割れたマイセン
ショックなことって色々あるけど、お気に入りの食器が割れた時ほど、ウォーーーーー!と唸り声が出てしまうほどのショック状態に陥ることはありません。
今朝、それが起きました。
コーヒーを飲む時、普段は保温性優先で、サーモスのカップを使います。
ですが、テンションだだ落ちの時、これから迎える一日を、どうやっても乗り越えられそうにない時、サーモスの代わりに「マイセン」に登場願います。
二十代の頃、磁器のもつ繊細さと美しさに魅了された私は、気に入ったものがあると手に入れて、それと共に過ごす時間を大切にしていました。
一人でゆっくり本を読んで過ごす夕べ、恋人との別れの予感に心が塞ぐ週末の昼下り、気疲れだけが残る合コンの翌朝。
そんな時、コペンハーゲンの青い線の流れや、ヘレンドのたおやかな一輪の薔薇を見ていると、心がすっと落ち着き、その一瞬、満たされた気持ちになる。
今朝は、それが必要だった。
食器棚から左手でマイセンのコーヒーカップを取り出して、右手で扉を閉めようとした時、普段使っているサーモスのカップの位置が気になって、それを直そうとしたら、その上の棚にあったパイレックスのグラスが落ちそうになって、それを掴もうと右手を空に躍らせた瞬間、左手のマイセンが床に落ちていました。
ブランドが渋滞してますが… …
割れたマイセン。
ウォーーー! っと、聞いたこともないような低い唸り声が体内から出ました。
両膝を床について、天を見上げました。
イメージは、映画「プラトーン」の有名なシーンです。
思い出の詰まった大切なカップだったのに。
そもそも出だしの悪い朝だったのに、だからマイセンが必要だったのに、「割れたマイセン」のせいで、今日一日悲惨でした。
こんな話を聞いたことがあります。
遠い昔、マイセンの技術は、厳重に守られていて、外部にそれが出ることは固く禁じられていた。
職人は城の一部に集められ、生涯をかけてマイセンを作る。
マイセン職人であることを辞めて職人が城を出る時、技術を外に出さないために手首を切り落とされた。
ほんとか嘘かわかりませんが、今日一日「マイセン通夜」をしながら、そんな話を思い出しました。
まぁでも、マイセンショックのせいで、そもそも何故、朝からテンションだだ落ちだったのか、忘れてしまいました。
前日からのネガティブを持ち越したからでしょうけど、今この瞬間にも思い出したくないので、忘れたままにしておきます。
嫌なことは忘れるに限る!!
ふと自分に聞いてみたくなる1000の質問 #26
気がつくと考えてしまっている、そんな物思いはありますか?
おまけ
どうしようもなく落ち込んだ時、あなたを癒してくれるものはありますか?
私の場合は、マイセンで飲む一杯のコーヒーと、それから… …
夫の笑顔。
ということにしておきます。