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空回りする世界

2021年10月29日

ポール・クルーグマン(オピニオン・コラムニスト)

 ここ数ヶ月、経済の最前線では大変なことが続いている。インフレ率は28年ぶりの高水準に達した。スーパーマーケットの棚は空っぽで、ガソリンスタンドは閉鎖されている。家の暖房システムに問題を抱えている人には幸運を祈る。ボイラーの交換には通常だと48時間で済むところが、今では2~3ヶ月かかってしまうらしい。バイデン大統領は本当に滅茶苦茶な奴だな。

 おおっと、待て待て。そのインフレ記録はアメリカではなくドイツで達成されたものだ。英国では食料やガソリンが不足しているという話が出ている。フランスではボイラーの交換問題が、特に深刻なようだ。

 アメリカに限らず、最近のインフレの大きな要因となっているのは、エネルギー価格の高騰だ。エネルギー価格は世界市場で決められているから、一国の影響力はアメリカであってさえも限定的なものにならざるを得ない。ドナルド・トランプ氏は、もし自分が大統領になったならば、ガソリンは1ガロン2ドル以下になると主張している。だけど、石油は世界的に取引されてるし、アメリカの石油消費量は世界全体の約5分の1に過ぎないと言うのに、彼はどうやってそれを実現しようと考えているのだろうか?

 言い換えるならば、パンデミック不況からの回復を妨げている問題は、大体においてローカルなものではなくグローバルなものであると考えられる。とは言え、国の政策が影響していないというわけでもない。例えば、英国の苦境はトラックドライバーの不足が原因の一つであり、それはブレクジットによる外国人労働者の流出が関係している。だけど、どの国も同じような問題を抱えているように見えるという事実は、多くの人々が考えているほどには、政策があまり役に立っていないことを物語っている。そして、もし何かがあるとするならば、合衆国は何か違った方法を行うべきなのかという疑問が湧いてくるだろう。

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