〔ショートショート〕祈願上手
図書館からの帰り道で考えた。何で昔話や童話に出てくる主人公たちは、願い事が下手なんだろう。
「三枚のおふだ」の小僧さんは、おふだに「山姥をやっつけてください!」と言えば良かったのに。「漁師とおかみさんの話」の漁師は、欲深い妻の言うことを最後まで聞かず、「妻を改心させてくれ」と言えば良かった。他にも、願い事が3つだけだと言われたら、3つ目で「私を魔法使いにして!」と言えば、後は好きに出来たのに。全く、誰も彼も下手すぎる。祈願上手な私なら、そんなチャンスをみすみす逃したりしない。
そう考えながら空を見上げると、ヒュッと流れ星が。私は叫んだ。
「カネ、カネ、カネ!」
流れ星は一瞬だから、3回唱えるならこれが最善だ。前もって考えて、願い事を呪文のように覚えていた私は、やはり祈願上手だ!
自画自賛しながら家に帰ると、玄関を塞ぐ、お寺の重そうな鐘。押しても引いてもビクともせず、家に入ることも出来ない。
私は深いため息をついた。
(完・407字)
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