バイデン大統領は外交を軍事力の代替品として用いるべきではない

著:ジム・インホフ上院議員

 米国の国家安全保障に対する最大の脅威は中国とロシアからもたらされており、大統領がなにをどうしたからといってそれが変わることはないだろう。2018年の国家防衛戦略、上院軍事委員会、そして私は、この基本的な概念を明確に支持してきましたし、ジョー・バイデン大統領もそうしなければならない。

 バイデン政権が我が国の安全保障に真剣に取り組もうというのなら、中国とロシアを抑止する強力な防衛力を確保しなければならない。それは国家防衛戦略の実施に必要な資金を提供することを意味しており、超党派の国家防衛戦略委員会の報告書を青写真として使用することを意味する。それは、世界の主要な場所における条件に基づく部隊レベルを意味している。


 これらは党派的な政策ではなく、下院軍事委員会の次期議長であるジャック・リード上院議員(民主党)と私が焦点を合わせ、今年の国防授権法で取り組む方針である。バイデン大統領がこれらの優先事項を理解し実行する限り、我々は国家の安全を守るために協力することができるだろう。

 米国は多くの課題に直面しているが、中国とロシアは私たちの生活様式を独特の形で脅かしている。両者は、我々自身を含む民主的な政治制度を弱体化させようとしている。彼らは我々と外国のパートナーとの信頼関係を傷つけ、彼らの野望に合わせて国境を塗り替えようとしている。特に中国は、弾道ミサイルのような既存の能力を拡大する一方で、空母のような新しい能力を投入し、南シナ海での攻撃性を高めている。

 これが私たちが直面している現実である。したがって、我が国には何よりもまず第一に、これらの課題を純粋に理解し、優先することに同意する国防総省のリーダーシップが必要である。私はバイデン大統領が最初に、おそらく最も重要な国家安全保障上の人事指名の一つである国防長官に、退役したロイド・オースティン元帥を選んだことを懸念していた。彼は主に、中東に焦点を当ててきた経歴を持ち、指名理由の中で中国とロシアについては一度も触れてはいなかったからだ。

 しかし、私はオースティン元帥の指名公聴会での話を聞いて勇気づけられたし、彼は国家防衛戦略の効果的な実施を可能にし、戦略的競争相手がもたらす脅威に対抗するために努力すると信じてる。

 我々のもう一つの最重要課題は、我々の戦略を達成するために必要なリソースを軍に確保することである。過去10年間で、予算管理法と適正化の結果、米軍は5500億ドルの予算を失ったが、これは中国とロシアが軍事費を増額する前の話である。その結果、米軍はあまりにも長い間、あまりにも少ない予算であまりにも多くのことを行い、常に予測不可能な環境下で活動してきた。

 第一に、即応能力が急落したこと、そしてこれらの即応能力に関連した問題がまだ完全に対処されていないことである。第二に、国防総省全体の近視眼的な予算削減が、有能な軍人を退職に追い込み、国防総省の民間人が監査などの重要な監督活動を行うことができないようにしたことである。第三に、軍の近代化は先送りされ、今もなお遅々として進んでいない。その結果、老朽化した装備品の維持費が防衛予算を食い荒らしている。今、我々は既存の装備のアップグレードと交換を同時に行い、人工知能のような敵がリードする兵器技術を開発する必要がある。

 その上で、バイデン政権は、太平洋抑止力構想や欧州抑止力構想のような、中国やロシアからの脅威に対抗するための優先的な取り組みに十分な資金を提供しなければならない。これにより、高度に争われる戦闘環境での弾力性を確保するために、適切な戦力を適切な場所に配置することが保証される。

 4年連続での軍事資金の増加は、ほんの始まりに過ぎない。失われた時間を取り戻すことはできないが、バイデン大統領は議会と協力して、適正化によって削減された5500億ドルの国防費に代わるものを提供しなければならないだろう。予測可能性と確実性を備えたこの投資を行うことは、今後数十年にわたって、中国とロシアに対する我々の立場を維持するために必要な頭金となるだろう。

 核抑止力を維持し、最も重要な同盟関係を強化するためには、核戦力の近代化を継続しなければならない。何十年もの間、我々は核兵器とインフラへの投資を不十分な物としてきた。対照的に、中国とロシアは備蓄量を拡大し、米国と同盟国を脅かすために何千ものミサイルを追加で建造した。バイデン政権はこれらの現実を無視してはならない。ドナルド・トランプ大統領の下、我々は核戦力の更新で進歩を遂げてきた。しかし、繰り返しになるが、地上配備型戦略的抑止力やW93(訳者注:SLBM搭載用新型核弾頭W93のことだと思われる)計画の完成など、まだまだ長い道のりがある。

 中国とロシアが主な焦点となるでしょうが、唯一の焦点とは言えない。議会とバイデン政権は、ISISとアルカイダに対して我々が成し遂げた、これまでの成果を維持するという目標を共有していると思う。そのためには、シリア、イラク、アフガニスタン、ソマリアを含む世界的なテロ対策態勢を効果的に維持し、テロ組織の復活を防ぎ、我々を攻撃する能力を制限する必要があります。

 これまでのところ、バイデン大統領は外交的努力を優先することを選択してきたが、強力な軍事力が、強力な外交を支えていることを忘れてはならない。敵対国を抑止し、同盟国やパートナーを安心させ、米国の国家安全保障を守る世界的な力の均衡を確保する、信頼できる軍事力の必要性を否定することはできない。

 リード議長と共に、私はこのために戦い続ける。バイデン大統領も我々と歩みを同じくしなければならない。

ジム・インホフ上院議員は、共和党上院軍事委員会の委員長である。

ソース:DefenceNews President Biden shouldn’t replace military strength with diplomacy

 今回は間隔開くことなく更新できた!今回も他人様の記事の翻訳なので無料公開でございます。誤訳・解釈間違い等はご容赦を…
 さて、今回のインホフ氏の寄稿、親中的とされるバイデン新政権にクギを刺したという感じでしょうか。
 合衆国の軍事的方針は、中露と海を隔てて対峙している日本にとっても、最重要な問題なだけに、バイデン新政権の動向が気になるところではあります。インホフ氏の助言を聞き入れてくれると良いのですが…

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各務原 夕
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