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わたしのsaudade 忘れない夜の月はずっと輝く
いつものように晩御飯を作る。
料理を並べているとスマホが揺れた。
POPUPにはnoteさんからのメールであることと、身に覚えのある文字がちらり。
ふむ。なんだろう。
意味を汲みとる前に配膳を済ませ、いただきますをする。母とは同じマンションの別の部屋で暮らしているけど、晩御飯は一緒に食べる。
食べはじめてから再びスマホを手に取り、届いたメールを開く。
ふむ。
むーーーーーーー!?!?!?
思わず飛び出しそうになった奇声と口の中のものを必死で堪えて平然を装った。とりあえず晩御飯を終えなければ。
え、え、え?どどどどういうこと???
事態が掴めないままソワソワと晩御飯を掻き込んだ。
母が自室へ帰りひとりになって、みたびスマホを手に取る。メールをちゃんと読む。五回くらい読む。
そしてようやく理解した。
わたし、OZmagazine × noteのコミックエッセイ大賞で大賞をいただきました・・・
ああまた、瞬間最大風速で喜びを爆発させるタイミングを逃してしまった。三段階踏んでしまった。
いやまだ間に合うぞ。
やった、やったー、やったーーー!!!
小さく声に出してみた。
同じく小さなガッツポーズと、小さいジャンプ。
信じられないという思いのほうが強く、これ夢なんじゃないの?と本気で疑うという初めての経験をした(実はまだ疑っている)。
実際、本当なのか確かめようがない。
公式発表はまだである。
誰も知らない。聞く相手もいない。
フワフワしたまま夜はふけていき、地に足がつかないままベッドに入った私のもとに、もう1通のお知らせが届いた。
大好きな人の訃報だった。
一緒にたくさんお仕事をして、
たくさん作品も作って、
色んな所へ連れて行ってくれて、
色々な話をしてくれた人。
素敵な写真をいっぱい撮った人。
アグレッシブで、いつも楽しいことを探して実践していた人。
溢れるような満開の笑顔の人。
道しるべになってくれた人。
家族を心から愛した人。
最後に会ったとき、実は最近こんなの描いてるとチラッと伝えたら、ピンとこなかったのか、ふーん?という反応だった。
少々悔しかったので、いつか何らかの結果が出たら、彼に伝えようと思っていた。それが1年前。
ほんの少し、間に合わなかった。
聞いたらきっと、驚いて、喜んでくれたはず。
「いつのまにそんなことしてたん!?」
「前に見せたよ!!」
そんなやり取りが目に浮かぶ。
彼を慕ってお通夜に集まった人たちはとても会場には入りきれず、極寒の2月の夜空の下、お焼香の長い長い列ができた。
人徳だね、すごいね。
みんなが口々に言った。
帰り道、前にユニットを組んで創作活動していた3人で晩御飯を食べた。
受賞のことを伝えると、本人の何倍も上手に喜びを表現してくれた。
フランスの侘び寂びと物語をこよなく愛するアンティーク店の主人で、著作も数冊あるアーティストである友人は、私が描くきっかけを作ってくれた人。
なにか描いてみては?
という彼女のひとことで私はその気になったのだ。
もう一人の友人は「おしゃれかわいい」を極め、ファッション誌などで大活躍の大人気スタイリストさん。
いつも楽しいことやおしゃれなこと、美味しいことをたくさん抱えてわくわくしている人。最近は中国茶を極めているらしい。
3人が揃うのはいったい何年ぶりだろう。
受賞ほやほやに3人で会って話す機会を与えてくれたのも、カメラマンの彼からの贈り物だったのかもしれない。
最高にかなしくて、うれしくて、しあわせな気持ちになった夜には、まんまるぽってりした大きな月が、ずっと下界と、わたしたちの行く末を照らしていた。
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noteで知り合ったみなみなさま
こんなすみっこでほそぼそとはじめたページを見つけてくださり、
たびたび訪れてくださり、
感想をいただいたり、励ましをいただいたり、
ほんとうにありがとうございます。
受賞コメントも結局うまく書けず、当たり障りのないものになってしまいましたが、ここでもどういうふうに言えばいいのかわかりません。
でもたしかなのは、描かなければ今はなかった、ということで、
描いていなかったら、と思うとゾッとします。
描くという手段を得て、ほんとうに良かったです。
それからぷんぷんとブんブん。
はじめて会ったときから、
きみたちは私に、何かとてつもなく大きな幸せをもたらしてくれるんじゃないか、って思っていました。
うちへ来てくれてありがとう。
これからも、よろしくね。
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