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のどのおくの棘
のどのおくに、棘が引っかかって取れない。
ごくりとするたびに、ちりちりと傷む。
そうだった。
これはもう、ずいぶんと前からあったのに、
忘れたふりをしてやり過ごしてきたのだ。
痛い、痛い、と心と身体は言っている。
それを無視しているうちに、感じなくなる。
棘があるままだということも、忘れてしまう。
血が流れ続けていることも。
ほんとうに?
傷口は、たまに絆創膏を剥がして確認する。
治ってたらうれしい。
でもいつまでも治らない傷もまたいとおしい。
新しい皮膚ができても、
しばらくは痕が残る。
年々それは、消えるのに時間がかかるようになっている。
いま痕になって残ったら、死ぬまでに消えるんだろうか。
わたしはその痕を、消したいのだろうか。
いつまでも撫でていたいのだろうか。
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