があります。今や匿名投稿で誹謗中傷、脅迫しても最終的には特定され、自分のしたことの責任を取らなければいけなくなります。リアルな対面でもネット上でも同じです。それは、場合によっては一生付きまとうことになって後悔しても取り返しができないです。
対面だったらしないことはネットでも同じです。会ったこともない相手に教えたり渡したものは、悪用される可能性があることも忘れてはいけません。
箇条書きにすると
・面識のない相手、特に匿名の相手に、個人情報や自分の写真は送らない
・ネットでのいじめをしない。されたら親に相談して対処する。抱え込まない
・ネットは誰でも書き込みができます。書き込まれた内容が正しいのかどうかを調べる力、疑う意識を持つ。拡散は投稿者と同じ責任を持つ
・自分が投稿をするときは、実名で公開されても大丈夫か見直す
・他人の個人情報を書き込まない
・1日の使用時間を自己管理して、スマホ依存症にならないようにする
など、家族で時々話をしていくといいと思います。
長時間のスマホ使用がもたらす身体の異常
スマホ、ゲーム機やパソコンの利用は、自分が思うよりも集中してしまいあっという間に1〜2時間経っています。長い時間同じ姿勢でいることで首や目に負担がかかり、病院に行かなければならないような症状にまでなってしまうことがあります。そうした症状は現在進行形で発生しますが、目については特に近視が進み、強度近視になると、治療法のない現在進行を遅らせるしか方法のない緑内障が他の人より若いうちになる可能性があります。
そのためには、
・画面と目の距離を30cm以上離し、30分に一回は目を休める。長くても1時間に一回は、目を休めて身体を伸ばして休め遠くをみる
・色彩を扱う作業でなければ、ブルーライトをカットするメガネを使う
・時々ストレッチをして、動き回ってみる
集中して長時間使いがちなのを、自分の今後の健康を考えてやってみてほしい
最後に、スマホは便利です。
小中高生の成長期の子供に与える脳への悪影響、身体への負荷、特に眼への悪影響、デジタルディバイス使用リテラシーを家族で考えて、賢く使いましょう。
スマホに依存のでなく、道具として自己管理して使いましょう。